350241202 雑賀・D. plug・ハルファス 終わらぬ氷弾
【雑賀】 …くっ
【トレイセーマ兵】 ケイオスリオン帝国の 基地はどこにある?
【雑賀】 し…知らないっすねぇ
【トレイセーマ兵】 …ふん、強情な奴だ また来るからな
そう吐き捨て、 敵兵は牢から出て行った
【雑賀】 …ふぅ
度重なる尋問に耐えている彼女 その体は、 すっかり衰弱してしまっていた
【雑賀】 もう、あれから… 何日経ったっすかねぇ…?
彼女の懐から、 黒い鳥型ロボが 飛び立つ
捕まって以来、 彼女の話し相手は このロボが務めていた
【雑賀】 はぁ…うちも… ここまでっすかね…?
【雑賀】 斬ル姫として生まれた以上… いつかは死ぬとは思ってたっすけど…
【雑賀】 これは…想定外っす…
【雑賀】 まさか、うちが…
【雑賀】 彼女を助けるなんて…
【雑賀】 まったく… なにやってんだか…
そう言って、 彼女は意識を失ってしまった
次の日の朝─
【トレイセーマ兵】 起きろ
【雑賀】 …!
牢の前に立つ トレイセーマ兵達
【雑賀】 朝の尋問の時間っすか ご苦労様っす
【トレイセーマ兵】 ふん、減らず口を… 今日こそ話してもらうぞ
牢を開け、兵が彼女に迫る
【雑賀】 ま、これも…
【雑賀】 斬ル姫の宿命っすかね…
覚悟を決め、 目を閉じる雑賀
…と、その時!
【トレイセーマ兵】 ぐあぁっ!!
【雑賀】 !!
【雑賀】 なんで…
【ヤグルシ】 大丈夫!?
雑賀の前にいたのは、 味方の斬ル姫を引き連れ現れた ヤグルシだった
【ヤグルシ】 ごめんね、遅くなって!
【雑賀】 ど、どうして 戻ってきてくれたっすか…?
【雑賀】 ひどいこと言ったうちを… どうして助けてくれるっすか…?
【ヤグルシ】 あれ…わざとでしょ? ヤグを怒らせて逃がすためにさ
【雑賀】 …!
【ヤグルシ】 君は優秀な軍師だもん 不用意に人を怒らせる なんてしないはず
【ヤグルシ】 だから逃げてる途中、 あの態度にもなにか理由が あったんじゃないかって思ったの
【ヤグルシ】 怒らせたのは、 ヤグがいつでも逃げ出せるように
【ヤグルシ】 ヤグを連れてきたのも…
【雑賀】 透明になれる能力があるから
遮るように、 雑賀はヤグルシが言おうとした 一言を口にする
【雑賀】 まさか、助けられた上に、 全部見抜かれていたなんて 想定外っす
【雑賀】 でも、そのおかげで… 疑問が1つ解けたっす
【雑賀】 うちはなぜ、 あんたを助けたのか…? 自分の身も顧みずに…
【雑賀】 うちは確かに、 軍師としての才があるのかも知れない
【雑賀】 でも、兵がいなければ… “同志”がいなければ 作戦の成功はあり得ない
【雑賀】 優秀な将に、優秀な軍師、 優秀な兵がいてこそ… 隊は輝くっす!
“仲間意識”という感情が 彼女の中で芽生えた時、 新たなる力が覚醒した
【雑賀】 ボロボロだったはずなのに… なんか力が湧いてきたっす!
【雑賀】 いくっすよ!!
翼を広げるような動作とともに 銃を構える彼女
放たれた無数の銃弾が、 敵兵を残らず殲滅するのだった
【雑賀】 『終わらぬ氷弾 -グレイシャルピリオド-』っす!
【ヤグルシ】 す…すごい…!
【雑賀】 この力を引き出してくれたのは… あんたっす
【ヤグルシ】 え? ヤグ…?
【雑賀】 わかったっす うちは一人じゃなにもできない だから、これからも…
【雑賀】 みんなに支えてほしいっす
【ヤグルシ】 …!
微笑む彼女
雑賀の言葉にヤグルシ達もまた、 “仲間”という感覚に 目覚め始めていた
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