50301203 ルーシャ 『アストラルライト』
ルーシャとマスターの 武器の素材探しはいつの間にか 日課のようになっていた
だが、以前と違うのは 姫達が同行していることと 試し斬りの工程が足されたこと
【ルーシャ】 おかしいな… どうしてみんなみたいに うまく使えないんだろう?
ルーシャは姫達の攻撃を観察し 自分の持つ武器との違いを 探っているようだった
姫達はルーシャの作り出す武器を なかなかの業物であると 褒めるのだが…
【ルーシャ】 やっぱり違うよ いい線行ってるのに いざ斬ってみると…
【ルーシャ】 あっ
【ルーシャ】 あー、そういうことか 原因はボク自身か…
何に気付いたのだろうか ルーシャは落ち込んだ様子を見せる
【ルーシャ】 性能を見るために 武器を使っているのに、 ボクの腕が性能を引き出せてないんだ
【ルーシャ】 まぁ、武器自体の性能が 上がってるってことは 間違いないかー
ルーシャは歯の奥に何かが 引っ掛かっているような表情を 浮かべつつ、自分を納得させる
マスター達が素材探しから戻ると 一緒だったルーシャの姿が ないことに気付く
…きっと、あそこに行ったのだろう 夕日の見える、あの場所に
【ルーシャ】 …自分の腕が足りなくて 悔やむなんて初めてだよ
マスターの気配を察知し ルーシャは背を向けたまま マスターへの言葉を投げる
【ルーシャ】 姫達はみんな自分の武器を 最高に使えるから… ボクにもできるって勘違いしちゃった
【ルーシャ】 みんなの武器が輝いて見えるのは 持っているのが最高の使い手だから それも理由のひとつだったんだね
そう話すルーシャの瞳に 哀しく輝くものが見える…
【ルーシャ】 ははは…ボクは結局 武器を作るだけで 武器を扱える器じゃなかったんだ
【ルーシャ】 それじゃ姫のみんなが持ってる 武器の輝きに届かないに決まってるよ
マスターはルーシャの悩みが 理解できなかった
いや、厳密には理解していた だからこそ、解せない
ルーシャにはルーシャの持つ 素敵な輝きがあるのだから マスターは彼女にそう告げる
【ルーシャ】 ボクの…輝き?
誰がどう言おうと ルーシャにはあの夕日のような 綺麗な輝きが宿っているはず
そうでなければ夕日のような 輝きを宿す武器を作ることなんて 夢のまた夢になってしまう
【ルーシャ】 でも、作った武器は みんなの武器みたいには…あっ!
言いかけて、ハッとするルーシャ そう、比べる必要なんてないのだ
【ルーシャ】 工房でずっと作ってるのと違って 考えこんじゃう癖がついたのかも
【ルーシャ】 何かと比べるんじゃない ボクはボクの憧れた光を信じて それを武器に込めればいいんだ!
自身の輝きを信じる そう思い直した途端に ルーシャの神経が研ぎ澄まされていく
それは新スキル 『アストラルライト』 をもたらした
【ルーシャ】 ふふっ、そっか ボクの武器だけじゃなくて ボクにも輝きはあるんだ
【ルーシャ】 ボクの輝き… ねぇ、もう一度言ってよ ボクに素敵な輝きがあるって
改めて言わされるのは 恥ずかしいものがある
【ルーシャ】 ねーえーマスター ほら、ねー?
その言葉も武器作りと同じく 制限を設けようか いや、武器作り以上に厳しくしよう
そう言うマスターに ルーシャはただ無邪気に 笑いかけていた
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