=== ゼルコバ & アンナ === --- C --- [アンナ] こんにちは、ゼルコバ! わたしはアンナさんっていうの。よろしくね! [ゼルコバ] おお…かわいい「子ども」だな… 「お菓子」をあげよう… [アンナ] えっ? [ゼルコバ] 「焼き菓子」がいいか? 「飴」がいいか? 「なんでも」あるぞ… [アンナ] ちょっ、ちょっと… お菓子なんかいらないわ! [ゼルコバ] 「怖がる」ことはない。 おじさんは「純粋に」子どもが好きなだけで… [アンナ] ちがうの。わたしはたしかに子どもだけど、 中身は大人のぎょーしょーにんなのよ! [アンナ] お菓子なんて、売るほどもってるわ! [ゼルコバ] そ、「そう」なのか… [アンナ] というわけで、何か買ってくださいな。 [ゼルコバ] ふむ… では「商品」を見せてくれ。 [アンナ] はい、どーぞ! [ゼルコバ] ………… [アンナ] な、何よ… しぶいかおしちゃって… [ゼルコバ] 悪いが、「いいもの」がないな。 [アンナ] えっ? [ゼルコバ] 「子ども」相手に厳しいことは言いたくないが、 「こんなもの」に金は払えない。 [アンナ] ちょ、ちょっとまってよ! どこがいけないの? [ゼルコバ] …わかった。 ならば、あえて心を「鬼」にして言おう。 [ゼルコバ] 商品に「魂」が感じられない。 [アンナ] たましー? 何よ、それ… [ゼルコバ] わからないか… だからそんな商品「ばかり」を売ってしまうんだ。 [アンナ] な、な、なんですって!? [ゼルコバ] 商品は「作り手」の魂だ。 魂がこもっていないと、買い手は「ほしい」と思わない。 [アンナ] たましーのこもった商品って何? どんなものか、見せてみなさいよ! [ゼルコバ] いいだろう。今度、俺の「秘密の小屋」に招待する。 そこで「じっくり」見てもらいたい。 [アンナ] わ、わかった… 楽しみにしてるわ! --- B --- [アンナ] ここがゼルコバの秘密の小屋? [ゼルコバ] そうだ。俺の「作品」たちを見るがいい。 絵画に彫刻、キャンドル…「なんでも」ある。 [ゼルコバ] 全て俺が「精魂込めて」手作りした。 「気に入ったもの」があったら持っていっていいぞ。 [ゼルコバ] どれも「飛ぶように」売れるだろう。 [アンナ] ………… [アンナ] うーん…そーねー… たぶん…どれも売れないかなぁ… [ゼルコバ] 何? 「どうして」だ? [アンナ] たしかにいいものばかりよ。 でも見るからに凝り過ぎなの… [アンナ] もっとたんじゅんなものじゃないと 売れないわ。 [ゼルコバ] 「そんなこと」はない…! [ゼルコバ] 人は商品を手に取り、作り手の「魂」を感じる。 その魂の「対価」に金を払うんだ…! [アンナ] うーん。言いたいことはわかるけど、 それは時代おくれかな… [アンナ] わたしたちの世代じゃないかも… [ゼルコバ] うぅ…なんだこの「屈辱感」は… [ゼルコバ] …いいだろう。では今度、 お前が「気に入りそうな」ものを作ってやる。 [ゼルコバ] 「言葉」を失うぐらい、好みのものをな…! [アンナ] ふふっ、つくれるものならつくってみて。 楽しみにしているわ。 --- A --- [ゼルコバ] さあ、見てくれ。 「単純なもの」を作ったぞ。 [ゼルコバ] この彫刻ならば「文句」もないだろう。 [アンナ] ………… [アンナ] しつぼーしたわ… [ゼルコバ] 「失望」? なぜ? [アンナ] たしかにわたしは、たんじゅんなものじゃないと 売れないって言ったわ。 [アンナ] でもあなたは、芸術家みたいなものだから、 だきょーなんかしないでほしかった… [アンナ] たましーがどーのこーの言うのなら、 最後までそこにこだわり続けてほしかったわ… [ゼルコバ] ふっ、「甘い」な。 俺は「一切」、妥協していないぞ。 [アンナ] えっ? でも… [ゼルコバ] この彫刻は「ササッと」作ったかのように見える。 だがそれは「そう見えるだけ」の問題。 [ゼルコバ] 実際は「死ぬほど」凝っている。 [アンナ] ど、どういうこと? [ゼルコバ] その彫刻はまず、 「思う存分」凝りに凝って作った。 [ゼルコバ] その上で、「凝りに凝った感じ」を隠すべく、 今度は「隠す」ということに特化して凝ったのだ… [ゼルコバ] 結果、「未だかつてなく」凝った作品なのに、 凝った感が「皆無」のものができあがった… [ゼルコバ] それが、この「一品」だ。 [アンナ] き、気付かなかった… すごすぎるわ…もう、いみふめーなほどに… [アンナ] でも、これも売れないわ。 [ゼルコバ] えっ…? ど、どうしてだ? [アンナ] どうしてって、わかるでしょ。 凝りに凝りすぎて、せいさくひが高くなるからよ。 [アンナ] せいさくひが高くなれば、ねだんも上げなきゃダメ。 結局、誰も買わないわ。 [ゼルコバ] うぅ…「そういうこと」か… [アンナ] でも安心して。 これはわたしが買う。 [ゼルコバ] 何? [アンナ] あなたの考えかたに、かんどーしたの。 [アンナ] たましーだなんてこと、考えたこともなかった… そんなことも知らずに、バカみたいに売ってた… [アンナ] そんなんじゃ、いつまでたっても 一人前のぎょーしょーにんにはなれないわ。 [アンナ] だからこれを買って、手元においておきたいの。 今のこの気持ちをわすれないように。 [ゼルコバ] アンナ… [アンナ] アンナさん。 [ゼルコバ] アンナさん… [アンナ] ふふ、よろしい。ただし、そんなに払えないわよ。 せいぜい1ゴールドってところね。 [ゼルコバ] 「安すぎ」だろ… [ゼルコバ] だが、まあいい。「金額」は問題ではない。 [ゼルコバ] アンナさんの役に立てるのであれば、 「そのこと」にこそ、「意味」がある。 [ゼルコバ] がんばれよ、「若き行商人」。 「応援」しているぞ。 [アンナ] ありがと! あなた、思ったよりいい人ね。 [アンナ] よかったら、いっしょにお菓子でも食べる? すっごくいいのをしいれたのよ。 [ゼルコバ] 有難く、いただこう… --- S ---