202103180 シークレットリーエバーアフター(Secretly Ever After)(SEA編) 第5章 そして御旗は再び未来にはためく 第１話 そして御旗は再び未来にはためく-18
【スイハ】
ずっと以前から、何か大切なことを
忘れている…そう感じていました
【スイハ】
ですが、それが何なのか分からず
今まで過ごしてきたんです
【スイハ】
…………
【ヒョウハ】
おい、スイハ
来週の勤務シフトだけどな
【スイハ】
…………
【ヒョウハ】
おい！
聞いてんのかっ？
【スイハ】
…すみません
何か用ですか、ヒョウハ？
【ヒョウハ】
…ったく、お前なぁ
【スイハ】
…………
【ヒョウハ】
…そ、そういや
こないださぁ
【ヒョウハ】
久し振りにみんなと会ったんだけど
オルフェウスとロジェスティラが
大変なことになってて…
【ヒョウハ】
あたしもちょっと
危なかったっていうか…まあ、
どうにかなったんだけどなっ
【ヒョウハ】
だ、だからさ！
もし何か悩んでるなら
あたしが話を聞いてやっても…
【スイハ】
…えっ？
何か言いましたか？
【ヒョウハ】
くっ…な、何でもないよ！
【スイハ】
…………
【スイハ】
…やっぱり忘れている
何か…誰か…誰か？
そう…“彼女”のことを…
【スイハ】
“彼女”…？
【スイハ】
“彼女”のことを忘れている…
そんな漠然とした思いは日に日に
募っていきました
【スイハ】
でも、だからといって
何ができるわけでもなく…
【スイハ】
皆と集まる日が近づいてきたんです
【スイハ】
少し早めに着きましたね
教会に挨拶をしておきましょう
【スイハ】
きっとエルキュールは
すでに来ているでしょうから
【エルキュール】
…………
【スイハ】
やっぱりエルキュールは
先に来てた
いつも一番乗りだよね
【スイハ】
…でも、いつもと様子が違うような
何か悩みごとがあるのかな？
【スイハ】
話を聞いてあげたいけど、
何て話しかければ…
【スイハ】
こんにちは、エルキュール
久し振りですね
【エルキュール】
…あ！
スイハ！
久し振りですねっ
【スイハ】
あの…最近、調子はどうですか？
【エルキュール】
調子ですか？
えっと…
【エルキュール】
…実は、たまに感じることがあって
私、何かが足りないんですっ
【スイハ】
何かが？
【スイハ】
エルキュールに足りないものなんて
あるのかな？
私には…あるけど…
【スイハ】
エルキュールは皆の希望です
足りないものなんてありませんよ
【エルキュール】
そう、ですか？
【スイハ】
はい
私と違って…
私は、何か忘れている気がしていて…
【エルキュール】
忘れていること？
【スイハ】
ええ…
誰か…“彼女”のことを…
でも、それが誰なのかが…
【エルキュール】
！？
【スイハ】
どうしました、エルキュール？
【エルキュール】
ああっ
やっぱり、そうです…
私に足りないもの…“彼女”…
【エルキュール】
私は皆の希望…
完璧じゃないと…！
そのためには“彼女”がっ
【スイハ】
あの…エルキュール？
【エルキュール】
スイハ、ありがとうございます！
私、決めましたっ
それでは、また集まりの日に！
【スイハ】
え？
あのっ…
【スイハ】
うぅっ…
上手く話せなかったなぁ…
【スイハ】
次に会ったときは、
もっと上手に話を聞こう！
【スイハ】
そして集まりの日――
【ミネルヴァ】
エルキュールが来ていないなんて
珍しいですね
【ネス】
今まで欠席はもちろん遅刻だって
したことがなかったのに…
【ダモクレス】
まあ、そういうときもあるよ～
【グラーシーザ】
しかし、
なんのれんらくもなしというのは
エルキュールらしくないな
【フライシュッツ】
病気なのかな～？
おねーちゃん、心配だよ…
【スイハ】
エルキュールが来ていない？
数日前、確かに会ったのに…
【スイハ】
何かあったの…？
【スイハ】
あ、あの！
【ダモクレス】
わーっ！
ビックリした～
【ミネルヴァ】
どうしました、スイハ？
急に大声を上げて
【スイハ】
エルキュールはこの町に来ています
数日前、私は会いましたからっ
【ミネルヴァ】
そうだったんですね
では、何か理由が――
【スイハ】
探してきます！
【ミネルヴァ】
スイハ！？
待って下さい
そんなに慌てなくてもっ
【スイハ】
嫌な予感がする…
何か良くないことが…
【スイハ】
！？
【スイハ】
今のは…間違いありません
エルキュール！
【スイハ】
この町に、こんな地下空洞が
あったなんて…
【エルキュール】
誰ですかっ？
【スイハ】
エルキュール？
私です！スイハです！
【エルキュール】
ああ、スイハですか
よくここが分かりましたね
【スイハ】
あなたを偶然、見かけて…
それより、どうして集まりに…
ええっ！？
【スイハ】
エルキュール…
あなたの後ろの空間に裂け目が
できています！
【スイハ】
急いで離れて下さい
すぐ皆に連絡をっ
【エルキュール】
ダメですよ
【スイハ】
エルキュール？
【エルキュール】
やっとここまで広げたんです
もっともっと広げないと
いけません
【スイハ】
エルキュール…
あなた、ここで何をしているんです？
【エルキュール】
もちろん…準備をしているんですよ
“彼女”を取り戻すための
【スイハ】
“彼女”…！？
【エルキュール】
ずっと…ずっと…気になっていました
何か忘れてることがあるって…
【スイハ】
エルキュールが感じていた
足りないものって…
私と同じだったの？
【エルキュール】
それが何なのか、
やっと分かったんです
この世界には“彼女”が足りない！
【エルキュール】
私は“彼女”を取り戻します
真の希望になるために！
【スイハ】
…………ああ、エルキュール
【スイハ】
そうだったんですね…
私が余計なことを
言ってしまったばっかりに…
【スイハ】
エルキュールは世界の希望
いつも私達の前に立って
世界を導いてくれていた
【スイハ】
でも、その重圧に
苦しんでいたんですね
彼女にも支えが必要だったのに…
【スイハ】
そんなことにも気づけず、
足りないものはないなんて、
私はなんて無責任なことを…
【スイハ】
エルキュールが…
世界の希望が揺らいでいます
それは、いけません
【スイハ】
“彼女”がいれば、エルキュールは
希望でいられる
それなら！
【スイハ】
エルキュール
私も同じ気持ちです
一緒に“彼女”を取り戻しましょう
【エルキュール】
本当ですか、スイハ！
とても心強いです
【スイハ】
エルキュール…あなたをそこまで
追い詰めたのは、あなた自身の
信念の強さ
【スイハ】
でも、もう一人で背負わせたりしない
私があなたを支えてみせます
たとえ、この手を汚しても…
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