350021212 フライクーゲル・聖鎖・アズラエル 踏み出す勇気
森の奥深く─
【フライクーゲル】 ………
虚ろな顔を浮かべ、 一人佇むフライクーゲル
マスターは、そんな彼女に声を掛けた
【フライクーゲル】 !!
【フライクーゲル】 マママ…マスター!!
【フライクーゲル】 どどど…どうしたの? こんなところで?
【フライクーゲル】 あ、わかった! もしかしてバードウォッチング?
【フライクーゲル】 わたしもよくするんだよね~!
いつものように 明るく振る舞う彼女
しかし、マスターは…
【フライクーゲル】 …え?
無理しないで、 本当のきみを見せていいんだよ と、彼女に告げる
【フライクーゲル】 …!
【フライクーゲル】 マスター……
【フライクーゲル】 …わかってたんだ
なにがあったか、話してよ マスターの言葉に、 彼女がその口を開いた
【フライクーゲル】 …う…うん 実は…
【フライクーゲル】 これを見てたんだ
彼女の手には、大きな書物が
【フライクーゲル】 これは、世の全ての 生者の名を記した 『生者の名簿』
【フライクーゲル】 わたしはヨハンって 名付けてるけどね
彼女が手を離すと、 一人で宙を飛ぶ生者の名簿
【フライクーゲル】 そこから名前が消えた相手は わたしの倒すべき相手…
フライクーゲルは 名簿に目を落としながら呟く
【フライクーゲル】 不安なんだよ…
【フライクーゲル】 このヨハンから… マスターの名前が 消えるんじゃないか…
【フライクーゲル】 もし、そうなったら… その時はわたしがマスターの命を 狙わなきゃいけない…
【フライクーゲル】 わたしはもちろん、そうしたくない だけど…
【フライクーゲル】 その運命に… 抗えないかも知れない自分に…
【フライクーゲル】 不安でいっぱいなんだ…
いつも明るい彼女が、 初めて弱音を吐いた
そんな彼女に対し、 マスターは…
【フライクーゲル】 …え?
きみは強いし大丈夫、と そう告げる
【フライクーゲル】 強くても…わたしが わたしじゃなくなったら… マスターを守れないじゃん
【フライクーゲル】 見たでしょ…? 数日前の、戦闘中のわたしを
【フライクーゲル】 自分をうまく 制御できない時があるんだ
【フライクーゲル】 マスターの命令が… 聞こえなくなる時があるんだ…
そんな彼女にマスターは言う
きみが助けてくれなかったら 僕は死んでた 運命は変えられるんだよ…と
【フライクーゲル】 …マスター
【フライクーゲル】 違うよ…
なにが違うの…? そう問いかけるマスター
【フライクーゲル】 ヨハンから、 マスターの名前が消えてなかったから 助けられただけだよ…
彼女の影が晴れることはなかった
Next: 350021213