241610721 インテグラルノア編サイド インテグラルノア サイドストーリー 壊逅アップグルント ストーリークエスト 壊逅アップグルント グレイプニル編 2 - 1話 壊逅アップグルント グレイプニル編-1 壊逅アップグルント グレイプニル編-1 戦闘前
そこはかつてと変わらぬ教会 外で起きたことなんて 何ひとつ関係ないかのように…
【グレイプニル】 …………
キル姫、グレイプニルは かつてのように祈りを捧げている
【グレイプニル】 ええ、ええ… またこうしてここにいられること、 そのすべてに感謝を――
その神への感謝の祈りは 自身に力を与えた存在への 明確な対象を持つものとなっていた
かつて信仰し、 祈りを捧げた神は 自分達のことを救いはしなかった
けれど、神と呼ばれる 絶対的な存在はこの世に在ったのだ
【グレイプニル】 今こうして 私が生きているということ それ自体があなた様との繋がり…
【グレイプニル】 この繋がりは絶対、 何者であろうとも 決して引き千切ることはできません…
【グレイプニル】 この身すべてをあなた様の為に…
祈りの中で ふと頭に浮かんだのは 人間だった頃の記憶
大戦が始まってからの教会は 絶望的状況としか言えない あまりにも悲惨な有り様だった
街にあふれた家や家族を失った 行き場のない人々は皆教会を頼った
だが、教会もまた多くを失い、 すべての人々を救うことはできず 恨みさえ買う始末だった
【子供】 おねえちゃん… ずっとおなかがいたいの…
何とか生き延びた教会の子供達も 満足に食事を得られず 空腹にあえいでいた
【???】 きっともうすぐ 食べ物を見つけた皆さんが 帰ってくるはずですから、ね?
【???】 あと少し… あと少しだけの辛抱ですから
生き延びた教会の大人達は 彼女に子供達を託し物資を探しに出た
そしてそのまま行方知れずとなった
【???】 あと少しだけ、ですから…
決して自分達を見捨てた訳ではない そう信じても、帰ってくる以外に それを証明する手立てもない
折れそうな彼女を支えるのは、 託された子供達を守らねばという 今にも崩壊してしまいそうな責任感
そして、信仰を失いかけた心でも それでも縋るしかない神への祈り
【???】 私には、 祈ることしかできないのでしょうか…
その日の夜のこと、 少女もかつての大人達のように 寝静まった子供達を置いて教会を出た
明日の朝、子供達に何か 食べさせる物を探さねば
だが、あてもなく歩く彼女の前には 生々しい戦禍の傷痕と誰しもが 空腹を理由に争う姿だった
【???】 もう、夜が明けてしまいますね… 子供達はいなくなった私のことを 探しているのでしょうか…
【???】 それとも、目覚めることも…
少女の脳裏によぎったのは 生の苦しみより、安らかな死――
【???】 あ…
【ミカエル】 ふむ、これは…
【???】 この光…それと、羽根…
【ミカエル】 我は神々に仕えし、大天使ミカエル
【???】 天の使い…
【ミカエル】 ええ、そうです そして神々はアナタに興味を示した
【ミカエル】 アナタに力を授けましょう アナタならば、きっと叶うはずです
【???】 私に、力を…ああでも子供達が!
【ミカエル】 子供達? アナタの守りたいもの、ですか?
【???】 はい、守りたいものです 教会の子供達は皆、家族ですから
【ミカエル】 教会、子供達…それで? 話を続けなさい
【???】 大天使ミカエル様… 子供達は今も飢えに苦しんでいます
【ミカエル】 …ふむ
【???】 守りたいけれど 飢えている子供にはパンを 与えなければいけないのです
【ミカエル】 …教会の子供達、とは アナタのような者が他にもいると?
【???】 はい、神の救いを待つ者が…
【ミカエル】 ――いいでしょう 教会のことは、子供達のことは 我々に任せなさい
【???】 !
【???】 ああ、今この時、この場所から 皆、救われるのですね…
次の瞬間、 少女の認識にあったのは痛みだった
痛みであるかどうかすら 定かではないほどに凄まじい 人の認識を遥かに上回る、感覚の凌辱
神器の力を 人の身に宿すということは 本来は到底赦される行為ではない
それがたとえ神が望んだこととて 人の身には余るほどの奇跡
それを望んだ者には 死という報いが相応しい
【ミカエル】 滞りなく成功すると思ったのですが…
当然、天使や神々には 勝算あっての行動だった
少女を選んだのは偶然などではなく 天使達は彼女の体内に秘めた マナの量に目を付けたのだ
一般人のそれを凌駕する少女は 神器と適合するはずだった
【ミカエル】 器になり得ると思ったのですが なるほど、対象の願いの強さも 成否に関わるということですね
【ミカエル】 まぁいいでしょう 彼女の言う教会の子供達… 次はそれを試してみましょう
【ミカエル】 この者の持つマナの 影響を受けているとすれば――
少女は失敗との烙印を押された だが、それで終わりではなかった
【???】 [ff0000]ああああああああああああああああ ああああああああああああああああ ああああああああああああああああ[-]
持ち前の膨大なマナ それは人の身であった頃ならば…
怪我の治りが少し早い 空腹もある程度であれば耐えられる その程度のモノだった
しかし、半端に神器の力を宿した今 その生命力は人の枠から外れていた
彼女はどんな苦しみの中にあっても 死ぬことも許されぬ身となった
その後、天使達は教会を利用し 器となり得る子供達を飼育した
その中で、成功例も排出した
【???】 [ff0000]…………[-]
【ミカエル】 素晴らしい まだその状態を維持していたとは
天使はギャラルホルンという 成功例を参考に少女の再利用を検討 そして実行に移すこととなった
【???】 私の祈りは届かなかったのでしょうか
【???】 子供達を救いたいという思いは 嘘だったのだというのでしょうか…
【???】 いいえ、そんなことはないはずです
【???】 でも――
少女の中にあったのは、懺悔
【???】 私はあの子達に 何もしてあげられなかった
【???】 パンひとつでお腹が膨れてしまう そんな小さな小さなお腹を 満たしてあげることもできなかった
【???】 私を信じていたあの子達に 苦しみしか与えられなかった…
【???】 そんなこと…あってはなりません!
神々に与えられた 地獄のような苦しみの中で 改めて少女は思う
【???】 あの子達を救いたい… 飢えた人々を救いたい… 争いを終わらせたい……っ!
【???】 この力を得て、 私が、皆を救いたい!
少女の祈りは いつしか願いに形を変えていた
【ミカエル】 結果として放置の意味がありました 彼女は強い願いを得ることができた
【ミカエル】 後はギャラルホルンのように 調整を行えば――
【グレイプニル】 …………
【神の使い】 グレイプニル、お告げがありました
【グレイプニル】 ――ああ、これは失礼しました 祈りを捧げていたもので…
【神の使い】 構いません ですが、アナタを創った神々の為 働いてもらいますよ
【グレイプニル】 はい、御心のままに
【グレイプニル】 なんとおいたわしい… 神々に歯向かうとは浅慮な…
神々の命を受け、 悪魔を葬り、人々を助ける
神々に災いをもたらすとされる獣を 縛った鎖の名を冠した少女…
彼女は神々と人々を繋ぐ鎖として 自身の役目を全うしていた――
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