=== リュール & メリン === --- C --- [メリン] すみません…折り入って、 神竜様にお伺いしたいことがあるのですが。 [リュール] 私に聞きたいこと? [リュール] 大丈夫ですよ。 そんなに緊張せずに何でも聞いてください。 [メリン] ほ、本当ですか!? [メリン] ありがとうございます! もし断られたらって不安だったんです! [メリン] 僕、珍獣に興味があって、 特に竜族が大大大大好きなんです! [リュール] え? 私が…珍獣… [メリン] なかでも神竜様は世界で一人きり、 唯一無二の貴重な存在です! [メリン] そんな神竜様の生態について、 今日は話を聞かせていただきたいのです! [リュール] 珍獣… [メリン] どうしたのですか? [リュール] いえ、何でもありません。 質問をどうぞ。 [メリン] では早速… 神竜様の一日の行動を教えてください。 [リュール] 朝起こしてもらって、朝食を食べて、 お昼までは基礎鍛錬で体力作りですね。 [リュール] 他の人たちとあまり変わらないのですが、 これでいいのですか? [メリン] とても参考になります! 基本行動は他の人と変わりなし…っと。 [リュール] なんでしょう、その紙は。 どうして私の発言を書き留めているのですか? [メリン] いつの日か神竜様のことをまとめた 図鑑を作りたいと思っているんです。 [リュール] 図鑑!? そんな、恥ずかしいです。 [メリン] 恥じることなどありません。 神竜様のことは、後世に伝えるべきですから。 [リュール] そ、そうですか… --- B --- [メリン] じー… [リュール] ………… [リュール] メリン。じっと見られていると 鍛錬に集中できないのですが… [メリン] 僕のことはお構いなく。 いつもと同じ生活を続けてください。 [メリン] 図鑑を完成させるために、 行動を観察させていただいているだけですから。 [リュール] その観察は、いつまでなのでしょう。 [メリン] 図鑑ができるまで、 可能な限りずっとです。 [メリン] その代わりに、神竜様のすべてを、 完璧な図鑑に落とし込んでみせますので! [リュール] も、もうやめてください! [メリン] えっ… [リュール] 私のことを特別扱いするのはやめてください。 [リュール] 確かに私は竜族です。 寿命や能力だってメリンたちとは違います。 [リュール] ですが、私の気持ちは人間と同じです。 奇異な目で見られるのは嫌なんです。 [メリン] !! 神竜様… 不快にさせてしまい、申し訳ありません! [メリン] ですが、僕にとって神竜様はやはり、 人間より上位の存在なんです。 [メリン] 図鑑というと変な意味に聞こえるかもしれませんが、 僕の中では神々しい存在についての記述です。 [メリン] 図鑑を作ろうと思ったのは、貴重な存在を守るため、 大勢の人たちに神竜のことを知ってほしかったからです。 [メリン] だから決して… ご不快にさせるような意図は… [リュール] メリン… [メリン] よかれと思ってやったつもりが、 憧れの神竜様を傷つけてしまいました。 [メリン] 図鑑作りは止めにします。 本当にすみませんでした! [リュール] い、いえ… --- A --- [リュール] メリン。 誤解してすみませんでした。 [メリン] 神竜様… [リュール] メリンの神竜への思いがそこまでだとは 考えも及びませんでした。 [メリン] そんな… 悪いのは僕の方です… [メリン] ごめんなさい。神竜様の気も知らないで、 傷つけることをしてしまって。 [リュール] メリンの気持ちがわかったら、 協力しようと思えるようになりました。 [リュール] 確かに、この世界に神竜の文献は少ない…それは、 気軽に神竜と触れ合う機会がなかったからです。 [リュール] メリンのように、神竜に興味を持ち、 後世に伝えようと努めてくれる人は貴重です。 [リュール] だから今一度… 好きなだけ私のことを観察してください。 [メリン] ほ、本当ですか? [リュール] はい。 [メリン] あ、ありがとうございます! 僕にとって神竜様は特別なんです。 [メリン] 神たる竜のことを考えると辛いことも 悲しいことも全て忘れられて… [メリン] 楽しくて幸せな満ち足りた気持ちになるんです! これは後世に、いや、世界に伝えるべき気持ちです! [リュール] ふふ。メリンは面白い人ですね。 逆にあなたを観察したいぐらいです。 [メリン] そ、そんな神竜様のような方が… 畏れ多いです。 [リュール] でも一つだけ。これからは、 私を上位の存在などとは思わないでください。 [リュール] 私は世界に一人の竜族ですが… あなただって、たった一人の存在なんですから。 [メリン] ! なるほど。 互いに唯一無二の存在ということですね。 [リュール] そういうことです。 [リュール] 図鑑ができたら、 最初に私に見せてください。約束ですよ。 [メリン] はい! --- S --- [メリン] 神竜様! 図鑑の原稿ができました! 確認をお願いできますか。 [リュール] はい、もちろんです。 それでは早速… [リュール] 「…神竜 。 浮遊城ソラネルで、千年の眠りから覚めた竜族」 [リュール] 「謙虚で優しく、人を思いやる心を持ち、 人々を守るために戦いを続けている」… [リュール] なんだか照れてしまいますね… [メリン] でも、本当のことですから。 [リュール] 「寿命は数千年ともいわれ、能力は人間の比ではない」 [リュール] 「しかし、その生態は普通の人と変わらず、 人間と同じような生活を送っている」 [リュール] 「また、著者メリンの、 最も大切な存在でもある」… [リュール] メリン…これは… [メリン] ごめんなさい。つい、書いてしまいました。 この部分は清書の際には省きます。でも… [メリン] 神竜様にだけは、見ておいてほしくて。 僕にとって、神竜様がそれだけの存在であったこと。 [メリン] あなたを想う人間がいたことを、 後の世まで覚えていてほしくて… [リュール] ………… [リュール] …このまま載せてください。 [メリン] え… [リュール] ただし、これだけでは不足です。 著者メリンも神竜の大切な存在である、そして… [リュール] 神竜から『約束の指輪』を渡された、 ただ一人のパートナーである。そう書き加えてください。 [メリン] …! こ、これは…!! 神竜様、いけません、こんな大切なものを! [リュール] 私を想ってくれているのなら、 どうか受け取ってください。 [リュール] 神竜は、人であるメリンと特別な絆を結んでいた。 その事実を伝えましょう。 [メリン] …わかりました。 ありがとうございます、神竜様…! [リュール] この素晴らしい図鑑が完成すれば、 神竜も人間と変わらないと思ってもらえそうですね。 [メリン] はい。…僕、気づきました。 やっぱりこの図鑑はまだまだ完成しません。 [リュール] え? [メリン] 人と竜がどのように想い合い、暮らしたのか… 僕たちのこれからのことを、図鑑に盛り込みたいです。 [リュール] そうですね、メリン。 一緒に作り上げていきましょう。 [メリン] はい! [メリン] お慕いしております、神竜様。これから僕と、 何千年も残るような思い出を作っていきましょう…!