330313111 カシウス・獣刻・ウロボロス 無垢の証
とんとん…と 食材を切る包丁の音が 機械的に鳴っている
【カシウス】
…御館様の隊に入って
もう、しばらく経つ
【カシウス】
御館様には感謝している
…ううん、感謝だけじゃない
不思議な気持ちを、感じている
【カシウス】
でも…
【カシウス】
わたしはその感情に…
まだ、名前をつけられずにいる…
【村の男】 頼む！ この通りっ！ 一生のお願いなんだ！
【カシウス】
…………
突然のことに さすがのカシウスも 少々戸惑っているようだ
どうやら男は、 村の伝統技術を受け継ぐ 仕立て屋の人間らしく…
街で開かれるコンテストで優勝を 狙っていたが、今までモデルが 見つからなかったようだ
【村の男】 そんなわけで、頼む！ 美しい姫君よっ どうか僕のモデルになってくれぇ！
【カシウス】
姫…？
【村の男】 いやぁ あまりに綺麗だったもんで つい…
斬ル姫だとバレたわけではなく 本当に困っているみたいだね とマスターはカシウスにそっと伝える
【村の男】 タダでとは言わない！ 作った衣装をプレゼントしよう！ だから、どうかこのとおり！
【カシウス】
衣装…
それは、どんな衣装なの…？
【村の男】 どんなって… ジューンブライドの季節だろう！ ウエディングドレスだよ！
【カシウス】
ウェディングドレス？
それって…
【村の男】 そう、女の子なら一度は夢見る 誰かと一緒にいることを誓う儀式… そのための特別な衣装さ！
へぇ、カシウスの花嫁姿かぁ… 綺麗だろうなぁ… とマスターが呟く
【村の男】 何他人事のように言ってんだい！ あんたも新朗役として 出るんだよっ
ええ！僕も出るの？ とマスターが慌てる
【村の男】 もちろんだ、結婚式のコンテスト なんだから、新郎新婦が 揃ってなきゃ話にならないよ！
そう言うと男は さっさと支度を始めてしまう
【カシウス】
…結婚式
誰かと共にいることを、誓う儀式
【カシウス】
わたしの中の不思議な気持ちも
御館様と一緒にいることで
芽生えた…
【カシウス】
だとしたら…
この儀式で御館様への感情も
何かわかるかもしれない
【カシウス】
…………
カシウスは 自分の姿を眺めている
【カシウス】
純白の衣装…
無垢であることの証の白
【カシウス】
御館様、わたしにこの衣装は…
思いつめたような雰囲気で マスターへ話しかけるカシウス だがその時…
【ハルモニア兵】
待ちなさい、そこの方々
披露宴に参加される方ですか？
念のために検問を…
門の影から兵士が顔を出し マスター達を呼び止めた
【ハルモニア兵】
見ない顔ですね…
まさか！
貴様っ、斬ル姫か！？
コンテストに出たいだけで 騒ぎを起こすつもりはない とマスターは弁明するが…
【ハルモニア兵】
問答無用！
覚悟なさいっ
ハルモニア兵は剣を抜き 襲い掛かってきた
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