520253212 エルキュール・擬装・セイバー 祝宴に煌めく輝きの刃
【エルキュール】 はぁ…はぁ…
【エルキュール】 こ、ここは……
マスターが連れてきたのは、 街が見渡せる丘の上だった
【エルキュール】 わぁ……
【エルキュール】 きれい
壮大な景観を目の当たりにし、 沈んでいた彼女に笑顔が戻る
【エルキュール】 え?なんですか、マスター? 大聖堂…ですか?
街の中心地に位置する 大聖堂を指差しながら、 マスターは言う
街の人達は『創立祭』って 言ってるけど、あの大聖堂は 新しく建造されたものじゃない
これまで、何度も 戦争で崩壊しているんだ …と
【エルキュール】 …そうなんですね
でも人々の願いを受け、 その度に再建されているんだって
今回も、再建を記念しての 創立祭らしいよ マスターが彼女に微笑む
【エルキュール】 ……人々の…願いを受けて…
でもね…… と、マスターがある一ヶ所を指差す
【エルキュール】 鐘…ですか?
そう、大聖堂に吊るされた あの大きな鐘だけは……
幾度の戦火にも耐え抜き、 昔のままなんだ
業火に何度もさらされ、 煤と錆びだらけになって、 今じゃもう鳴らないらしいけどね
【エルキュール】 ………
大聖堂の鐘を見つめながら、 エルキュールは尋ねる
【エルキュール】 幾度も崩れ去り、幾度も焼かれ、 そんな辛い目に遭いながら…
【エルキュール】 どうして街の人達は、 あんなにも明るく 振る舞えるのでしょう……?
マスターは答える それは何十年、何百年もの間、 ずっと捨てていないからだよ
【エルキュール】 捨てていないって…… なにをですか?
エルキュールの瞳を見つめ、 マスターは尋ねる あの鐘の名前を知ってるかい?
【エルキュール】 ……いいえ
『希望の鐘』
【エルキュール】 …!
【エルキュール】 ……希望の…?
そう、希望 君が持つ『七元徳』と同じだね 微笑むマスター
【エルキュール】 ………
【エルキュール】 あの鐘は… もう何百年も鳴っていない
【エルキュール】 でも、あの人達は……
創立祭で盛り上がる人々を見ながら、 彼女は呟く
【エルキュール】 諦めや、自棄(やけ)で 騒いでいるんじゃない…
【エルキュール】 この地に住む人達は、 何代も前から決意しているのですね
【エルキュール】 絶対に…希望を捨てないんだ…と
【エルキュール】 この創立祭は… そんな人達の決意の証なんですね
【エルキュール】 何世代、何百年にも渡る 不撓不屈の精神
【エルキュール】 それに比べて私は… また挫けそうに…
【エルキュール】 キル姫よりも遥かに 力の劣る人間が折れず、諦めず、 何度も立ち上がっているのに…!
【エルキュール】 私は……!
歯噛みする彼女に、マスターは言う 君も…何度だって立ち上がればいい この街の人達のようにね
【エルキュール】 ……はい!
【エルキュール】 はぁっ!
返事をしたかと思うと、 突如、武器を取り出した エルキュール
【エルキュール】 何度倒れても…… 希望を捨てない!
【エルキュール】 そんな人々の強さが、 私に力を与えてくれました!
【エルキュール】 いけっ! 新技『祝宴に煌めく輝きの刃』!!
その強烈な閃光は、 大聖堂に向かって飛んで行き……
鐘に命中!!
頑固な錆や煤を消し去り……
ゴーン!ゴーン!ゴーン!
鐘は眩い輝きを放ちながら、 何百年ぶりにその荘厳な音を 街に鳴り響かせたのだった
す、すごい!! 目を丸くして、驚くマスター
【エルキュール】 ふふっ、マスターの言う通りですね
【エルキュール】 せっかくの創立祭…… 盛大に楽しみましょう!
その力強い笑顔を見て、 微笑むマスター
【エルキュール】 ありがとうございます、マスター
【エルキュール】 私はもう挫けません 絶望を乗り越えた先にある 希望の灯は…
【エルキュール】 ちょっとやそっとじゃ 消せませんよ?
グラスを傾ける彼女
二人は、 希望の鐘の音を聞きながら、 乾杯するのだった
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