330051212 ルーン・獣刻・ヒュドラー 勝利よりも大切なこと
村にやって来たマスターの隊
【ルーン】 敵はどこだ~!?
と、一人張り切っているルーン
だが……
【ルーン】 …あん?
【ルーン】 おい、マスター まさか敵って…… あいつらか?
彼女が指さした先には、 街で暴れる山賊の一味が
【ルーン】 …んだよ~、 人間かよ~~~
【ルーン】 弱っち過ぎて、つまんねぇよ~
あからさまにガッカリする彼女
【ルーン】 はぁ… 後はみんなでなんとかしてくれよ
【ルーン】 私は帰るから
…と、 その場を後にしようとするルーン
そんな彼女をマスターが制止する 一緒に戦ってくれないかな?
【ルーン】 いやいや、私がいなくても 余裕で勝てるだろ
気のない返事をするルーン
しかしマスターは、彼女に
きみに勝つことよりも 大切なことを知って欲しいんだ と告げる
【ルーン】 勝つことよりも大切なこと? なんだよ、それ? 相手を痛めつけることか?
違うよ それじゃ君に教えてあげるよ とマスター
【ルーン】 へっ、いつになく強気じゃねぇか
【ルーン】 悪くない お前の口車に乗ってやるよ
そう言って、戦闘に出るルーン
【ルーン】 ほいっ
赤子の手をひねるが如く、 次々に山賊を倒していく
【ルーン】 大丈夫、殺しゃしねーって …ってか、こんな弱い奴ら、 止めを刺すまでもねーだろ
【ルーン】 ふわぁ…
【ルーン】 それにしても、ほんとに 勝つことよりも大切なことってのを 教えてくれんだろうな?
実に退屈そうな顔をしているルーン
そんなときだった
【ルーン】 うん…?
きゃあああああっ! ルーンは、逃げ惑う親子に 襲い掛かる山賊を見つける
【ルーン】 ほいっ
【ルーン】 一丁あがり
一瞬でその山賊を倒すルーン
【ルーン】 さて、次は…と
【ルーン】 はぁっ!? もう終わり!?
【ルーン】 弱過ぎだろ、こいつら!!
【ルーン】 おい、マスター! 約束が違うじゃねぇか!
【ルーン】 こんなんで 勝つことよりも、 大切なものなんか分かるわけ…!
彼女が怒鳴り掛けた、その時……
ありがとうございました!!
【ルーン】 …え?
【ルーン】 あんたは確か…さっきの…
ルーンが助けた親子の母親が、 涙を流しながら、 お礼を言ってきたのだ
大切な子供の命を守ってくれて、 本当にありがとう! あなたは息子の命の恩人です!!
泣きながら、深々と頭を下げる母親
【ルーン】 ……いや…別に… そんな大したことじゃ…
だが…
ありがとう!ありがとう!! と、村人全員から次々に声が上がる
【ルーン】 ………
【ルーン】 なんだよ…これ
彼らの心の底からのお礼に、 今までにない感情に包まれるルーン
そんな彼女に、マスターは告げる
今までの君は自分のためにしか、 自分の快感のためにしか 戦ってこなかった
でも…誰かのために戦うのも、 悪くはないでしょ?と
【ルーン】 ………
【ルーン】 これが…お前の言ってた、 勝つことよりも 大切なことってやつか…?
熱い感謝の眼差しで ルーンを見つめている村人達
【ルーン】 ……チッ
【ルーン】 確かにな… 悪くない
【ルーン】 悔しいけど、お前の言う通りだ なんか、こぉ… 胸の奥が熱くなってらぁ
村人からの感謝の気持ちに、 心を動かされた彼女
それは新たなる力 『蔓延す狂乱の毒霧』に 目覚めたきっかけでもあった
【ルーン】 チッ、わかったよ、マスター
【ルーン】 これからは自分のためだけじゃなく…
【ルーン】 誰かのためにも戦ってみるよ
ありがとう、お姉ちゃん! と、ルーンに助けられた男の子が 彼女に抱き着く
【ルーン】 …ッ!
その様子を微笑ましく見守る一同
だが、照れ屋のルーンは、 抱き着く男の子にこう告げる
【ルーン】 い、今のは別に、 お前を助けたわけじゃないっ…!
【ルーン】 目の前の敵が邪魔だったから、 屠(ほふ)っただけだ…! 自分のためだ、自分のためっ!
【ルーン】 だから、感謝しなくていいっ… やめろ…!
照れる彼女から離れない男の子
「自分のため」と早速、 前言撤回しているが…
そんな彼女を、 優しく見つめるマスターだった
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