=== リュール & ディアマンド === --- C --- [リュール] わ、わーっ!! 異形兵がーっ!! [ディアマンド] 何だ、民が異形兵に追われているのか!? …あれは、神竜様!? [リュール] ディアマンド! 助けてくださーい! [ディアマンド] せやっ!! [リュール] …はあ、助かりました。 すみません、手を煩わせましたね。 [ディアマンド] それはいいが… [ディアマンド] 神竜様ともあろうものが、 どうして追われていたんだ。 [リュール] 急に出てきたので、つい逃げてしまったんです。 私、異形兵がどうにも苦手で。 [ディアマンド] 苦手? しかし、普段は普通に戦えているではないか。 [リュール] 戦場では平気なんです。 これから戦うぞ、という気持ちで挑むので。 [リュール] ですが、先ほどの異形兵は 完全に気を抜いているときに出てきましたから… [リュール] 日常に潜まれると、抗う術がありません。 [ディアマンド] それは…どう違うのだ。 [リュール] ディアマンド、何か苦手なものは? [ディアマンド] 毛の生えた虫だろうか。 [リュール] では例えば、これから毛虫を退治しに行くぞ…と 覚悟した先で毛虫を見た場合と、 [リュール] 夕食中に突然毛虫が落ちてきた場合を 想像してください。 [ディアマンド] ………… [リュール] 後者は、取り乱しませんか。 わーっとなりませんか。 [ディアマンド] なる。 [リュール] さっきのは後者です。 [ディアマンド] なるほど…それは説得力がある。 流石、神竜様は聡明だ。 [リュール] 褒めすぎですよ。ああ、もしかして… 先程のフォローをしてくださってるんでしょうか。 [リュール] かっこ悪いところを見せてしまって、 すみませんでした。 [リュール] 私もディアマンドのように 堂々とした風格を持てればいいのですが… [ディアマンド] …堂々とした風格、か。 --- B --- [ディアマンド] ………… [リュール] ディアマンドが暗い顔をしているとは、 珍しいですね。 [ディアマンド] ああ。神竜様か… 変なところを見せてすまない。 [リュール] その手に持っている物は? [ディアマンド] これは私の父上… モリオン王から授かった勲章だ。 [リュール] モリオン王から… [ディアマンド] イルシオンとの戦闘で、敵に囲まれたことがあってな。 [ディアマンド] どうやって仲間とともに生還するか… 必死になって指揮を執った。 [ディアマンド] その結果、この勲章を授かって… 私は父上に初めて認められた気がした。 [ディアマンド] しかし、ときどき思ってしまうのだ。 [ディアマンド] あのときはただ運がよかっただけで、 この勲章に見合う活躍ではなかったのではないかと。 [リュール] いつも堂々としているディアマンドにも、 不安や悩みがあるのですね。 [ディアマンド] 弱気なところを見せて悪かった。 [ディアマンド] このことは他言無用で願おう。 ブロディア王国第一王子の威厳に関わるからな。 [リュール] はい。私も以前はかっこ悪いところを見せたので、 これでおあいこです。 [リュール] でも、一つだけ言わせてください。 [ディアマンド] …? [リュール] 弱気なところもあると知って、 私はディアマンドにとっても親しみが湧きました。 [リュール] 弱気も悪いところばかりではありません。 [ディアマンド] ふっ… 本当に神竜様は不思議な方だ… --- A --- [リュール] ………… [ディアマンド] 神竜様。鍛錬か? [リュール] はい。 ずっと自分の力不足を感じているんです。 [リュール] 私は本当はとても臆病で、弱くて。 こんなことで世の平穏を取り戻せるのかと… [ディアマンド] ………… [リュール] どうしたのですか? [ディアマンド] いや… 神竜様ほどの方でも、悩むことがあるのだな。 [リュール] それはもちろんです。 悩むことが多くて、もう大変ですよ。 [ディアマンド] ふっ。 [リュール] 何がおかしいのですか? [ディアマンド] いや、弱気なところもあると知って、 神竜様に親しみが湧いてきた。 [リュール] い、今ですか? 最初の方に見せたじゃないですか。 [リュール] 異形兵に追いかけられて 必死の形相で逃げている私を。 [ディアマンド] はは。 そうだったな。 [ディアマンド] しかし…私は神竜様だったから 不安を漏らすことができた。 [ディアマンド] もし、神竜様がいなければ 今でも厳しい顔で父上のことを考えていただろう。 [ディアマンド] 神竜様には感謝しているよ。 [リュール] それは私も同じです。 こんなにも気持ちを素直に話せる相手がいるなんて… [リュール] 私たちは似ているのかもしれませんね。 [ディアマンド] そうかもしれないな。 [リュール] これからも二人で支え合いましょう。 そうすればきっと何だって乗り越えていけます。 --- S --- [ディアマンド] 神竜様。 ちょっといいか。 [リュール] なんでしょうか? [ディアマンド] これを、神竜様に受け取ってほしい。 [リュール] …指輪ですか? [ディアマンド] ああ。父上からもらった勲章を溶かして作ったものだ。 [リュール] 勲章を!? どうして、あれほど大切にしていた物を…! [ディアマンド] 構わんさ。ブロディア王国の勲章は、 代々こうやって形を変えて受け継がれてきたんだ。 [リュール] それなら、余計に私がいただくわけには… [ディアマンド] 二人で支え合う。 神竜様は私にそう言ってくれた。 [ディアマンド] これはそのための証だ。 [リュール] ………… [ディアマンド] どうか…この指輪を受け取ってほしい。 [リュール] ディアマンド… [リュール] 私はこの指輪に見合うほど 立派ではないかもしれません。 [リュール] ですが、そうなるように努力したいと思います。 [ディアマンド] では、受け取ってもらえるんだな? [リュール] はい。 [ディアマンド] ありがとう、神竜様。 [リュール] お返しという形になってしまいましたが、 私からも、これを。 [ディアマンド] これは、『約束の指輪』…!? [リュール] 本当は、私から渡そうと思っていたのに、 先を越されてしまいましたね。 [ディアマンド] しかし、こんな大切な… [リュール] 大切なものという意味では、 私が受け取った指輪も同じです。 [リュール] 嫌とは言わせません…私の隣にいてほしい人は ディアマンド以外にはいませんから。 [ディアマンド] ふっ…そうか。私もそれは、誰にも譲る気はない。 ありがたく受け取ろう。 [ディアマンド] この指輪からは… 神竜の…リトスの歴史を感じるようだ。 [リュール] この指輪からも、ブロディア王国の歴史を感じます。 [ディアマンド] ああ、私の父上は祖父から、 祖父もまた先代から受け継いできた物だからな。 [リュール] 二つの指輪に負けないぐらいの歴史を、 共に作っていかなければなりませんね。 [ディアマンド] 大丈夫さ。 私たちが支え合えば必ずできる。 [ディアマンド] これからも、私はあなたの傍にいる。 命に代えても守ると誓おう。大切な、二つの指輪と共に。