250241103 雑賀 『一極八咫烏』
雑賀のアンドロイドの調子は 日を追う毎に 悪くなっていくようだった
雑賀は必死に修理を試みるのだが 補修部品が手元にないため 上手く行かないようだった
口調を聞かれるのが嫌なためか すっかり口数は減り 雑賀自身も落ち込んでいる
【雑賀】
…こんなはずやなかった…
マスターに、でんでん楽しんで
もらえへんやないか…
【雑賀】
なっとうすりゃええの…
やっぱ、いったん去んだほうが
ええんやろか…
オレンジ型アンドロイドを抱えて なにやら一人呟いている雑賀に かける言葉がないマスター
【雑賀】
ほんま…
こんなはずやなかった…
うち…どないしよ…
肩を落としてうずくまる雑賀 そんな彼女を見て マスターはあることを閃いた…
翌朝 相変わらず元気のない雑賀に 小箱を差し出したマスター
【雑賀】
…マスター？
これ、なんや…？
開けたらいいん…？
小箱の中には、果物のオレンジと竹串 それに葉っぱで作られた 小さな人形が入っていた
【雑賀】
こ、これ…アンドロイドの人形？
お、おまはんが…作りはったん？
う、うちの…ために？
【雑賀】
…ぷっ！
な、なにこれ…ぶ、ブサイクやわ
マスター、ぶ、不器用やね…！
【雑賀】
ぷ、プロペラなんか…
葉っぱがこんなヘロヘロで…
は、あはは…え？
【雑賀】
人形と一緒になにか…
こ、これ、メモ…？
メモには マスターの手書きで一言…
【雑賀】
げ、『元気出して』…
マスター…おまはん…！
雑賀は感極まった様子でメモと アンドロイド人形を見つめる
【雑賀】
マスター…うちは
ありのままでええの？
…うちの…そのままで…
【雑賀】
嬉しいわ…
うち、マスターの優しさに…
ドキドキしてまう…
【雑賀】
こんな優しいマスターやから
うちは、きっと…
自分の中のマスターの存在を 改めて認識する雑賀
その胸の高まりは 新スキル『一極八咫烏』を 目覚めさせる！
メモを裏返してなにかを書き込み それをマスターに見せる雑賀
【雑賀】
…これ…今のうちの気持ち…
こっちも…メモでお返しや
メモには『ありがとう』と 書かれている
雑賀の素直な気持ちに喜ぶマスター でも…もしかしてこれからずっと 筆談でやりとりするの？
【雑賀】
ぷっ、そんなわけあるかいな！
このアンドロイド人形もあるし…
もうええわ、素で喋るわ！
【雑賀】
非常時やからな…
もう…しゃあないわ
この人形があれば、いけるやろ…
やっと聞くことができた雑賀の声に マスターの顔は自然とほころぶ
【雑賀】
す、素で喋るうちがかわいい…？
アホ言わんといて…
【雑賀】
そんなん…
面と向かって言われたら
…恥ずかしいやんか
【雑賀】
でも…そんなこと
言ってくれるの
マスターだけや…
【雑賀】
…ありがと、マスター
おまはんは
ほんま、どてらい男やで…
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