50272202 フライシュッツ 『零式・一途な想弾』
…バレンタイン当日
フライシュッツは 手作りのチョコレートを みんなと交換していた
【フライシュッツ】 みんなにあげれば 呪いは大丈夫…!
もちろんマスターにも チョコレートが贈られた
それも朝と昼の2回 つまり2個ももらっている
…おまけに
【フライシュッツ】 あとねあとね! 夜ごはん食べたら マスターくんに話があるの~
と、呼び出されてしまった
【フライシュッツ】 やっほー☆
両手を後ろに隠した 不自然な体勢でフライシュッツが 姿を現した
いかにも何かを隠している といった雰囲気だ
【フライシュッツ】 朝と昼に渡したチョコレートより ちょーっぴり派手だけど
【フライシュッツ】 何回も渡してるんだから これは“特別”じゃない。 大丈夫
うつむいていたフライシュッツは 顔を上げてマスターと 目を合わせた
【フライシュッツ】 …あっ!?
【フライシュッツ】 でも… 結局別のチョコだから “特別”なんじゃ…
どうかした?と マスターは困惑している フライシュッツの顔を覗き込む
【フライシュッツ】 えぇと、そのぉ…
フライシュッツは 手で咄嗟に顔を隠した
【フライシュッツ】 あーっ! チョコレートで隠しちゃった!!
それ、僕に?
【フライシュッツ】 ち、ちが…えと、あの…うぅ~
【フライシュッツ】 こ、これはぁ…その マスターくんのだけど…
【フライシュッツ】 マスターくんだけのため じゃなくて… え、えっと…
フライシュッツの顔は だんだんと俯いていく
大丈夫?
俯くフライシュッツを心配して マスターは声をかけた
【フライシュッツ】 だっ、だーいじょーぶっ!
笑って誤魔化していた フライシュッツだが 表情をキュッと引き締めた
【フライシュッツ】 大丈夫 これは“特別”じゃない… 今までと同じチョコレート
【フライシュッツ】 あの、あのね マスターくん…これ みっつめ、だけどね
チョコレートで顔を隠しながら フライシュッツは マスターへ一歩踏み出す…!
【フライシュッツ】 でも… “特別”だって思ってるんじゃ―
【フライシュッツ】 こ、これ…受け取ってくだ… あ~ん!やっぱりダメっ~!!
チョコレートを差し出したが マスターが手を伸ばしたところで
彼女はひょいっと それを取り上げてしまう
【フライシュッツ】 あっ!?
取り上げられたチョコレートは フライシュッツの手から抜け 勢いよく飛んで行ってしまう
【フライシュッツ】 結構遠くに飛んでっちゃ…
【フライシュッツ】 !!
チョコレートへ駆け寄ろうとした フライシュッツだが
何かに気づいたように ハッと顔を上げた
【フライシュッツ】 マスターくん!異族の気配!
あそこだ…!
【異族】 グギャッ
【フライシュッツ】 …マスターくんのチョコレート!!
突如現れた異族は 落ちていたチョコレートを 持ち去ろうとしている
【フライシュッツ】 やっぱり…呪いが… “特別”だって思っちゃったから…
異族を追いかけようとした 彼女の足が止まっている
行こう!
泣きそうな顔をしていた フライシュッツに マスターが手を差し伸べる
大切なものなら、取り返して 守り通さなきゃ
【フライシュッツ】 マスターくん…
マスターの言葉を フライシュッツは噛み締める
大丈夫、まだ間に合う!
【フライシュッツ】 うん!
【フライシュッツ】 …はぁっ、はぁっ
【フライシュッツ】 あと一歩なのに…
【フライシュッツ】 やっぱり諦めたほうが
構えていた銃を下げ 唇を噛み締める
【フライシュッツ】 …ううん、マスターくんは 「大丈夫、まだ間に合う」 って言った!
【フライシュッツ】 あたしの司る七元徳は 『信仰』
【フライシュッツ】 マスターくんの言葉を 信じてる!!
【フライシュッツ】 呪いなんかに負けないんだから!
フライシュッツは再び銃を構え 昂然と顎を上げた
自分の呪いから逃げるのではなく 立ち向かう
その思いが 新たな力を呼び覚ます
【フライシュッツ】 『零式・一途な想弾』
フライシュッツの真剣な思いで 生み出された弾丸は
見事チョコを持って逃げていた 異族を射抜いた
一息つく間もなく フライシュッツは チョコレートを拾い上げる
【フライシュッツ】 良かった… 箱もキレイなままね…
ギュッと箱ごとチョコレートを 抱き締めると
後を追ってきたマスターに くるりと向き直った
【フライシュッツ】 マスターくん
じわじわと顔が熱くなってきて やっぱり恥ずかしくて チョコレートで顔を隠してしまう
【フライシュッツ】 おねーちゃんからの チョコレートだよ…っ!
おずおずと差し出されたそれに マスターは躊躇いがちに 手を伸ばした
ありがとう なんだか今日は君から たくさんもらったね
【フライシュッツ】 たくさんは、いらなかった…?
ううん、嬉しいよ
マスターが微笑むと フライシュッツもつられて にっこり微笑んだ
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