210112050 インテグラルノア編(擬彩されし不可逆世界編) 第11章 問いかける幻獣 ―ダイアローグ― 第2話 対話のために-5
【天沼矛】 はああああああああ!!
【天沼矛】 …ようやく中に入れました はじめまして 天沼矛といいます!
【デュランダル】 私はデュランダル カシウス、今すぐここから出るんだ
【カシウス】 そういうわけにはいかない… わたしはウロボロスとの対話を 続けなければならないの
【カシウス】 答えを見出すために
【デュランダル】 ここに答えなどない
【カシウス】 えっ…?
【天沼矛】 そう…こんなところで問答を続けて いても答えは永久に出ません!
【天沼矛】 答えはいつだって 自分自身の中にあるんですから!
【ウロボロス】 非論理的だな 思考を放棄している
【天沼矛】 でも、それが常に悪いことだとは 思いません!
【デュランダル】 思考することは大切だ 思考とは理性 自身を律する基となるもの
【デュランダル】 だが、もしそれに従っていたのなら 私達はきっとキラーメイルになど なってはいなかった
【天沼矛】 はい その決断は決して論理的なものでは ありませんでした
【天沼矛】 あううぅぅっ…!
【八咫鏡】 くうぅぅぅっ…!
【草薙剣】 ぐぬうぅぅっ…!
【タツヤ】 あんな幼い子達を苦しませて、オレが のうのうと生きていて良いはずが ないでしょう!
【タツヤ】 決めました オレもキラーメイルの実験体に なります!
【タツヤ】 彼女達が辛い思いをせず笑っていら れる世界をオレは作りたいんです そのためにキラーメイルになります!
【天沼矛】 オレは、目の前で苦しんでいる子達を 見て決断しました
【天沼矛】 ただ、一心に 彼女達が笑っていられる世界を 作りたくて!
【デュランダル】 私も似たようなものだ 多くは語らないが
【デュランダル】 私自身を突き動かした騎士道の根幹に あったものは理性ではなく… 愛だった
【天沼矛】 カシウス! ここから出ましょう キミが求める世界がどんなものか…
【天沼矛】 オレ達に聞かせて下さい その世界を、オレ達は全力で実現 させてみせます!
【デュランダル】 もう大丈夫だ 「変わらない穏やかな日常」は 永続できる
【カシウス】 その根拠は? 価値は…本当にあるの?
【デュランダル】 根拠は私達が作り出す 価値は、必ずある
【天沼矛】 あると信じればいいんです 信じるキミがそこにいればいい それが始まりなんです!
【カシウス】 始まり…
【老婆】 おや、お嬢ちゃん 見ない顔だね
【ユニア】 あ! カシュ姉!カシュ姉!
【ユニア】 カシウスはカシウスのままでいるのが 一番だよっ
【ユニア】 カシウス…あなたはずっと そのままでいてね 私は、もう無理だから…
【ユニア】 ずっと穏やかな日々が続いて くれれば、それだけで良かったのに
【カシウス】 …………価値は、ある
【カシウス】 とても個人的なことだけれど… わたしにとっては、かけがえのない ものだった…
【天沼矛】 そうです! それこそが、君の答えなんです!
【デュランダル】 ここから出るんだ ウロボロスは君を永遠の問いに 閉じ込めただけだ
【デュランダル】 君が力を求めるのなら、 私がその剣となろう 騎士道に誓って
【天沼矛】 オレだっています キミが背負い、戦うことなんて ないんです
【天沼矛】 さあ、一緒にいきましょう!
【ウロボロス】 …行くのか それもまた…必然
【カシウス】 ありがとう…二人とも
【カシウス】 でも、わたしはウロボロスに 伝えないといけない わたしが見つけた答えを
【ウロボロス】 お前の見つけた答え… 是非、聞かせて欲しい
【ウロボロス】 無常が理の世界で、 「変わらない穏やかな日常」に どれほどの価値があるのか
【カシウス】 ウロボロス… あなたと幾つもの言葉を積み重ね 思考を繰り返してきた
【カシウス】 だから、あなたの言う通り、 すべては無常…人々の死も世界の 終焉も自然の理だと分かる
【ウロボロス】 では、「変わらない穏やかな日常」に 如何なる価値がある?
【カシウス】 寂しいの…
【ウロボロス】 …………?
【カシウス】 たとえ誰しもがいつか死ぬ身だと しても…いなくなったら悲しい… 会えないのは寂しい…
【カシウス】 わたしは…ユニアにいなくなって 欲しくなかった…誰一人、失いたく なかった…
【カシウス】 自然の理だとしても、誰かがいなく なるのは悲しくて寂しい…
【カシウス】 「変わらない穏やかな日常」が 失われるのは悲しくて寂しい…
【カシウス】 だから守りたい そう思った
【カシウス】 きっと、それだけのこと… あなたのように大きな視点で見る ことができなくて、ごめんなさい
【カシウス】 でも、やっとわたしはわたしの生きる 意味を見出すことができたから
【カシウス】 「変わらない穏やかな日常」を守る わたしは、そのために生きていく
【カシウス】 これがわたしの答えよ ささやかなものだけれど、 とても、大切なことなの…
【カシウス】 あなたの力があれば、きっと多くの ことができたと思うけれど… それは諦めないとね
【カシウス】 わたしはわたしの力で、 何とかやってみる…
【天沼矛】 大丈夫です キミにはオレ達がいます!
【デュランダル】 嘆くことはない 希望はある
【デュランダル】 私達が正気を取り戻したのは、 一人の少年がその身を顧みずに 勇敢な決断をしてくれたからだ
【天沼矛】 たった一人の命…それは小さなもの かもしれないけれど、きっと世界を 変えるほどの可能性に満ちています!
【天沼矛】 カシウス、キミの答えは決して 小さなものではありません
【カシウス】 そうだと…いいな
【ウロボロス】 …………
【カシウス】 …ウロボロス 一緒に来る?
【ウロボロス】 その問いかけは不可解だ お前は別の力を手に入れたはず…
【カシウス】 あなたが…寂しそうに見えたから
【ウロボロス】 寂しそう…このウロボロスが 寂しさを感じていると? ふっ…興味深い…
【ウロボロス】 確かめたくなったのだ この者達を破滅の運命から救った という少年のように
【ウロボロス】 ささやかな日常に意味を見出した お前のように
【ウロボロス】 世界にまだ希望はあるのか 終焉に抗う意味はあるのかをな
【ウロボロス】 カシウス…これからも思考を続けると 誓えるか?
【カシウス】 もちろん わたしはどんなことがあっても、 思考を止めたりしない
【カシウス】 「変わらない穏やかな日常」を守る ため、思考を続けるわ
【ウロボロス】 ならば、それを誓約と為そう
【ウロボロス】 誓約は契約となり、ひとたび違えば お前は永遠に思考せぬ傀儡に墜ちる
【カシウス】 問題ない…
【ウロボロス】 では、ともに歩もう 「変わらない穏やかな日常」が 永遠に続く「久遠の世界」を求めて
Next: 210112061