540172212 スイハ・擬装・セイバー 自分らしくある勇気
次の日の早朝――
【スイハ】 はぁ…はぁ…!
【ラグナロク】 ………
スイハは今日もラグナロクに、 剣の特訓を見てもらっている
【スイハ】 ど、どうかな…?
そう尋ねる彼女に、 逆に聞き返すラグナロク
【ラグナロク】 あなたの剣筋には 迷いがあるみたいだけど、 なにかあったの?
【スイハ】 …!
【スイハ】 そ、それは……
普段は口下手なスイハだが、 ラグナロクには素直に話せる
【スイハ】 私のキラーズである“スイハ”は、 弓ではなく…矢
【スイハ】 矢だけでは、 “スイハ”は武器として 機能しない…
【スイハ】 だから今までは、 私だけではその実力を 活かしきれないと思ってた…
【ラグナロク】 でも… 仲間を積極的に 支えたいという思い
【ラグナロク】 それに、どんな困難にも 諦めない不屈の精神が あなた自身に『勇気』をもたらした
【ラグナロク】 だから私は、 あなたに剣を操る イミテイトの力を与えたの
【スイハ】 ……うん
【スイハ】 ……だけど
【ラグナロク】 …?
【スイハ】 マスターは ああ言ってくれたけど…
【スイハ】 剣を握って戦っても… どうしても力が発揮できない
【スイハ】 ラグナロク… あなたのように上手く出来ないの
日頃のコミュニケーションと一緒で、 不器用な彼女は、 実は剣の扱いに苦労していた
【スイハ】 私は…どうすれば…
思い悩むスイハに、 ラグナロクは言う
【ラグナロク】 私の真似をするのではなく、 あなたなりの剣術を 模索した方がいいわ
【スイハ】 …私なりの
【ラグナロク】 見つけ出すの、自分の力で
そう言い残して、 ラグナロクは去って行った
【スイハ】 ……
彼女の背中を見つめ、 スイハは思う
【スイハ】 私なりの剣術って…… そんなの…
数日後――
【スイハ】 すこし…いいですか?
マスターは、隊の姫たちに 積極的に話しかけるスイハを目撃
【スイハ】 あ、あなたに聞きたいことが あるのですが…
彼女の急な変わりように驚く姫たち
【スイハ】 聞きたいっていうか… 教えて欲しいっていうか… なんていうか…その……
だが不器用さが手伝い、 コミュニケーションも ギクシャクしてしまっている
そんなスイハに、 珍しいね、急にどうしたの? と声を掛けるマスター
【スイハ】 …!
彼女はマスターに告白する
【スイハ】 自分なりのやり方を… 私らしいやり方を… 模索しようと……
本当はみんなともっと喋りたい、 関わりたいスイハ
ラグナロクに言われたことで、 隊の姫と関わろうとしていたのだ
【スイハ】 でも…
【スイハ】 やっぱり上手くできない…
【スイハ】 私らしいって…… どうすればいいか… 分かりません
彼女は思い悩んでいた
数日後――
【スイハ】 え?私と…?
マスターは彼女を誘い、 町の喫茶店に入る
【スイハ】 素敵なお店ですね (マスターと二人で… 二人で……!!)
ドキドキしている彼女には気づかず、 ケーキと紅茶を注文するマスター
【スイハ】 あ、私もそれを (本当は違うものがいいけど、 合わせとこ…)
…が、マスターは言う いつも注文するとき 誰かと一緒のものを頼んでるけど
君が本当に好きなものを 注文したほうがいいんじゃないかな と
【スイハ】 …!
【スイハ】 …え? (見透かされた…?)
【スイハ】 じゃ、じゃあ…
【スイハ】 この… 小豆を乗せて焼いたパンと、 抹茶を…
運ばれてきたパンを 口に運ぶ彼女
【スイハ】 お、美味しい!
笑顔になった彼女にマスターは言う
【スイハ】 え? 相手に合わせる必要はない…?
そう、君は自分なりに、 自分らしくいこうと思ったと 言ったけど、まだ相手に合わせている
もっとやりたいように、 わがままにやっていいんだよ、と
【スイハ】 わがままに…
【スイハ】 でも、そんなの… どうやれば… (嫌われちゃうかも知れないし…)
マスターは答える
好きなものは好きと言えばいい 今だって、好きな小豆のパンだから 美味しいって感じられたんだよ
それは戦闘でも同じじゃないかな?
得意なことを取り入れたらいい、 自分の持ち味を消す必要は ないんだよ、と
【スイハ】 !!
【スイハ】 私の…得意なこと
【スイハ】 …そうか
お茶を終え、 草原にやって来た スイハとマスター
【スイハ】 私の…得意なことは……
一閃!
剣を振る彼女
【スイハ】 私の得意なこと…!
【スイハ】 ずっと弓を持って戦ってきた! これより得意なものはない!
【スイハ】 だったら… それを剣技に取り入れる!!
作り出した、無数の剣と共に 相手を射抜き―― そして、斬る
彼女自身を矢と見立てるという 独自の戦闘方法
それはまさに 弓と剣の技術が合わさった 新たな剣術だった
すごい! 見つけられたね、君なりのやり方! スイハを褒めるマスター
【スイハ】 でも、それは…
【スイハ】 ラグナロクと、 マスターのおかげ
マスターの目を見据え、 彼女が言う
【スイハ】 あ、あなたが…
【スイハ】 ………
モジモジする彼女にマスターが、 どうしたの?と尋ねる
【スイハ】 な、悩んでいた私の背中を 優しく押してくれたから…
【スイハ】 だから…!
【スイハ】 ありがとうございます!! (ようやく言えた…! 私の気持ち、伝わったかな?)
真っすぐな目で マスターを見つめる彼女
礼儀正しく正座し、 恥ずかしそうにお礼を言う姿は、 クールビューティーとはかけ離れ、
まるで少女のように、 無垢でいじらしかった
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