=== ミスティラ & メリン === --- C --- [メリン] ………… [ミスティラ] どうしたの、メリン? ぼーっとしちゃって。 [メリン] これは我が姫、失礼した。 少し考え事をしていてね。 [ミスティラ] 考えごと? [メリン] 姫と出会ったときのことを思い出していたんだ。 [ミスティラ] ああー! 家督を継ぎたくないって家出してたときのこと? [メリン] うん、そうだよ。 [メリン] 幼い頃から騎士になりたいと思っていたのに、 僕は次期村長になることが決まっていた… [メリン] その理不尽さに嫌気がさし、 村を飛び出したときの話だ。 [ミスティラ] メリンは昔からおてんばだったのね。 [メリン] いいや。 僕なんかおてんばの内に入らないさ。 [メリン] 僕が村を飛び出し 行く当てもなく放浪を続けて… [メリン] そんなときだよ。 オオカミに乗った本物のおてんばに出会ったのは。 [ミスティラ] あはは! あたしのことかな? [メリン] 野盗の集団をたった一人で相手していたね。 おてんばという表現は控えめかもしれない。 [ミスティラ] そこにメリンが加勢してくれたんだよね。 忘れられない出会いだよ。 [メリン] 僕もさ。 [メリン] あのとき姫に出会っていなかったら… 僕はここにいない。 --- B --- [ミスティラ] こうして二人で焚き火を囲んでると 一緒に放浪してたときのこと思い出すね。 [メリン] 野盗相手に大立ち回りをしている女の子… それが我が姫との初めての出会いだった。 [メリン] その後、気が合った僕たちは ソルムの各地を二人で放浪したんだ。 [メリン] もちろん、我が姫が本物の姫とは知らずにね。 [ミスティラ] だって別に聞いてこなかったし。 言わなくてもわかるかなって。 [メリン] いいかい、我が姫。 よく聞くんだ。 [メリン] 普通のお姫様は一人で城を抜け出したり、 何日も放浪して野盗と戦ったりはしないよ。 [ミスティラ] ね。 そんな窮屈な生活、あたしは無理かも。 [メリン] ンッフフ。 確かに我が姫には無理だろうね。 [メリン] でも、本当に驚いたよ。 一緒に各地を放浪した友だちがお姫様だったなんて。 [メリン] ある時、 僕は自分の事情をすべて姫に話した。 [メリン] 幼い時から騎士になりたかったこと。 でも、それが不可能なこと。 [メリン] だから、こうやって 家出をして放浪を続けている、とね。 [メリン] そうしたら、我が姫は… [ミスティラ] 本当の本当に騎士になりたいの? って…そう聞いたよね。 [メリン] そして僕は本当だと答えた。 [メリン] すると姫は自分の剣を僕の肩に当て、 騎士の叙勲をしたんだ。 [ミスティラ] あなたを騎士に任命します。 [メリン] 僕は笑った。 ごっこ遊びでもしたのかなと思って。 [メリン] でも、我が姫は笑っていなかった。 真剣な眼差しで僕を見つめていたんだ… --- A --- [メリン] 僕を騎士に任命した姫の目は、 真剣そのものだった。 [ミスティラ] だって、本当に真剣だったんだもん。 [ミスティラ] 一緒に旅をしたおかげで メリンがすごくいい子だってのはわかってたし。 [ミスティラ] この子があたしの騎士になってくれたら どんなに素敵だろうと思ったんだから。 [メリン] ふふっ。 ありがとう、我が姫。 [メリン] でも、できれば 叙勲をする前に身分を明かして欲しかったな。 [ミスティラ] も、もう! すぐ後に身分は明かしたでしょ! ちょっと忘れてただけだよ! [ミスティラ] それに叙勲が終わった後、 メリンの村まで一緒に行ったし! [メリン] ああ。 [メリン] 我が姫は… 村長である僕の母に頭を下げてくれた。 [メリン] 僕を自分の騎士にしたい。 その許しが欲しい、と。 [メリン] 母は驚いていたが、すぐに了承してくれた。 騎士の役目が終わったときに村長になることを条件に… [ミスティラ] 優しいお母さんだよね。 あたしの気持ちも、メリンの気持ちも汲み取ってくれた。 [メリン] ………… [メリン] 叙勲を受けた瞬間から、 僕は姫の騎士となった。 [メリン] あの日を境に僕の人生は輝きだしたんだ。 [ミスティラ] メリン… [メリン] そしてこの輝きは この先も一生、曇ることはない。 [メリン] だから、我が姫。 僕はあなたの騎士であり続ける。 [ミスティラ] ええ。メリン。 我が騎士… [ミスティラ] これから先もずっと、 あたしの騎士であり、よき友人であってね。 --- S ---