520191212 シユウ・D. plug・ベルゼブブ 満たされた心
その翌日――
【シユウ】 ふぅぅぅぅ…!
食べ物を摂らず、 鍛錬を積むシユウ
【イノシシ】 グロロロロ…
己の中の『大罪の獣』 暴食のイノシシを抑え、
その力を使いこなせるように なろうと必死だ
【シユウ】 …う…うぅぅ…
【シユウ】 うがぁぁぁぁぁっ!!
【イノシシ】 グロロロロッ!!
だが飢餓状態だと、 シユウもイノシシも力が暴走
【シユウ】 はぁ…はぁ…はぁ… だめだ…
【シユウ】 もっと… つよくなるんだ
力のコントロールは、 なかなか上手くいかなかった
それから数日…
【シユウ】 うぅ…
【イノシシ】 ………
飢餓は進み、 次第に弱っていく シユウと暴食のイノシシ
【シユウ】 …あ、マスター
そんな彼女の元に、 マスターが食べ物を持って やってきた
【シユウ】 ゴ…ゴクリ……
【シユウ】 ……だ、
【シユウ】 だめだ…! それをたべることはできない
【シユウ】 ちからをこんとろーる できるようになるまでは…
【シユウ】 もっとつよくなるまでは… シユウはたべちゃだめなんだ
【シユウ】 シユウのせいで、 なかまをきずつけてしまった…
【シユウ】 シユウのことを しんぱいしてくれた たいせつななかまを…
悔しさと情けなさで涙を流すシユウ
そんな彼女にマスターは告げる
【シユウ】 …え?やさしさ…?
そう、君の優しさは、 あの姫に届いている…と
【シユウ】 シユウは… やさしくなんか…
そんなにも責任を感じて、 君は強くなろうとしている それは優しさだよ
【シユウ】 …!
あの姫は、シユウが 元気でいられるように 食べ物を譲っていたのに
君が食べないで、 元気がなくなったら 意味がないよ、と
【シユウ】 …で…でも……
この食べ物も、 あの子が僕に託してくれたものだ と、マスター
【シユウ】 …!
あの子の優しさを… 受け止めてあげて欲しい マスターが彼女に頼む
【シユウ】 ………
マスターが持っている 食べ物を見つめるシユウ
【シユウ】 ……わかった
【シユウ】 シユウ…たべる
【シユウ】 たべて… つよくなる!
【シユウ】 たべものをわけてくれた、 あいつのやさしさ…
【シユウ】 しんぱいしてくれた マスターのやさしさをたべて…!
【シユウ】 もっとつよくなるんだ!!
彼女は、マスターが 手に持つ食べ物を手にした
【シユウ】 あっ! シユウのすきなマーラーカオだ!
喜ぶ彼女が、 口に運ぼうとした時……
【シユウ】 !?
そこに敵の大軍が出現した
【シユウ】 おい、いまは しょくじちゅうだぞ
だが有無も言わさず、 襲い来る敵の群れ
【シユウ】 むかしからいうだろ? ひとのしょくじをじゃまするやつは、 イノシシにけられてしんじまえって
間違った慣用句を したり顔で言いながら、 マーラーカオを口に入れる彼女
次の瞬間
【シユウ】 な、なんだ…!?
【シユウ】 このあたたかさ… なんか…
【シユウ】 おなかいっぱいだぞぉぉぉぉっ!!
【イノシシ】 グオオオオオオオオッ!!
暴食のイノシシに跨り、 敵を駆逐していく彼女
【シユウ】 ちからがみなぎるっ!!
【シユウ】 くらえっ!! 『暴食の猛進』―――ッ!!
巨大な力を見事に使いこなし、 敵の大軍を一掃するのだった
【シユウ】 へへっ! はらはちぶんめにも ならないやつらだな!
その後、 マーラーカオを食べながら、 シユウはマスターに言う
【シユウ】 なんだろうな、このかんじ? おなかいっぱいだし…
【シユウ】 むねもいっぱいってかんじだ
【シユウ】 マスターやあいつには やさしさをもらったからな
【シユウ】 シユウもあげるぞ
そう言って、マスターに マーラーカオを分けてくれる彼女
【シユウ】 これからはみんなにも わけてあげようとおもう
【シユウ】 そうか、マスター これが“あい”ってやつか?
【シユウ】 きめたっ! これからは、あいで みんなをおなかいっぱいにしてやる!
【シユウ】 それに、たべるのがまんするのも もうやめるぞ! みんなにしんぱいかけたくないからな
そう言って笑った笑顔は、 とても優しく温かかった
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