550321212 ティファレト・誓約・ミカエル 楽園を目指して
数日後――
はああああ！ 戦場に姫達の勇ましい 叫び声がこだまする
【ティファレト】
主様！私の後ろに！！
【ティファレト】
早く！！
あれ以来、 マスターを守ろうとする姿勢が 一層強くなっているティファレト
【ティファレト】
させませんっ…！
【ティファレト】
はぁぁぁぁぁぁっ！！
神々しい力で、 マスターに降りかかりそうな 攻撃を全て退けている
そのお陰で、 危ない目に合わずに 指揮を執るマスター
【ティファレト】
はぁ…はぁ…
【ティファレト】
主様のことは…
なんとしてでも
お守りします…！
…だが、
【ティファレト】
…あっ！
彼女のその懸命さが、 逆に仇となった
【ティファレト】
し、しまっ…！
庇いすぎる余り、 マスターに死角が出来てしまい、 采配が一瞬遅れる
【ティファレト】
あぁっ…！！
その隙を突かれ、 一人の姫が 攻撃を受けてしまったのだ
【ティファレト】
い、今、助けに…！
すぐさま救出に向おうとする ティファレト
しかし…
【ティファレト】
そんなっ…
敵に行く手を阻まれ、 前に進むことが出来ない
【ティファレト】
くっ…！
ど、どうすれば……！
――と、その時！
【ティファレト】
あっ！！
敵の股下をくぐり抜け、 マスターが救出に向かったのだ
【ティファレト】
あ、主様！危険です！
お戻り下さい！！
だがマスターは 彼女の制止を聞かず、 負傷した姫の元に駆け寄る
【ティファレト】
主様ッ！！
う、後ろ……！！
敵の攻撃が マスターの頭上に 降り掛かった……
【ティファレト】
！！
…が、また別の姫が敵を倒し、 マスターも負傷した姫も事なきを得る
【ティファレト】
よ、良かった……
こうして、マスターの隊は なんとか勝利を収めるのだった
勝利に歓喜する姫達 だが……
【ティファレト】
………
戦場には、 あの日以上に暗い目を落とす ティファレトの姿があった
その後――
【ティファレト】
………
マスターは、 一人で佇むティファレトを 発見する
隣に腰掛けるマスター
【ティファレト】
主様……
【ティファレト】
………申し訳ありませんでした
【ティファレト】
またしても…
主様を守り切れませんでした…
【ティファレト】
それどころか…
私の至らぬ行動のせいで
仲間に怪我を…
【ティファレト】
彼女にも…
本当に申し訳ないことを…
悔しさと不甲斐なさに 表情が歪む
【ティファレト】
一つ…
お聞きしたいことが
あります…
【ティファレト】
あの時、主様は…
どうして命の危険も顧みず、
飛び出したのですか…？
【ティファレト】
どうして…そんな勇気が…
彼女が、 己の胸の内を語り始めた
【ティファレト】
私は昔…力がなく…
人に助けられてばかりいました
【ティファレト】
だから…ミカエルと契約した今、
『今度は私が人々を助けたい』
そう思うようになりました…
【ティファレト】
でも…最近、痛感しています
【ティファレト】
私の力は万能ではない
全てが思い描いた通りには
ならないのだと…
【ティファレト】
無礼を承知で申し上げます…
【ティファレト】
実は…主様も
かつての私と同じではないかと…
勝手に思っていました
【ティファレト】
姫達に比べ、
戦闘力では劣る主様も…
無力さを感じているのではないかと…
【ティファレト】
そんな主様を…どこか…
自分と重ね合わせていたのです
【ティファレト】
だから隊に入れて下さった時、
なにがなんでも主様を守ろうと
心に誓いました
【ティファレト】
しかし、主様は…
【ティファレト】
ただ守られるばかりではなく、
命の危険も顧みず、
自分自身でも戦おうと…
【ティファレト】
それは一体…
なぜなのですか？
【ティファレト】
教えて下さい
真剣な眼差しを向けてくる彼女
マスターは答える きみと一緒だよ、力はないけど… みんなを助けたいから
誰も助けられずに 自分だけ生き延びても、 きっと後悔する
だから、勝手かも知れないけど… 力はなくとも… 僕はみんなと一緒に戦いたいんだ
誰もが幸せに暮らせる素敵な未来… きみの言う…『楽園（エデン）』を 創るためにね…と
【ティファレト】
！！
その言葉にハッとする彼女
【ティファレト】
目から鱗が落ちた思いです
【ティファレト】
主様の言葉…
『勝手かも知れないけど…』
本当にそうかも知れませんね
【ティファレト】
誰かを守りたいという気持ちは…
時に押しつけであり、
自己満足なのかも知れません
【ティファレト】
主様のように…
運命に抗い、
自ら戦おうとする人もいる
【ティファレト】
『助ける』とは…
【ティファレト】
ただ守るだけでなく、
時にその人の背中を押してあげる
行為かも知れない
【ティファレト】
その人の心…精神を助ける…
そういう助け方も
あるのかも知れない…
【ティファレト】
私も、その昔…
守られるだけが嫌で、
自分なりの助け方を模索していた…
【ティファレト】
だから…
主様の言葉の意味が
分かったような気がします
なんだ、じゃあやっぱり 僕らは同じじゃないか、 とマスターが微笑む
【ティファレト】
ふふっ
そうかもしれません
…主様、ありがとうございます
【ティファレト】
なにかが…吹っ切れました
【ティファレト】
これからは、ただ
『守る』だけではなく
【ティファレト】
共に進む
【ティファレト】
そのようにさせて頂きます
【ティファレト】
主様や仲間と共に…
世界中の人々を守っていく
【ティファレト】
誰もが幸せに暮らせる素敵な未来…
『楽園（エデン）』を創るために
微笑む彼女
その目に、 もう物憂げな影は 落ちていなかった
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