310071202 アロンダイト・獣刻・ユニコーン 純潔たる騎士の刃
あの戦闘から数日後─
傷も癒えたアロンダイト しかし…
【ミストルティン】 これがトレイセーマに対する 私の…
【ミストルティン】 忠義の形なのです
彼女の言葉が 頭から離れない
そのせいで、 戦場でも役に立てずにいた
だからこそ アロンダイトは 彼女の下に向かっていた
【アロンダイト】 ミストルティンさん…
【ミストルティン】 …あら
【ミストルティン】 …………
【ミストルティン】 恨んでいるでしょうね? 私のこと
【アロンダイト】 …いいえ
【アロンダイト】 それよりも、聞きたいのです
【ミストルティン】 私に…なにを…?
【アロンダイト】 誰かを犠牲にしてでも トレイセーマに尽くそうとする、 あなたの忠義の強さの秘密を…
【ミストルティン】 …単純なことです どんなことをしてでも、 喜んでもらいたいから…
【ミストルティン】 あなたの忠義は… そうではないのですか?
【アロンダイト】 わ、私は…
【アロンダイト】 正直…揺らいでいます
【ミストルティン】 それは…なぜ?
【アロンダイト】 騎士として、主の命は絶対です ですが…
【アロンダイト】 いくらイミテーションとはいえ 同じ国の民のはずです
【アロンダイト】 それをあのように扱うのは 本当に平等なのでしょうか…?
【アロンダイト】 国としても民が減るというのは 問題になるのではないかと… 思ってしまって…
【アロンダイト】 迷いが生じる時があるのです… 私はなぜ…この国に尽くすのか…? その答えが…
【アロンダイト】 見えなくなってきていて…
【ミストルティン】 …………
しばしの沈黙の後、 ミストルティンが口を開いた
【ミストルティン】 私は…愛しています この国を
【アロンダイト】 …本当ですか?それは… 役に立たなければ捨てられるという 恐怖心からではありませんか…?
【ミストルティン】 昔はそうでした でも今は違います…
【ミストルティン】 勝利を捧げ続ければ、 称賛や褒賞をもらえると知りました… それはすなわち…愛…
【アロンダイト】 …愛?
【ミストルティン】 だから私は勝って、勝って、勝ち続けて… 愛をもらい続けるのです…! そうすれば私は…!
【ミストルティン】 生きていると実感できる…!
【ミストルティン】 だから私は… トレイセーマに勝利を 捧げ続けたいのです…!
【ミストルティン】 そのためなら個人の主義なんて 些細なことではないですか
【アロンダイト】 …………
ミストルティンの 狂気を孕んだ信念に対し、 なにも言えないでいた
そんな時だ―
【トレイセーマ兵】 こんなところにいたのか、 ミストルティン
【ミストルティン】 どうかなさいましたか?
【トレイセーマ兵】 新たな指令だ お前の活躍が素晴らしいのでな もっと、働いてもらうぞ
【ミストルティン】 ふふ、ふふふっ…
【ミストルティン】 もちろんです トレイセーマを…主様を脅かす敵は なにがあっても倒してみせます!
【トレイセーマ兵】 フンッ、期待しているぞ
二人はアロンダイトに一瞥も向けず、 そのまま森を離れていく
獣人に期待される ミストルティンの姿に アロンダイトは目を見開いた
【アロンダイト】 そう、です… こんなことも 分からなかったなんて…
【アロンダイト】 私が活躍すれば… 彼女のように重用される
【アロンダイト】 その上で、 イミテーションの有用性を説けば、 それこそ国のために繋がるはずです!
【アロンダイト】 それが、 私の騎士としての 忠義の示し方です!
目の前が一気に開けたような感覚に 思わずアロンダイトは剣を抜き放つ
【アロンダイト】 『純潔たる騎士の刃 -セイバー・オブ・ユニコーン-』!
それは、 彼女が真の力に目覚めた 瞬間だった
【アロンダイト】 早く、ミストルティンに 追いつかなければいけませんね
【アロンダイト】 そして、騎士として この国に仕えなければ
そう言って剣を構える アロンダイトの表情は 晴れやかだった
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