540241212 ねも 終幕彩る風獣の流星
あれから数日後――
【ねも】 ……はぁ… 今日も緊張したぁ
戦闘から帰ってきたマスターの隊
ちょっといいかな? マスターは、ねもに声を掛ける
【ねも】 えっ!?わ、私…!? ななな、なに…?
マスターは、 ねもと2人で話をするため 草原にやってきた
【ねも】 あの…マスター
【ねも】 ごめんなさいっ!!
え?なにが? きょとんとした顔を 見せるマスター
【ねも】 え?だって、 怒るために 呼び出したんじゃないの?
【ねも】 私…戦うの怖がってるから もしかして怒ってるかなって
沈んだ表情を見せるねも
だが、マスターは そんなことないよ と、否定する
【ねも】 でも…
【ねも】 ねえ、マスター 私、ちゃんと マスターの力になれてるかな?
恐る恐る尋ねてくるねもに、 マスターは答える
今も、隊のみんなの力に なれてると思うけど…と
【ねも】 で、でも… 今日だって、 戦闘だと怖がっちゃうし…
じゃあ、みんなに 絵を描いてあげてよ? ねもにお願いするマスター
【ねも】 …!
絵、得意だよね? みんな、喜ぶと思うよ そう言って、マスターが微笑む
【ねも】 どうして、それを……
驚いた表情を見せるねも
それでもマスターに促され、 絵を描き始めるねも
【ねも】 でも、どうして絵を描けって 言ったんだろう?
周りには隊のキル姫たちの姿が
【ねも】 いつも仲良くしている子以外の 絵を描くのは初めて……
【ねも】 みんな見てる…… なんか緊張するな…
【ねも】 でも……
【ねも】 ちょっと嬉しい♪
さっきの戦闘を思い出しながら、 キル姫たちの絵を描くねも
すごーーーいっ! その上手さに、 姫たちから驚きの声が上がる
【ねも】 ……!
姫たちはみんな笑顔になっている
【ねも】 ………
その笑顔を見て、 ねもは驚いていた
そんな彼女に声を掛けるマスター よく描けてるよ、自信を持って
【ねも】 ………ありがと
【ねも】 でも…
【ねも】 絵が上手いだけじゃなくて、 戦闘でも力になりたい
この絵が、 いつか戦闘に役立つ時が来るよ そう語り掛けるマスター
【ねも】 ……え?
だが彼女には、 マスターの言葉の意味は 分からなかった
そして、次の日――
また戦闘が発生した
【ねも】 あわわわわ…
慌てつつも、 ゆっくり敵に狙いを定めるねも
【ねも】 うぅ…
けれど、敵の動きについていけず、 狙いが定まらない
【ねも】 うう、 こんなの、当てられる気がしないよ
――と、その時
今だ!! マスターが叫んだ
【ねも】 !!
【ねも】 やあっ…!
マスターの 掛け声に合わせて、 矢を放つねも
【ねも】 …!
【ねも】 あ、当たった……
そこ!右!! またもやマスターの指示が 飛んでくる
【ねも】 はいっ!!
次から次へと 敵を仕留めていく彼女
【ねも】 私に… こんなことが……
【ねも】 …!!
【ねも】 そ、そうか…!
ねもの脳裏に浮かんだのは、 マスターの言葉だった
『この絵が、いつか 戦闘に役立つ時が来るよ』
【ねも】 そういうことだったんだ…
次々に矢を当てていくねもを見て、 マスターは心の中で呟く
君は姫達のことを 絵にできるくらい、 しっかりと見てきた
その観察眼があるから、 姫達がなにをしようとしているか 分かる
それが分かるから、 彼女たちの動きに合わせて 連携ができるんだ
【ねも】 ありがとう、マスター! マスターの掛け声のおかげで私、 敵をやっつけられたよ!!
僕はきっかけを与えただけ やったのは…君自身の力なんだ マスターが、ねもに微笑みかける
【ねも】 私の…力?
前に出て敵を倒さなくても、 君にしか出来ない役割があるんだよ と、告げるマスター
【ねも】 私にしかできない役割……
【ねも】 そっか、前に出て 戦うことは苦手だけど…
【ねも】 後衛から、 みんなの援護射撃を することはできる
【ねも】 それが… 私にできることなんだね!
戦闘において初めて褒められた彼女
自信を身に着け、 次々に敵を倒していくのだった
それから――
【ねも】 あ、動いちゃダメ!
戦闘後、ねもは マスターの絵を描いていた
【ねも】 ありがとうね、マスター
【ねも】 戦いに消極的だった私を、 ずっと隊に置いてくれて… 見捨てずにいてくれて
マスターは言う 初めから君を信頼してたと
だって戦闘は苦手と言いながら、 みんなの戦いぶりを いつもしっかりと見ていたから
だから、強くなれると信じていたんだ
ま、絵が得意なことには驚いたけどね …と
【ねも】 ……えへ
【ねも】 えへへへへ
【ねも】 そんな…… 照れるでござる
ねもは、はにかんだ くしゃくしゃな顔で笑った
そして――
【ねも】 えいっ!
あれ以来、戦場には 勇ましく敵を倒すねもの姿が
【ねも】 やったぁ!
勝利した彼女は、 マスターに語り掛ける
【ねも】 ねぇ、マスター
【ねも】 戦う意味が 少し見えた気がする
【ねも】 私も、力になりたいって 思ったの
【ねも】 私を信じてくれるマスターのために!
その瞳には、 自信の光が強く宿り始めていた
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