530331211 羽川 翼 常に裏を読まなくちゃ

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直江津高校からそう遠くない 大型書店――である

六月十二日、月曜日 その放課後

いよいよ今週末の金曜土曜にと 迫った文化祭の打ち合わせと 準備を終えた、

クラス委員長の羽川と、 副委員長の僕は、その帰り道、 一緒に本屋さんに寄った

【羽川】 まあ…… 大変だったね、阿良々木くん

【阿良々木】 ああ。蛇をあんな風に殺すなんて、 どっか儀式めいててさ、 考えさせられたぜ

【阿良々木】 場所が神社跡っていうのも、 なんかな

【阿良々木】 あ、ひょっとして羽川、 あそこに神社があったの、 知ってた？

【羽川】 うん 北白蛇神社よね

【阿良々木】 ……蛇、か てことは

【羽川】 そ、蛇神信仰って感じなのかな 私もそこまで 詳しいわけじゃないんだけれど

【阿良々木】 蛇神を信仰してた場所で、 蛇殺しか…… やっぱ、儀式めいてるな

【阿良々木】 一応、忍野に 報告しておいたほうが…… いいのかな

【羽川】 阿良々木くん

【羽川】 私が言っているのは、 そういうことじゃなくて

【羽川】 神原さんのこと、 大変だったねって

【羽川】 か・ん・ば・る・さ・ん・の・こ・と 大変だったねって、言ってるんだよ

【阿良々木】 神原のこと？ あ、ああ…… そうだな、

【阿良々木】 突然体調崩すからさ、 なんだったのかと思ったけど……

【阿良々木】 でも、大事なくてよかったよ

【羽川】 そういうことじゃ、なく

【羽川】 彼女の後輩と仲良し 過ぎるのって、問題ない？

【羽川】 ある程度仲良しなのは、 いいと思うんだけど 腕を組むのはまずいでしょ

【阿良々木】 しょうがねえだろ、 人懐っこい奴なんだよ

【羽川】 そんな言葉が 言い訳になると思う？

【阿良々木】 それは……

【阿良々木】 でもなー 僕、戦場ヶ原から、 言われてるんだよな

【阿良々木】 『私の後輩に無礼があったら 承知しないわよ』とか、なんとか

【阿良々木】 神原の方も、僕の世話に なるよう、言われているみたいだし

【羽川】 そうね こんな感じじゃない？

羽川は、そっと、 その両手を僕の頭に 伸ばしてきた

それぞれの手で、 左右から僕の頭を触り、 固定する

【羽川】 はい、どうぞ

【阿良々木】 え？　え？　え？

【羽川】 ……って感じかな

【羽川】 あと一秒って感じだった？ 阿良々木くん

【阿良々木】 い、いや…… 何言ってんだよ

【羽川】 阿良々木くんって、 弱くて薄いのよね

【阿良々木】 …………

【羽川】 阿良々木くんって 誰にでも優しいじゃない？

【羽川】 そういうのって、 戦場ヶ原さんから見たら、 結構不安だと思うのよね

【阿良々木】 ……不安って

【羽川】 戦場ヶ原さんとしては、 あんまり、

【羽川】 阿良々木くんに、神原さんと 仲良くして 欲しくないんじゃないかな？

【羽川】 違うか 仲良くしてもいいんだけど、 むしろ仲良くしてほしいんだけど、

【羽川】 けじめは ちゃんとつけて欲しいというか……

【羽川】 戦場ヶ原さんと神原さんと 較べた上で、ちゃんと自分を 選び取ってほしいって

【羽川】 感じなのかな

【阿良々木】 なんだそりゃ わけわかんねえぞ

【羽川】 戦場ヶ原さんも ジレンマじゃないのかな？

【羽川】 阿良々木くんは大事な彼氏だし、 神原さんは大事な後輩だし

【羽川】 まあ、戦場ヶ原さん、 ツンデレだから

【羽川】 その行動原理は、一辺倒で 理解しようとしちゃいけないと 思うよ

【羽川】 常に裏を読まなくちゃ

【羽川】 阿良々木くんも 戦場ヶ原さんが大事なら、

【羽川】 ちょっとした誘惑で 揺らいじゃ駄目だと思うな

【羽川】 誰にでも優しいって、 やっぱり、無責任だからね

【阿良々木】 ああ…… 身に染みてわかったよ

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