=== ゼルコバ & ユナカ === --- C --- [ユナカ] …ゼルコバ氏、いい加減にしてくだされ。 いったいなんの真似ですか? [ゼルコバ] 「何が」だ? [ユナカ] とぼけないでいただきたい! なぜ執拗にわたくしめの背後を取ろうとするのです。 [ゼルコバ] ………… [ゼルコバ] よく気付いたな… お前…もしや「殺し」を生業とする者では…? [ユナカ] !? [ゼルコバ] その反応…やはり「そう」か。 「怪しい」とは思っていた。 [ゼルコバ] だから、執拗にお前の「背後」を取り、 「反応」を伺っていたんだ… [ユナカ] ………… [ユナカ] …ふっ、なるほど。 なかなかやりますな。 [ユナカ] 実は、わたくしめも同じことを聞こうと 思っておりました。 [ゼルコバ] 何? [ユナカ] ゼルコバ氏からにじみ出る殺気は、 普通の人間のそれではないと思っておりましたゆえ。 [ユナカ] …わたくしめたちはお互いに、 同業者ではないかと疑っていたわけですな。 [ゼルコバ] どうやら、「その」ようだな… [ユナカ] でも、もう二度とこの話はなさらぬよう。 [ユナカ] 人を殺める仕事をしていたのは過去のこと。 わたくしめは、前の自分を捨てたのです。 [ゼルコバ] 「足を洗った」のは俺も同じだ。 [ユナカ] そこも同じというわけですな。 でも、わたくしめにはどうでもいいお話… [ユナカ] では、失礼いたします。 --- B --- [ゼルコバ] ユナカ、「この間」の話だが… [ユナカ] 言ったはずですぞ。 もうあの話はしたくないと。 [ゼルコバ] わかっている。 ただ、「一つだけ」聞いておきたいことがある。 [ゼルコバ] 「お前」は言っていた。俺からにじみ出る「殺気」が、 「普通の人間のそれ」ではないと。 [ゼルコバ] あれはどういうことだ? [ユナカ] ………… [ゼルコバ] 頼む。「客観的な自分」を知っておきたいんだ。 今後、自分の「命」を守るためにもな。 [ユナカ] …いいでしょう。 [ユナカ] 殺気…つまりゼルコバ氏の所作の一つ一つが、 殺しに結びついて見えるのです。 [ゼルコバ] 「所作」だと? [ユナカ] 例えばその目つき。 何者をも恐れぬ、冷たく異様な視線… [ユナカ] 人の命を仕事の対価として勘定しているような、 普通ではない眼差しです。 [ユナカ] 常に冷静に相手を分析し… 最短で殺める方法を模索している… [ゼルコバ] 「そんなこと」は… [ユナカ] 無い、とは言わせませぬぞ。 例えば今もそうです。 [ユナカ] もしわたくしめが攻撃を仕掛けた場合、 どう避けてどう返すか… [ユナカ] 常に優位な位置取りをしつつ、 そんなことばかり考えておりますな。 [ゼルコバ] ………… [ユナカ] わたくしめが言ったのは、こういった殺気のこと。 普通の人間のそれではありませぬ。 [ゼルコバ] まさか「そこまで」見破っていたとはな。 [ユナカ] 元は同業者ですから。当然ですぞ。 [ゼルコバ] 貴重な「助言」に感謝する。 今後の自分を見つめ直す「材料」にさせてもらう。 [ユナカ] いえ。 それではまた… --- A --- [ユナカ] ゼルコバ氏…よろしければ、 同業のお話をしませぬか? [ゼルコバ] どうした。 「この話」は「したくない」のではなかったのか。 [ユナカ] 確かにそうでしたな… [ユナカ] 同業の話をすることで、 また過去に取り込まれてしまうと恐れていました。 [ユナカ] しかし、意外なことにゼルコバ氏と話していると、 少しずつ過去から解放される心持ちがするのです。 [ゼルコバ] 何? [ユナカ] 同じ生業を持っていた者同士、何も隠さず 話せるところが良いのかもしれませんな。 [ゼルコバ] 「そういうこと」か… だが、何の「話」をする? [ゼルコバ] なぜ殺しを「生業」とするようになったのか… なんて話はしないでおこう。 [ゼルコバ] 「悲惨な」空気になりそうだ。 [ユナカ] ですな。 正直、あのころは地獄でしたぞ。 [ゼルコバ] 俺もだ。今でも「大変」なときはあるが、 あの「地獄」に比べたら生ぬるい。 [ゼルコバ] ユナカ。お前が「殺し」を始めたきっかけは 「不可抗力」だったんだろう? [ユナカ] なぜそれを? [ゼルコバ] 見ていれば「わかる」。 不可抗力ならば…「悔いる」ことはない。 [ゼルコバ] その過去は、仕方ないことだったんだ。 誰もお前を責められない。 [ユナカ] …! [ゼルコバ] それに、「その当時のお前」がいるから 「今のお前」がいる。 [ゼルコバ] 全て「今のお前」を咲かせるための 「肥やし」だったんだ。 [ユナカ] ………… [ユナカ] ゼルコバ氏… やはり、言葉に重みがありますな。 [ユナカ] 同業者だった者の言葉は わたくしめを心から癒やしてくださる… [ゼルコバ] やめてくれ。 大した話ではない。 [ユナカ] …ゼルコバ氏。 わたくしめには夢があります。 [ユナカ] 世界が平和になったら、何も気にすることなく、 どこかでのんびりと暮らすのです… [ゼルコバ] 「いい」じゃないか。 [ユナカ] そうなった暁にはぜひ、 ゼルコバ氏に遊びにきていただきたい。 [ゼルコバ] もちろんだ。「よろこんで」行くぞ。 そのときはまた俺たち「ならでは」の話をしよう。 [ユナカ] ぜひ。 今から楽しみでなりませぬ。 [ゼルコバ] 「俺も」だ。 夢の実現のためにも、ともに「今」を戦い抜こう。 [ユナカ] 約束ですぞ。 同じ過去と未来を共有する、貴重な仲間として。 --- S ---