210702120 インテグラルノア編(擬彩されし不可逆世界編) 第7章 夢追い人―デザイア― 第2話 縁-12
【プタハ】 よしよし そなたは本当に良い子だな
【ムラマサ】 ああ…心地よい… 私はずっとこのままでいいんだ
【ムラマサ】 でも…何か大切なことを忘れてる 気がする… 何か…
【プタハ】 何も心配はいらぬ 母の腕の中で安心して眠るのだ 目を閉じ、三つ数えよ
【ムラマサ】 穏やかな声…この声を聞くたび、 私の中から迷いや不安が消えていく… 心地よい眠りに誘われる
【ムラマサ】 そうだ 私はこのままでいい もう…何も精進せずとも…
【ムラマサ】 …精進?
【ムラマサ】 せいっ! せいっ!
【エンクウ】 ムラマサ… 何をそんなに急いでおる
【ムラマサ】 主君…! 拙者は…拙者は姉様のように ならねばなりませぬ!
【ムラマサ】 早く主君のお役に立てるよう、 姉様を見習って、姉様のように 立派な武者となるのです!
【ムラマサ】 そのために、ただひたすら 精進あるのみ!
【エンクウ】 ムラマサ… そなたの刀は誰のものだ?
【ムラマサ】 拙者の刀ですか? それはもちろん、拙者のものです
【エンクウ】 では何故、姉マサムネの刀を振るう?
【ムラマサ】 えっ…? この刀は拙者の…
【エンクウ】 気づいておらぬか そなたはマサムネになろうとしておる だけだ
【エンクウ】 マサムネから学ぶこともあろう 真似ることで身につくこともある だが…
【エンクウ】 マサムネになろうとしてはならぬ そなたの刀はそなたのもの
【エンクウ】 そなたは、そなた自身にならねば ならぬのだ
【エンクウ】 そのために刀を振りなさい ただ、己自身と向き合うために
【ムラマサ】 拙者自身と向き合うため… よく分かりませぬ
【エンクウ】 はははっ そうか…構わぬ いずれ、通ずるときが来よう
【エンクウ】 いずれ、な…
【ムラマサ】 あ…ああっ… あああああ…!
【プタハ】 どうしたのだ、我が子よ? 苦しいのか?辛いのか? そんなときは目を閉じて――
【ムラマサ】 いいえ! いいえ!いいえ! それではならぬのですっ
【ムラマサ】 私は…いえ、拙者は このままではなりませぬ!
【プタハ】 何を申しておる… そなたはこのままで良いのだ 無理をして傷つかずとも…
【ムラマサ】 それでは、拙者は拙者になれぬのです
【ムラマサ】 辛いことがありました 苦しいこともありました たくさん傷ついてきました
【ムラマサ】 けれど、それを悔いたことは ありませぬ! 悔いがあろうはずもありませぬ!
【ムラマサ】 拙者は、拙者のために刀を振って きたのですからっ この傷は…痛みは…苦しみは…
【ムラマサ】 全て、拙者が拙者になるために… 精進してきた証
【ムラマサ】 これは拙者が選んだ道です! 目を閉じ、忘れてはならぬもの なのです!
【プタハ】 おおっ… ムラマサよ…我が子よ… この世は生き辛く、苦しみも多い…
【プタハ】 そのようなところに行かずとも 良いのだ ずっとここにいれば良い
【プタハ】 我がいつまでもそなたを守り、 慈しもうぞ
【ムラマサ】 感謝します、プタハ このご恩はいつか必ずお返しします
【ムラマサ】 ですが、拙者はもはやここに 留まるわけにはいきませぬ
【プタハ】 では、何処へ行くというのだ?
【ムラマサ】 無論のこと
【ムラマサ】 我が主君の下に!
【プタハ】 そうか… 覚悟は、できておるのだな
【ムラマサ】 はい! 拙者には守るべき御方がおります故
【プタハ】 ならば、引き止めるような真似はせぬ 見事、成し遂げてくるのだぞ 母はここから見守っておるからな
【ムラマサ】 かたじけない では、御免!
【ムラマサ】 主君の下に急がなくてはっ
【ムラマサ】 主君は何処にっ? ああ…もっと速く走ることが できれば良いのにっ
【???】 …………
【ムラマサ】 むっ…? 何者ですかっ?
【???】 力を…求めるのか…?
【ムラマサ】 この声…拙者の頭に直接語りかけて いるような… もしや!?
【ムラマサ】 幾度となく見る… あの不可解な夢に出てくる者か…!
【???】 力を欲するのなら… 解放するが良い…己自身を
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