530013212 ロンギヌス・擬彩 愛を知らぬ者
街の路地裏で、 少女と対峙するロンギヌス
【ロンギヌス】
私は…許しません……！
怒りを露わにしている
落ち着いて、一体なにがあったの？ マスターの問い掛けに、 口を開くロンギヌス
【ロンギヌス】
彼女は…
愛を冒涜したのです
どういうこと…？ マスターが彼女に尋ねる
【ロンギヌス】
私は…見てしまいました
【ロンギヌス】
教会でのお祈りの帰り道、
彼女が盗みを働こうとしている
ところを
だから、それを止めてたんだね？ そう言うマスターに ロンギヌスは首を横に振る
【ロンギヌス】
彼女に何か夢があって、愛があって
そのためにどうしても
生き続けなければならない…
【ロンギヌス】
そんな理由なら私は
彼女の窃盗を見逃した
…かもしれません
ふん 美味しそうだから盗んだのに このパン、全然美味しくないわ
彼女はそう吐き捨てると 先ほど投げ捨てたであろうパンを 踏みつける
【ロンギヌス】
…許せません
【ロンギヌス】
あなたが踏みつけた
そのパンには、焼いた人の
愛が込められていたはずです
【ロンギヌス】
そんなパンを
あなたは愛もなく
踏みにじりました
【ロンギヌス】
決して、
許されることではありません
怒りを込めた声で、 少女を睨みつけるロンギヌス
だが、マスターはそれを止め、 少女に、なぜこんなことをしたかを 優しく問いかけたのだった
【ロンギヌス】
…！
【ロンギヌス】
マスター、どうして…
愛を持たない者に、
そんな慈悲を……
【ロンギヌス】
彼女は…
新しい世界には、
ふさわしくないのに…
そんなロンギヌスの思いをよそに、 マスターの態度に何かを感じた 少女は、これまでの人生を語る
彼女は、両親から 暴力と育児放棄を受けた
それに耐えられず家を飛び出し、 一人で生き抜いてきた
何度も騙されることで、 人を信じることを忘れ、 生きるため日常的に犯罪に手を染める
それこそ、盗みなどは 罪の意識を 感じなくなるほどに…
少女の過去を聞いたロンギヌスは思う
【ロンギヌス】
そうだったんだ…
【ロンギヌス】
この子は…
愛を知らずに……
生きてきたんだ
【ロンギヌス】
だから、愛の素晴らしさを
分かってもらえなかったんだ…
【ロンギヌス】
あの…
少女の話を黙って聞いていた ロンギヌスが口を開いた
【ロンギヌス】
私も自分の境遇…
世界を背負うことを
呪っていた時期があります
【ロンギヌス】
それでも…
世界を信じて、
みんなを愛していたことで
【ロンギヌス】
素晴らしいことに
たくさん出会えました
【ロンギヌス】
あなたにも、
愛せるものが……
きっと見つかります
勇気を振り絞って、 声にするロンギヌス
そんな彼女を 優しい目で見るマスター
だが少女は… 愛せるもの？それってなに？ とロンギヌスに突き付ける
あたしは誰からも 必要とされてなかった！
誰もあたしのことを見てない それなら あたしだって誰のことも見ない！
わかったようなクチで 適当なこと言わないでよ この偽善者！
と、ロンギヌスを罵るのだった
【ロンギヌス】
………
言い返すことが出来ない ロンギヌスに背を向け、 立ち去ろうとする少女
――と、その時
【ロンギヌス】
…あ！
敵が現れ、 少女に襲い掛かろうとした
【ロンギヌス】
―――ッ！
…が、間一髪、 ロンギヌスが少女を 救い出した
な、なんで…？ ロンギヌスに尋ねる少女
【ロンギヌス】
あ、あなたが
愛せるものがなにか…
今はまだ、私には分かりません……
【ロンギヌス】
でも今は…
あなたを助けます
【ロンギヌス】
愛せるものを…
見つけて欲しいですから…！
少女に訴えかけ、 ロンギヌスは武器を手に 敵に向かっていくのだった
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