360251202 カリス・聖鎖・アザゼル 聖血の断罪
マスターとのやり取りから 数日後 二人は拠点から離れていた
【キプル】 あああ、カリス! 隊から離れすぎですっ… 勝手なことをしては―
【カリス】 なんとなくだけど、 大丈夫だって~!
【キプル】 すいません、マスター! カリスを止められなくて、 本当にすいません!
必死に止めようとするキプルだったが カリスの押しに負けてついていく
【カリス】 あそこって… 擬人区だったよね?
カリスが指差したのは、 ハルモニアのイミテーションが 暮らす地区―擬人区だった
【カリス】 なんとなくだけど、 あそこが気になる!
目的地以外なにも見えないように 走るカリスを追ってキプルも 擬人区に向かった
どこか寂れた雰囲気を感じさせる 擬人区 そこに足を踏み入れたカリス達
【イミテーションA】 う、ぅぅ…
【カリス】 大丈夫!?
彼女達が目にしたのは、 力なく倒れこむイミテーション達の 姿だった
【イミテーションA】 う、あ…
【イミテーションB】 う、ぐ…
【イミテーションC】 はぁ…っ、はあ…
【カリス】 すごい熱っ! それに汗も…
【イミテーションA】 お、お嬢さん…止めるんだ アンタにも感染ってしまう これは病だ…
【カリス】 任せてよ! それなら、わたしが治すから! いっくよぉぉっ!
杖を取り出し、魔力を流すカリス 放たれる淡い光が、 イミテーションに降り注ぐ
【イミテーションA】 アンタ…っ、斬ル姫か… いや、いい…
【イミテーションA】 助けてもらった、なら… 斬ル姫だとか、関係ない
【カリス】 よしっ! これでどうかな?
【イミテーションA】 ああ… 苦しかったのは、治まったよ ありがとう
【イミテーションB】 ぐっ… あなたは命の恩人だ
【カリス】 あははっ! カリスちゃんってばマジ天使! …なんてね
人々から感謝されたことに、 カリスは照れくさそうに 笑みを浮かべた
【キプル】 カリス 終わったなら早く戻りましょう 日が暮れてしまいますよ
【カリス】 そうだねっ 急がないと―
【??】 待ちなさい
【キプル】 しょえええ!? 見つかってしまいました!
【ハルモニア兵】 やはりあなたはカリス… 教皇様の加護を受けながら 逃げ出した背信者
【ハルモニア兵】 今、教皇様のもとに帰るというなら、 その罪も軽くなるでしょう こちらに来なさい
【カリス】 そんなの聞けないよっ!
【ハルモニア兵】 ふん…まあ、いいでしょう 教皇様に仇なす背信者は 粛清します
【ハルモニア兵】 ついでにそこの奴隷共も 排除しなければ…
【ハルモニア兵】 感染が我々、天使人にも 拡がる可能性がありますから
【カリス】 そんなっ! 病気はわたしが治したよ!?
【ハルモニア兵】 あなたのような背信者の言葉を 我々が信じるわけがないでしょう
それぞれの武器を構え、 一気に攻め込んでくる ハルモニア兵達
【イミテーションB】 ひっ、ひいぃぃっ!?
【カリス】 みんな、逃げてっ!
恐怖で動けない イミテーションたちの前に カリスは立った
ぐっと杖を握る しかし…
【カリス】 でも… 彼らも…人…
『人々を救う』 キラーズから伝わる記憶が カリスを縛る
【カリス】 きゃぁっ!
【ハルモニア兵】 どうしました? この程度ですか?
ただ耐えるだけで 攻撃しようとしない カリスをあざ笑う
【ハルモニア兵】 本気にならないなら 都合がいい そのまま粛清を受け入れなさい
無慈悲な刃が カリスを傷つけていく
【カリス】 うぅっ…!
【カリス】 イミテーションを守る… でも、傷つけたくない
カリスの中にあった矛盾が カリス自身を苦しめる
そんな時だった―
【イミテーションA】 ま、待て…これ以上 彼女に手出しは…させない
【イミテーションB】 そうだ…
【イミテーションC】 もう、指一本…触れさせない
【カリス】 みんな!? だ、ダメだよ!
カリスの前に イミテーション達が立っていた
【ハルモニア兵】 あなた達… 奴隷の分際で、 逆らうというのですか?
【イミテーションA】 恩を返さなければ、 それこそ奴隷以下に なってしまう
【ハルモニア兵】 その意気は買いましょう ですが無駄なことです
イミテーションの決意を 笑うかのように、 矢がカリスに向かい…
【キプル】 カリスッ! うぅ…っ!
【カリス】 キプルっ!? そんな、どうして…
カリスへの攻撃を防いだのは キプルだった
【キプル】 …カリスっ! ただ、人を救いたいと 思っているだけではダメなのです
【カリス】 キプル?
【キプル】 人を救いたいなら… 世界を救いたいなら…
【キプル】 自分が何者か、 なんのためにここにいるのか、 思い出してください
【カリス】 自分がなんなのか…
【カリス】 わたしは… わたしはっ…!
【カリス】 わたしは斬ル姫! 人を…世界を救う! ミラクルをわたしが起こすの!
戦う決意を固めたカリス その思いが更なる力を呼び覚ます
【カリス】 あぁぁぁぁぁっ!!!
巨大な魔法陣が上空に展開され、 そこから魔力の塊が降り注ぐ
【ハルモニア兵】 くっ! これほどの力を秘めているとはっ… 撤退します!
その威力に撤退を決意した ハルモニア兵達は、 逃げ出していく
【カリス】 はぁ…はぁ… よかった…
新たに目覚めた力 『聖血の断罪 -ルイン・ブレイカー-』 によって敵を撃退したカリス
疲れ果てた彼女の表情は どこか吹っ切れた笑みが 浮かんでいた
【キプル】 カリスゥ… マスターに怒られますよ?
【カリス】 うん 怒られちゃうかもしれないけど、 見捨てるなんてできないよ
カリスの視線の先には、 荷物を纏めたイミテーションの 集団がいた
国を離れることにした彼らのために カリスは護衛を申し出ていた
【キプル】 仕方ないですね… キプルも付き合います
【キプル】 カリスのなんとなくのせいで、 謝るのには慣れていますから
【カリス】 ふふふっ、 ありがとう、キプル
キプルを連れ、 カリスはどこか誇らしげに 笑みを浮かべていた
Next: 360251203