550372212 ロジェスティラ・神令・スクルド 虚を導く祝福の挙式
【ロジェスティラ】
ま、魔獣が街の中にまで
入ってくるなんて…
び、びっくりしました
【ロジェスティラ】
でも、やりました！
お兄さま…
じゃなくて、マスターさん！
呼びやすいほうで呼んでいいのに と戦闘を終えたロジェスティラを 労いながら、マスターは伝える
【ロジェスティラ】
他の人の前だと
ちょっと、恥ずかしいです…
【ロジェスティラ】
あ、でもマスターさんは…
わたしのことをロジェと
呼んでくれると…嬉しいです
わかったよ、ロジェ と微笑むマスター
【ロジェスティラ】
はい、えへえへ
ありがとうございます
マスターさん
そう控えめに笑うロジェスティラ 彼女がそんな性格だとは露知らず、 街中の人々が集まってくる
「あの子が助けてくれたのか」 「ぜひお礼を！」と…
【ロジェスティラ】
え、えと、その、あわわ…
ま、マスターさん
急に集まってきたので 驚いてしまったのだろうか
マスターの後ろにそそくさと 隠れるロジェスティラ
大丈夫だよ とマスターが励ますが…
【ロジェスティラ】
わ、わたしはそんな
褒められるようなことは…
し、失礼します…っ！
待って、ロジェ！ とマスターは慌てて 彼女の後を追った…
【ロジェスティラ】
はぁ、はぁ…
ご、ごめんなさい
マスターさん…
彼女を追って、 マスターは街の外までやってきた
きっと自分に自信がないせいで 歓声に耐え切れなかったのだろう
ロジェが落ち着くまで傍にいるよ とマスターは声をかける
【ロジェスティラ】
お兄さま…
ありがとうございます
ロジェスティラがほっと一息ついた そのとき…
ビリッ！
【ロジェスティラ】
きゃあっ！？
ドレスが…っ
早くあっちの木陰に…っ！ とロジェスティラを誘導するマスター
【ロジェスティラ】
うぅ、ごめんなさい…
わたしの分は練習台なので
縫い目が甘かったみたいです…
【ロジェスティラ】
こ、これ以上迷惑は
かけられません…っ！
わたし、隊に帰ります！
待って！ と帰ろうとするロジェスティラを 引き留めるマスター
【ロジェスティラ】
きっとわたしなんかが
こんな衣装を着てしまったから
バチが当たったんです…
そんなことないよ みんなで一緒に楽しもうよ とマスターは励ます
【ロジェスティラ】
マスターさんは
そう言ってくれますけど…
【ロジェスティラ】
…って、きゃあ！？
今度はどうしたの！？ と慌てて尋ねるマスター
【ロジェスティラ】
マスターさん、あそこ…
ロジェスティラが示す方を 見れば、新しい魔獣の群れが こちらに向かってきていた
ロジェスティラ、行ける？ とマスターは尋ねる
【ロジェスティラ】
は、はいっ
服の修繕は済んでいます！
やりましょう、マスターさん！
【ロジェスティラ】
くっ、敵の数が多いし
凄い勢いです…っ！
がんばって、ロジェ！ とマスターは励ます
【ロジェスティラ】
ありがとうございます
マスターさん…
【ロジェスティラ】
…行きますっ！
やぁっ！
襲い掛かる魔獣の群れを前に 魔術を発動させるロジェスティラ
戦いのなか、 彼女は明かりの灯る街を背に 静かに呟く
【ロジェスティラ】
お兄さまに名前を呼ばれると
元気が出ます！
襲い掛かる魔獣の群れを前に ロジェスティラは微笑む
【ロジェスティラ】
魔獣を街に入れてはいけない
日陰の戦い…
【ロジェスティラ】
やっぱりわたしには、
こういう裏方のほうが
向いています…
【ロジェスティラ】
この衣装は、誰かに愛された
素敵な人達が着るべきです
わたしには、とても…
ロジェスティラの顔が曇る わずかに攻撃の手が緩んで、 魔獣が距離を詰めてくる
負けないで、ロジェ！ とマスターは声をかける
【ロジェスティラ】
っ！！
ロジェと呼ぶマスターの声に 虚ろだったロジェスティラの 意識が反応する
【ロジェスティラ】
お兄さま、わたし…
【ロジェスティラ】
どうしてでしょう…
ロジェって呼ばれると
前を向けるような気がします
それなら…とマスターは声を張って ロジェ！がんばれ、ロジェ！ と何度も彼女の名を呼んだ
【ロジェスティラ】
はわわっ、お兄さま…っ！？
そう何度も呼ばれると…
は、恥ずかしいので、のでっ…！
…ロジェ！！ それがキミの愛称じゃないか とマスターは伝える
【ロジェスティラ】
わたしの…あ、愛称？
みんなが呼ぶ「ロジェ」には 親愛が込められているんだ とマスターは必死に伝える
その衣装が愛されていなければ 似合わないというのなら、 キミだって似合うはずだ
思い出すんだ、ロジェ キミに向けられるみんなの笑顔を ドレスを着た時の幸せそうな顔を
みんな、キミのことが大好きなんだ とマスターは力強く励ました
【ロジェスティラ】
…っ！
みんなが…
マスターの言葉を受けて ロジェスティラの目に 輝きが宿る
仲間と過ごした幸せな日々が ロジェスティラの心を 明るく照らしていた
【ロジェスティラ】
…ありがとうございます
お兄さま
【ロジェスティラ】
わたし、いま思い出しました
みんなが呼んでくれる「ロジェ」に
込められた、思いを！
ロジェスティラは強い意思を持って 目の前の魔獣へと堂々と向き合う
【ロジェスティラ】
見ててください、お兄さま…
これがわたしの…
『虚を導く祝福の挙式』！
ロジェスティラは力いっぱいの 一撃を放ち、魔獣を打ち倒す
【ロジェスティラ】
ふぅ、お、終わりました
お兄さま…っ！
すごかったよ、ロジェ と褒めるマスター
【ロジェスティラ】
え、えへえへ
やりました、お兄さま
【ロジェスティラ】
…って、わ、なんだか人が
たくさんこっちに…
【ロジェスティラ】
さ、騒ぎになって
しまいましたか…？
みんな街を守ってくれたキミに お礼を言いたいんだよ とマスター
街の人の無事を確認してから みんなの待つ舞踏会に戻ろうか？ と続けるマスター
【ロジェスティラ】
は、はい…
そ、そうですね
わたしも花嫁姿ですから…
【ロジェスティラ】
みなさんの輪の中に入れるよう
がんばります…っ！
そう言って、ロジェスティラと ともに舞踏会に戻るマスター
【ロジェスティラ】
…………
そんなマスターの後ろを歩く ロジェスティラは、 マスターにこう尋ねるのだった…
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