210702090 インテグラルノア編(擬彩されし不可逆世界編) 第7章 夢追い人―デザイア― 第2話 縁-9
【ムラマサ】 …………
【プタハ】 おおっ ここにおったのか 寝所におらぬので心配したぞ
【プタハ】 さあ、良い子だ 我とともに寝所に戻ろう 眠れぬのなら子守歌を歌ってやるぞ
【ムラマサ】 プタハ… 拙者は、主君の下に戻らなくて 良いのでしょうか…
【プタハ】 悩んでおるのだな 離れていてもマスターへの忠義を 忘れぬとは、偉いぞ!
【プタハ】 大切なマスターのためにも、 そなたはしっかり傷を癒さなくては ならぬ
【ムラマサ】 傷は、もう癒えました 助けて頂いたことには感謝しています ですが…
【プタハ】 よいよい 礼など不要だ
【プタハ】 我が子を慈しむのに、 見返りを求めることがあろうか
【プタハ】 そなたは何も心配することなく、 母に甘えていて良いのだぞ
【ムラマサ】 私は…戦いに赴かねばなりません… 主君のために…
【プタハ】 うううっ… そなたの心は、いまだ傷ついたまま なのだな…
【ムラマサ】 えっ… 何故、泣くのです…? 私は…
【プタハ】 よいのだ もう、そなたが剣を取ることはない これ以上、傷つくことはないのだ
【プタハ】 ムラマサ…優しい子よ その身にどれほどの重荷を背負い、 苦難に身をさらしてきたのだ
【プタハ】 懸命に背伸びをして、 恐れを無理に押さえ込んで… 本当は辛かったのであろう?
【ムラマサ】 それは…
【プタハ】 もう案ずることはない 我がそなたの苦しみを全て 取り除いてやろう
【プタハ】 だから、母に安心した笑顔を見せて おくれ…この先、ずぅっと…な
【ムラマサ】 私は…私、ずっと辛かった… 苦しかった… 姉様のようになりたくて…
【ムラマサ】 でも…このままでも、いいの…?
【プタハ】 そうだ そなたは、このままでいいのだ 目を閉じ、三つ数えよ
【ムラマサ】 …一つ …二つ …三つ
【プタハ】 今、そなたの苦しみは全て我が 受け取った
【プタハ】 これでもう、そなたを傷つけるものは 何もないぞ 安心して、おやすみ…
【ムラマサ】 はい…母上…
【テュルソス】 はぁ…
【グリダヴォル】 退屈そうだね、テュルソス 一人で随分と飲んでいるじゃないか
【グリダヴォル】 お酒以外に、君の興味を引くものは ないのかな?
【テュルソス】 …君が生者に関心を持つなんて 珍しいわね
【グリダヴォル】 おや、皮肉かい? だったら私も皮肉で返してあげよう
【グリダヴォル】 私は死に向かう危うい魂にも 関心があるんだよ
【テュルソス】 私が危ういっていうの? ふふふっ 面白いこと言うのね
【テュルソス】 退屈していたのは正解よ 全て順調に運びすぎるのも 考えものね
【テュルソス】 でも、頼まれたことはきっちり やり遂げる主義だから 安心して
【グリダヴォル】 なるほど… そういう返しになるわけだ 実に危ういね
【テュルソス】 君こそ、どうしたの? 今夜はやけに絡んでくるのね
【グリダヴォル】 死者にお節介を焼くのが好きなもの でね
【グリダヴォル】 死んだように生きている君に、 お節介を焼いているだけだよ
【テュルソス】 …死んだように、ね そうかもね~ 張り合いがないのよ
【グリダヴォル】 今回の三人も、 問題なく引き入れられると いうのかい?
【テュルソス】 間違いないわ 昼間、彼女達の奏官に会ってきた けれど、皆、想定通りだった
【テュルソス】 お医者さんは私の提案に乗り気で、 お坊さんは消極的 フードの子は流れに乗るつもりね
【テュルソス】 ムラマサを押さえることができたのは ラッキーだったわ とても良い交渉材料になったもの
【テュルソス】 お坊さんもムラマサのことを思えば 「ネオ・ラグナロク」に委ねた方が 良いと判断するわ
【テュルソス】 断る方が損な提案だもの 全て思い通りよ
【グリダヴォル】 …だから、退屈なのか 困ったものだね
【テュルソス】 いいの… 頼まれごとが終わったら、 また面白そうなものを探しに行くわ
【テュルソス】 ここにも長居するつもりはないから
【グリダヴォル】 そうかい 君の魂が、私の興味を引かなくなる ときが来るといいね
Next: 210702100