560341213 八九寺 真宵 おめでとうございます
――寝不足ながらに自転車を 漕ぎつつ、学校へと向かう途中、 僕は八九寺を発見した
僕はとりあえず、 音を立てないよう細心の注意を 払いながら、自転車から降りる
スタンドを立てて、 道の端に停めた
よし じゃあ、そっと後ろから 近付いて……
【阿良々木】 はっちくじー!
【阿良々木】 久し振りじゃねえか、この!
【八九寺】 きゃーっ!?
【阿良々木】 はははは、 可愛いなあ、可愛いなあ!
【阿良々木】 もっと触らせろ もっと抱きつかせろ!
【阿良々木】 パンツ見ちゃうぞ、 このこのこのこの!
【八九寺】 きゃーっ! きゃーっ! ぎゃーっ!
【八九寺】 がうっ!
【阿良々木】 痛え! 何すんだこいつ!
【八九寺】 しゃーっ! ふしゃーっ!
【阿良々木】 だ、大丈夫、大丈夫 敵じゃないぞ
【八九寺】 しゃー! しゃー!
【阿良々木】 ほら、落ち着いて、 ゆっくりと呼吸して
【八九寺】 ふしゃーっ…… こーほー、 こーほー
【阿良々木】 ロボ超人みたいな 呼吸音だな
【阿良々木】 僕だ、僕だぞ よく見ろ
【八九寺】 ん……ああ…… むらら木さんじゃないですか
【阿良々木】 人のことを 欲求不満みたいな名前で呼ぶな
【八九寺】 失礼。噛みました
【阿良々木】 違う、わざとだ……
【八九寺】 噛みまみた
【阿良々木】 わざとじゃないっ!?
【八九寺】 神はいた
【阿良々木】 どんな奇跡体験をっ!?
【八九寺】 なるほど 受験勉強ですか……
【阿良々木】 学年一位と学年七位に 勉強を教えてもらえるからな はっきり言って無敵だぜ
【八九寺】 羽川さん……は、 この間、わたしもお会いした、 あの三つ編みの方ですよね
【阿良々木】 そうそう
【八九寺】 そして―― 戦場ヶ原さんの方が、 阿良々木さんの彼女さん
【阿良々木】 だ
【八九寺】 ふうむ
【阿良々木】 なんだよ それがどうかしたか?
【八九寺】 いや、普通、あの二人だったら、 羽川さんの方を選ぶんじゃないかと 思いまして
【八九寺】 どうして戦場ヶ原さんなのか、 ふと、不思議に思ってしまいました
【阿良々木】 どうしてって……
【阿良々木】 羽川は僕にとって そういう対象じゃないからな――
【阿良々木】 あいつは恩人なんだよ 羽川の方だって、 僕なんか願い下げだろうし
【阿良々木】 それに、 そもそも僕はあの性格を含めて、 戦場ヶ原のことが
【八九寺】 まあ、戦場ヶ原さんの方がいいと 阿良々木さんが仰るのでしたら、 それはそうなのでしょう
【八九寺】 人の好みは選別差別という話です
【阿良々木】 千差万別だろ!?
【八九寺】 ときに阿良々木さん
【八九寺】 あの女吸血鬼さん、
【八九寺】 えーっと、今は忍野忍さんと 仰るんでしたっけ
【阿良々木】 ん?ああ
【八九寺】 八歳児くらいで、金髪で、 ヘルメットにゴーグル…… でしたよね?
【阿良々木】 うん。それがどうした?
【八九寺】 直接お会いしたことがないので、 確実に断ずることはできませんが、
【八九寺】 昨日、その忍さんを、 お見かけしたのですが
【阿良々木】 え?
【八九寺】 夕方の五時ごろ、国道沿いの、 ドーナツ屋さんのそばに、 お一人でいました
【阿良々木】 ……ドーナツ屋ねえ けれど、あの忍野が果たして 忍に、単独行動を許すか……?
【八九寺】 ええ。わたしもそう思いまして
【八九寺】 ご報告しておいたほうがよいかと 思いまして、阿良々木さんを 待ち伏せしていたというわけなのです
【阿良々木】 あ、そうなの? それならそうと 最初に言えよ
【八九寺】 申し訳ありません
【八九寺】 どこかの、ロリコンが突然、 抱き着いてきたため、ショックで すっかり忘れていてしまっていました
【阿良々木】 やー、そっか わざわざ気を回して もらって、悪かったな
【八九寺】 阿良々木さんのお役に立てて 何よりです それより、お時間はよいのですか
【阿良々木】 あ、そうだ
【阿良々木】 じゃ、八九寺 またな
【八九寺】 はい またお会いできると 確信しております
Next: 560351211