=== リュール & ルイ === --- C --- [リュール] ルイ、何をしているのですか? [ルイ] 神竜様。 特にこれといった特別なことはしていませんよ。 [ルイ] ただ遠くから女の子たちが会話しているのを 静かに眺めているだけです。 [リュール] そ、それはなんのためにですか? [ルイ] なんのため… 難しい問題ですね。 [ルイ] ある種、哲学的な問いともいえます。 [ルイ] ですが、そうですね。 強いて答えるなら僕の幸せのため、でしょうか。 [リュール] 女の子たちが会話しているのを見るのが好き、 ということですか? [ルイ] はい。 大好きです。 [ルイ] 近寄らず、会話に参加もせず、 もちろん触れることも絶対にありません。 [ルイ] ただ遠くから静かに眺めるだけです。 これはいけないことでしょうか? [リュール] …多分、ダメなことだと思います。 [リュール] 法に触れずともダメなことはありますから。 [リュール] もし彼女たちが嫌がったのなら すぐにやめてくださいね。 [ルイ] もちろんです、神竜様。 [ルイ] 僕だって彼女たちを 不快な気持ちにはさせたくありませんから。 [リュール] それを聞けて安心しました。 では、ほどほどに… [ルイ] はい、神竜様。 ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。 --- B --- [ルイ] ………… [リュール] ルイ。 こんにちは。 [ルイ] 神竜様… [リュール] 女の子たちの会話を眺めている最中ですか? 邪魔ならすぐに立ち去りますね。 [ルイ] 大丈夫ですよ。 今は、家族のことを思い出していたのです。 [ルイ] …故郷に残した、三人の弟たちのことを。 [リュール] 弟…ということは、 ルイはお兄さんなのですね。 [ルイ] はい。 四人兄弟の長男です。 [リュール] そうですか。 長男は何かと大変ですよね。 [ルイ] 確かに大変だったかもしれません。 [ルイ] 母親が早くに亡くなったので 弟たちの面倒は僕が見ていましたから。 [ルイ] でも、みんなかわいい弟です。 大変でしたが何とか乗り切れましたよ。 [リュール] その時のお世話の経験が、騎士の仕事にも 活かされていたりするのかもしれませんね。 [ルイ] 確かに。 おかげで、簡単なことでは動じなくなりました。 [ルイ] ですが、それでいうと… 僕の趣味もその環境が影響しているのかも。 [リュール] 趣味? [ルイ] どこを向いても男ばかりの環境で育ったので、 女の子の集まりを見るのが好きなのかもしれません。 [リュール] そ、そうですね… [リュール] もしかして、ルイの弟たちも 同じような趣味をお持ちなのですか? [ルイ] 弟たちはそんなそぶり一切ありませんね。 [リュール] な、ならば、ルイの趣味は 育った環境とは関係ないのでは… [ルイ] ははは。 謎が深まりましたね。 --- A --- [ルイ] ありがとうございます、神竜様。 助かりました。 [ルイ] 弟たちへの贈り物はいつも目移りしてしまって、 僕だけでは選べませんでしたから。 [リュール] いえ、私は何も。ルイからの贈り物でしたら、 きっとなんでも喜んでくれるはずですよ。 [リュール] それで…お手紙の方は? 贈り物と一緒に送るのですよね? [ルイ] そのつもりだったのですが… 手紙はやめておこうかな、と。 [リュール] どうしてですか? [ルイ] しばらく故郷に戻れそうにないので せめて贈り物と手紙くらいは送りたい… [ルイ] そう思ったのですが、いざ書くとなると、 中々、筆が進まなくて。 [リュール] なら内容なんて気にせず、 気持ちのままに書いてみればいいと思います。 [ルイ] 気持ちのまま… [ルイ] 僕は元気だ、そっちも元気か? とか、そんな他愛もない感じになりそうですねえ。 [リュール] それでいいと思いますよ。 きっと、便りは届くだけでも嬉しいものですから。 [リュール] それに、自分の気持ちは… 伝えられるときに伝えたほうがいいと思います。 [ルイ] 神竜様… [ルイ] その通りですね…ありがとうございます。 やはり、手紙は送ることにしますよ。 [ルイ] 折角ですので、神竜様のことも 書いておこうと思います。 [リュール] 私のことをですか? [ルイ] いかに神竜様が素晴らしい人かを 弟たちにも知ってもらいたいですから。 [ルイ] 大切な仲間を家族に紹介させてください。 [リュール] 少し恥ずかしいですが…嬉しいです。 ありがとうございます、ルイ。 --- S --- [リュール] ルイ、お待たせしました。 私に話とはなんでしょうか? [ルイ] 神竜様。 ご足労いただきありがとうございます。 [ルイ] ………… [リュール] …ルイ? [ルイ] 紅茶、飲まれますか? [リュール] いえ、今は大丈夫です。 それよりも話とは…? [ルイ] ………… [リュール] …いつもと様子が違いますね。 ずっとそわそわしています。 [ルイ] すみません…神竜様にこんな情けない姿、 お見せするはずではなかったのですが… [ルイ] 堂々としていなければ、 という思いとは裏腹に… [ルイ] 手は震え、足も一歩も動かず、 顔は紅潮し、汗が止まりません。 [リュール] 何か悩みがあるのなら遠慮せずに話してください。 私も力になりますから。 [ルイ] …実は、僕の弟たちが…平和になったら、 神竜様にどうしてもお会いしたいと言ってるんです。 [リュール] 何だ、そんなことですか。 私は構いませんよ。 [ルイ] ち、違うんです。ただ会いたいのではなく… その… [ルイ] 弟たち、わかってしまったみたいなんです。 僕がいかに神竜様を大切に思っているかを。 [リュール] え…? [ルイ] 弟たちに書いた手紙に、僕は…思いのまま、 神竜様のことをたくさん書いてしまいました。 [ルイ] それで、そんなに大切に思っている人なら 絶対にお会いしないと、って返信がきて… [ルイ] 母の形見の指輪まで一緒に送ってきたんです。 これをお渡ししろ、って。 [リュール] ………… [リュール] そういうことでしたか。 [ルイ] や、やはり…迷惑ですよね。 [リュール] 綺麗な指輪です… 頂けるのですか? [ルイ] 神竜様… [ルイ] …はい。 貴方に、受け取って欲しいです。 [リュール] ありがとうございます、ルイ。 [リュール] 家族思いなあなたはきっと、 パートナーも大切にしてくれるでしょうね。 [リュール] 私からもこれを贈ります… この『約束の指輪』を。 [ルイ] !! ありがとうございます…神竜 様。 [ルイ] 僕の故郷はブドウが有名なんです。 この戦いが終わったら、ぜひ一緒に。 [リュール] ご家族に会えるのも楽しみにしています。 [ルイ] まさか、想いが通じるとは思っていませんでした。 貴方といる時が…僕の一番の幸せですよ。神竜様。