=== ゼルコバ & ジャン === --- C --- [ゼルコバ] ジャン、お前は「医者の卵」だったな。 ちょっと「こっち」にきてくれ。 [ジャン] えっ…? た、確かにそうやけど…なんで? [ゼルコバ] 何を「怖がって」いる? [ゼルコバ] 心配するな。俺は子どもが「大好き」なんだ。 「溺愛」こそすれ、「怖いこと」は絶対にしない。 [ゼルコバ] ほら、「お菓子」でも食うか? 「おもちゃ」もあるぞ? [ジャン] う、ううん…大丈夫や。 ありがとう… [ゼルコバ] そうか…まあいい。とにかく「こっち」にこい。 「少し」意見を聞きたいんだ。 [ジャン] 意見って…なんの? [ゼルコバ] 俺は「薬」を作れる。 だから医者のお前の「助言」がほしい。 [ゼルコバ] 見ろ。 これは俺が作った「蒼の秘薬」だ。 [ジャン] 蒼の秘薬? [ゼルコバ] ああ。これを飲むと「頭の中の雑音」が たちどころに「消える」。 [ジャン] あ、あぁ… 頭痛薬ってことやな。 [ゼルコバ] で、これが「紅の秘薬」。 塗れば「紅き悲痛な叫び」の流出が「止まる」。 [ジャン] つまり傷薬やな。 [ジャン] 蒼の秘薬とか紅の秘薬とか… いろいろ無駄に意味深に言う人やなぁ… [ゼルコバ] 「何か」言ったか? [ジャン] なんでもない。こっちの話や。 [ジャン] でも、すごいやないか。どの薬もしっかりできてる。 あんた、腕のいい薬師やな。 [ゼルコバ] 「母親」が薬師だったからな。 見よう見まねで「学んだ」のだ。 [ゼルコバ] 薬として「問題ない」なら安心だ。 全てお前に「預けて」おく。 [ジャン] あんた。見かけによらず、ええ人やな。 ほんまにありがとう。 --- B --- [ジャン] ゼルコバさん、この間はありがとう。 あんたの薬は評判がええ。みんな感謝しとるで。 [ゼルコバ] それはよかった。 「薬」の作り方を教えてくれた母親に「感謝」だ。 [ジャン] 自分からもお礼が言いたいわ。 お母さんは、どこにおるん? [ゼルコバ] もう「いない」。 「十年以上」前に死んだ。 [ジャン] そ、そうか… ごめんな。変なこと聞いてしもて… [ゼルコバ] いや、「気」にしないでくれ。 [ゼルコバ] 優しい女性だった。 こんな俺を、大事に育ててくれた。 [ゼルコバ] 幼かった頃は、外でどんな嫌なことがあっても、 帰って母親の笑顔を見れば…何もかも忘れたものだ。 [ジャン] ………… [ゼルコバ] どうした? [ジャン] 自分もお母さんのことを思い出してしもて。 [ジャン] うちのお母さんも同じや。すごくわかるで。 いつもかわいがって、愛情いっぱいに育ててくれた… [ゼルコバ] お前の母親も… 「亡くなって」いるのか? [ジャン] いや、うちは生きとる。 ちょっと腰が悪いぐらいや。 [ジャン] ただ、ここのところ会えてなくて… [ゼルコバ] 「寂しくなった」というわけか。 [ジャン] そうやな。お母さんの誕生日も近いけど、 今年はどうしよう… [ジャン] 誕生日はいつも一緒にお祝いしてきたけど、 今回は離れたままになりそうや。 [ゼルコバ] だったら、「手紙」でも書いたらどうだ? [ジャン] 手紙… [ジャン] なるほど、ええ考えや。 ありがとうな、ゼルコバさん。 [ゼルコバ] 「礼」には及ばない。 「子ども」が喜ぶなら、本望だ… --- A --- [ジャン] ゼルコバさん。 あの後、お母さんに手紙を書いたんや。 [ジャン] 今日、送ろうと思うねんけど、 その前に内容を聞いてくれへんか? [ゼルコバ] ああ、「お安い」ご用だ。 [ジャン] ありがとう。 ほな読むで… [ジャン] お母さん。お誕生日おめでとう。 元気にしてるか? [ジャン] こっちは元気やけど、 実は先日、怖そうな見た目のおじさんに会った。 [ゼルコバ] なんだと? 「不審者」か…? [ジャン] 最初に話しかけられたとき、 こっちにこいと言われただけで足が震えた。 [ジャン] うすら笑いしながら近づいてきて、 お菓子とかおもちゃをくれるって言われて… [ジャン] もう終わりや。 今日が命日やと思った。 [ゼルコバ] …「俺」のことか… [ジャン] でもな、その人… 実はすごくええ人やった。 [ゼルコバ] ! [ジャン] こうして手紙を書くことになったのも、 その人のおかげなんやで。 [ジャン] お母さん、よく言うてたな。 人を見かけで判断したらアカンって。 [ジャン] 離れて暮らすようになってから、 お母さんのすごさを思い知らされてる。 [ジャン] お母さんの子に生まれてよかった。 ずっと元気でいてや。 [ジャン] 来年の誕生日にはきっと帰ります。 お父さんにもよろしく。 [ジャン] …ジャンより。 [ジャン] こんな感じや。 変かな? [ゼルコバ] いいや、「何も」悪くない。 「そのまま」送るといい。 [ゼルコバ] まさか「俺」まで登場するとは思わなかったが… ジャンの「印象」に残ることは、「悪くない」… [ゼルコバ] よかったら「これ」も一緒に送ってくれ。 俺が特別に調合した「漆黒の秘薬」だ… [ジャン] 漆黒の秘薬? [ゼルコバ] お母さんは「腰」が悪いんだろ? だったら「これ」でよくなるはずだ… [ジャン] ありがとう、ゼルコバさん。 何から何まで… [ゼルコバ] ジャン。 お母さんを、大事にするんだぞ… [ゼルコバ] 俺は一度も、親孝行らしいことをできなかった… それを…ずっと後悔している。 [ゼルコバ] 親孝行というものは、生きている間にしかできない。 つまり俺にはもう、絶対にできないんだ… [ジャン] ゼルコバさん…わかった。 あんたの分も、しっかり親孝行するで。 [ゼルコバ] ああ…「そう」してくれ。 [ジャン] それから、今回のお礼に ゼルコバさん孝行もせなあかんな。 [ジャン] 子供が好きなんやったら、 これからいくらでも遊びに付き合うで! [ゼルコバ] なんだと… [ゼルコバ] 「礼」は不要…と言いたいところだが、 これに関しては「有り難く」受けることにしよう… [ゼルコバ] ありがとう、ジャン… --- S ---