330091212 青龍偃月刀・聖鎖・ザドキエル 高潔なる浄魂の慈悲
あれから数日が過ぎていた
【青龍偃月刀】 さあ、お勉強です、主君 人生、これ勉強
【青龍偃月刀】 私も貴方も、まだまだ 知識の果てに到達しては おりません
今日も、彼女に 勉強を教わるマスター
ようやく休憩時間になった時、 彼女に尋ねてみる あれから、みんなとは話してる?
【青龍偃月刀】 ……え?
【青龍偃月刀】 なぜ今、そんなことを…?
返すマスター ずっと僕についてくれてるから 申し訳なくて…
僕だけじゃなく、仲間との時間も 取って欲しいんだ…と
【青龍偃月刀】 …………
少しの沈黙の後、 彼女が口を開いた
【青龍偃月刀】 私は……
【青龍偃月刀】 『世界を救いたい』
【青龍偃月刀】 そんな貴方の とても大きな理念に共感し、 隊に入りました
【青龍偃月刀】 世界を救うには、 世界を正しい方向に導く 偉大な指導者が必要です
【青龍偃月刀】 私の役目は、主君が 偉大な世界の指導者になれるよう、 お世話をすること
【青龍偃月刀】 主君の覚悟に ついていくだけです
その言葉を聞いて、マスターは返す 僕は思ってないよ 偉大な世界の指導者になりたいなんて
【青龍偃月刀】 !!
【青龍偃月刀】 な、なにを……!
驚く彼女の言葉を遮り、 マスターが続ける
世界に平和が訪れたら… その後は色んな人が色んな考えで、 さらに世界を良くしてくれたら嬉しい
世界を指導していくなんて おこがましいし、僕の柄じゃないよ そう言って、ニカッと笑うマスター
【青龍偃月刀】 いけません… そんなことでは…!
反発する彼女に、 マスターは穏やかに言う
それに…僕の覚悟に付き合って、 君が嫌われ者になる 覚悟を持つのは申し訳ないしね…と
【青龍偃月刀】 …!
【青龍偃月刀】 ……気づいて…おられたのですか
マスターは言う 僕は世界を平和にしたいのに…
そのせいで誰かが 重荷を背負い込むなんて、 むしろ悲しいよ…と
【青龍偃月刀】 ………
【青龍偃月刀】 たとえ隊の中で嫌われようと…
【青龍偃月刀】 主君を立派な指導者に 育て上げることが、 私の役目だと信じていました
【青龍偃月刀】 でも主君は…そんな私に 向けてくださっていたのですね
【青龍偃月刀】 寛容な… “慈悲”の心を
【青龍偃月刀】 私は……
空を見上げる青龍偃月刀
【青龍偃月刀】 ………
彼女の心の中で、 なにかが変わり始めていた
次の日――
【青龍偃月刀】 これまでのご無礼… どうかお許しください
彼女は、姫達に頭を下げていた
急にどうしたの…? 驚く姫達
【青龍偃月刀】 当番制で主君の指導をしようと 申し出てくれたのに… むげに断ってしまって…
【青龍偃月刀】 皆… 私の負担を減らそうと 提案してくださったのに…
【青龍偃月刀】 礼儀を説いておきなら、 礼を失っているのは私の方でした
【青龍偃月刀】 心のどこかで、 主君の指導は自分にしか出来ない… そう思い上がっていたんです
【青龍偃月刀】 本当に…申し訳ありませんでした
深々と頭を下げる彼女
その素直な謝罪を姫達は受け入れた これからは、私達もマスターに 教えていくね!と
【青龍偃月刀】 ありがとうございます
【青龍偃月刀】 では…
【青龍偃月刀】 主君に正しく指導できるよう、 皆様の指導はこの私が 担当させて頂きますね
にこやかに宣言する彼女に対し、 えーっ!!と声を上げる姫達だった
その後――
青龍偃月刀は、 マスターと二人で語らっていた
【青龍偃月刀】 恥ずかしいです
【青龍偃月刀】 私が主君に教えていた礼節・礼儀は、 座学の上での知識に過ぎませんでした
【青龍偃月刀】 隊で孤立しないようにと…
【青龍偃月刀】 私を“慈悲”の目で 見守って下さっていた 主君の心こそ誠の“仁”の精神
【青龍偃月刀】 教えているつもりが… 主君に教わりました
【青龍偃月刀】 これからは… 私も心に“慈悲”の心を持って、 ことに当たります
【青龍偃月刀】 本当に…ありがとうございます
微笑む彼女
爽やかに晴れた空を見上げ、 彼女は思う
【青龍偃月刀】 これまで私が主君に向けていたのは、 “慈悲”や“慈善”の心でした
【青龍偃月刀】 でも今は…変化しつつあります
【青龍偃月刀】 この感情は… 一体なんなのでしょう…?
マスターに顔を向ける彼女
【青龍偃月刀】 その答えを見つけるため… これからもずっと 主君を見続けたいと思います
その笑顔は、 とても穏やかで温かだった
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