=== ヴァンドレ & モーヴ === --- C --- [モーヴ] ………… [ヴァンドレ] ………… [モーヴ] ヴァンドレ殿… なぜ俺に付いてまわるんだ? [ヴァンドレ] 人助けに警備仕事… 実に模範的な活動をしているのだな。 [モーヴ] 俺を見張っているというわけか。 [ヴァンドレ] 念のためにだ。 悪く思うな。 [モーヴ] 俺がまたあちら側に戻るとでも? [ヴァンドレ] そうは言っていない。 [ヴァンドレ] だが、お前のことに関しては、 全ての人が納得したわけではないのだ。 [モーヴ] そうだな… 俺はそれだけのことをしてきた。 [モーヴ] ヴァンドレ殿。 手数をかけて申し訳ないな。 [ヴァンドレ] 気にするな。 私は遠くから見ているだけだ。 [モーヴ] 俺もできるだけ努力するつもりだ。 皆に受け入れられるように… [ヴァンドレ] 努力するのは構わないが、 くれぐれも面倒事を起こすなよ。 [モーヴ] やはり信用を得るのは難しいか… [モーヴ] ヴァンドレ殿にも、恨まれているのだろうな。 無理もない。俺はルミエル殿を… --- B --- [ヴァンドレ] 今日も人助けに警備活動か。 [モーヴ] 別に嫌々活動しているわけではない。 昔からこうやって働いている方が落ち着くんだ。 [モーヴ] しかし、俺があちこち歩くのは、 ヴァンドレ殿には迷惑な話か。 [ヴァンドレ] そうだな。 見張っている身にもなれ。 [モーヴ] すまない… [ヴァンドレ] 冗談だ。 これは私の仕事だからな。 [ヴァンドレ] お前は好きにすればいい。 何をしようと私が口を挟むことではないのだ。 [モーヴ] ………… [モーヴ] ヴァンドレ殿。 俺がしたことについてはどう思っているんだ? [ヴァンドレ] …なんのことだ。 [モーヴ] ルミエル殿のことは、本当に申し訳なかった。 今まではっきり言えず悪かった… [ヴァンドレ] 今は味方になったんだ。 あれこれ言うつもりはない。 [ヴァンドレ] ルミエル様がご存命であれば 快くモーヴ殿を受け入れただろうからな。 [モーヴ] ヴァンドレ殿は俺のことが憎くないのか? [ヴァンドレ] 憎んだところで何かが変わるわけでもない。 [モーヴ] ………… [ヴァンドレ] あまり根を詰めるな。 [ヴァンドレ] お前が優しい人間だということは… ずっと見張っていて、もうわかっている。 [ヴァンドレ] これからの長い時間で、 いくらでも挽回の余地はあるはずだ。 [モーヴ] ヴァンドレ殿… 気遣い感謝する。 --- A --- [モーヴ] ヴァンドレ殿に頼みがある。 [ヴァンドレ] 頼みとは珍しいな。 話を聞こう。 [モーヴ] ………… [モーヴ] 俺にルミエル殿の話を聞かせてくれないか? [ヴァンドレ] ルミエル様の話を…? [モーヴ] 俺のせいで亡くなった人のことを できれば知っておきたいんだ。 [ヴァンドレ] …いいだろう。 [ヴァンドレ] しかし、ルミエル様との思い出は多すぎる。 どの話をするべきか… [ヴァンドレ] そうだな… あの話にしよう。 [ヴァンドレ] リトス王城に代々伝わる 一品物の食器が盗まれたことがあった。 [ヴァンドレ] 全員が犯人捜しに躍起になり、 とある侍女が犯人に浮かび上がったんだ。 [ヴァンドレ] 私がルミエル様に報告し処遇を尋ねると… 何もしなくていいと仰ったんだ… [モーヴ] ………… [ヴァンドレ] 犯人が見つからねば警備の評判は落ち、 示しも付かない。 [ヴァンドレ] あのときは困ったのをよく覚えている。 [モーヴ] それでどうなったんだ? [ヴァンドレ] 次の日の朝には食器が元の位置に戻っていた。 [ヴァンドレ] 目星を付けたのがばれたのかもしれないし、 売り払う勇気がなかっただけかもしれない。 [ヴァンドレ] 確かなことはわからないが、 ルミエル様は手を下されずに事件を解決なさった。 [モーヴ] ………… [ヴァンドレ] ルミエル様はそういう御方だ。 いつも笑顔で優しく、平和を願っていた。 [ヴァンドレ] 誰からも好かれて、 尊敬される立派な方だったんだ。 [モーヴ] 今感じるこの胸の痛みを… あのときに感じられたらな… [ヴァンドレ] 今のモーヴ殿は人々を助け守っている。 ルミエル様の意志を継いでいるのと同じだ。 [モーヴ] 俺はその言葉は肯定することができない。 しかし、ヴァンドレ殿の気持ちは嬉しく思う。 [モーヴ] ヴァンドレ殿のような人に、 もう少し早く出会えていたらな… [ヴァンドレ] 遅くなったかもしれないが出会ったのだ。 貴方はもう大丈夫だろう。 [モーヴ] 全ての人が納得するとは思わない。 [モーヴ] しかし、少しでも多くの人に 俺が変わったと思ってもらえるよう努力すると誓おう。 [モーヴ] それが、俺の責務だ。 --- S ---