202305031 初心者クエスト 不可思議仕儀ツークンフト 不可思議仕儀ツークンフト 第1部 前編 不可思議仕儀ツークンフト 第1部 前編 3 - 不可思議仕儀ツークンフト-2 不可思議仕儀ツークンフト 第1部-2 不可思議仕儀ツークンフト 第1部-2 戦闘前
カシウスが町に着いて翌日のこと
カシウスは 町を見て回るなら案内するという アルマスの誘いに乗ったのだが…
【カシウス】 …………
【アルマス】 ペットが逃げた!? 特徴教えて、私も探すから!
アルマスは今日も 町の困りごとを解決して回っていた
【アルマス】 ごめんね 案内がついでになっちゃったけど ざっくりは伝わったかしら
【カシウス】 十分よ アルマスの言っていた閉塞感 それが町に漂っていることも理解した
町自体に特筆すべきことも 遭遇したアクシデントも当人には 問題であってもありふれたものだった
【カシウス】 活気ある町並みも 互いの利益が発生するという 余裕が生まれるからこそのもの
【カシウス】 しかし他者のアクシデントという 不利益に関与するほどの余裕を この町の人は持ち得ていなかった
【アルマス】 極端な言い方にも思えるけど その通りね
【アルマス】 誰も悪い訳じゃない 本当なら助けたいとさえ思ってる この町に良い人が多いのは事実だから
【カシウス】 それはアルマスがこの町で過ごして 得られた経験によるもの
【カシウス】 キル姫のような存在でなければ この町に訪れた人は疎外感を受ける
【アルマス】 助け合いの精神っていうのは 言うのは簡単だけど難しいもの それに完璧な循環って訳じゃないから
【カシウス】 円環に至らぬ欠けた理想論 しかし、欠けているものを 補う方法があるとすれば…
【カシウス】 いつか、乗り越えることができる
【アルマス】 その前に町が終わってしまうかも …だから私は食い止めようと この町に居続けてるのかもしれないわ
【カシウス】 アルマスはどうしてそこまで この町という世界に干渉するの
【アルマス】 え? いや、世界に干渉してるとか そういうつもりはまったくないけど…
【アルマス】 今の話の流れ的に 人助けしてるんだー って理解になるものだと思ったけど
【カシウス】 それは状況に対する理解 アルマスの行動理念は不可解
【アルマス】 人助けを不可解って言われても…
【カシウス】 かつての争いがあった世界と違い キル姫が人々の営みに関わって 助けられるのは目の前の少人数
【カシウス】 下手をすればその当人から 考えることを放棄するという 怠慢を生みかねない行為だと思う
【カシウス】 その種の怠慢は人々の営みを 混乱へと導くことであって 世界の理を乱す遠因になるのでは?
【アルマス】 …私は私の行動にいちいち 世界がどうとか考えてないわよ
【アルマス】 目の前に困っている人がいる その問題を放っておくことなんて 私にはできない、それだけよ
【カシウス】 あなたらしいわね
【アルマス】 私は私だからね
ともすれば皮肉にも聞こえる 会話だが、そうではないことは いまさら説明する間柄でもなかった
【カシウス】 怠慢という堕落は忌むべきもの けれど寄り添い合って紡いできた 今の世界もまた理想のひとつ
【カシウス】 キル姫と違って人の一生は短い… 人の記憶は途絶え、その干渉は 忘れ去られ、同じ過ちを繰り返す
【カシウス】 けれど、その時にもまた アルマスのような存在が 人々の営みを支えていく…
【カシウス】 それが巡る世界の流れ 文明と言う形の答え… 怠慢すらも糧になる…
【アルマス】 …それは違うと思うわ
【アルマス】 その時っていうのが近い将来か 遠い未来のことかわからないけど 私みたいな存在がいるとは限らないわ
【カシウス】 なら、やはり過度な干渉は 長期的には悪影響である、ってこと?
【アルマス】 人は一度直面した問題に対して たとえ誰かの手を借りたとしても 解決できたという事実を遺すのよ
【アルマス】 それをずーっと継承していって 一度はできたんだからできるはず っていつかは乗り越えられちゃう
【カシウス】 その理屈は自らの手で乗り越えた もしくは向き合い続けたからこそ 発生する可能性だと思うけれど
【アルマス】 うーん、解決できるって知るだけで 十分に頑張れちゃうんじゃないかしら
【アルマス】 それがカシウスの言う人の営み 世界の理ってやつだって私は思う …そう考えるとみんなすごいわよね
【カシウス】 …………
【アルマス】 ま、この町の根本的な問題を 解決できない私の言葉じゃ カシウスは納得できないでしょうね
【カシウス】 そんなことはないわ 思考の参考になったわ
【アルマス】 そう、ならいいけど…ってあれ?
ふたりのもとへ 焦った様子の如意金箍棒が駆けてくる
【如意金箍棒】 大変なの…っ! 昨日のあの子がいなくなっちゃって!
アルマスとカシウスは顔を見合わせる
【アルマス】 町の外はキル姫にしか探せない ってなるとたしかに人手不足ね
【カシウス】 …………
【アルマス】 …手伝わせて悪いわね
【アルマス】 まだ、カシウスの中では 人の営みに干渉することへの 答えは出ていないんでしょ?
【カシウス】 考えている間でも 行動することはできる
【カシウス】 それにあくまでわたしは アルマスの手伝い
【アルマス】 助かるわ …って、あそこ、魔獣!?
【カシウス】 前方に小さな影も――
カシウスが言い終える前に アルマスは魔獣のいる方へと 駆け出していっていた
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