60015201 蘇生アスクレピオス わかっているからこそ
ある日の夕暮れ時─
マスターは街の外れで、 一人で歩くアスクレピオスを 見かけた
【アスクレピオス】 ……………
なにやら元気がなさそうだ マスターは声を掛けてみることにした
【アスクレピオス】 キャッ!マ…マスター…!
いきなり驚かさないでよ!! いつもの調子で 怒られるかと思いきや…
【アスクレピオス】 …な、なにやってんのよ、 こんな所で…?
珍しく歯切れの悪い返し
君こそ、今なに隠したの? マスターが尋ねる
【アスクレピオス】 …!み、見てたの…?
声を掛けられた瞬間、 背中の後ろに隠した両手を 差し出しながら彼女がつぶやいた
【アスクレピオス】 実は……
彼女の両手には、 傷を負い息絶えた 一匹のヒナ鳥が…
【アスクレピオス】 巣から落ちて 野良猫に襲われたの、 この子…
【アスクレピオス】 野生の世界は弱肉強食 強い者しか生き残れない…
【アスクレピオス】 母鳥も… 弱い子供には構ってられない… 生きていくのに必死だから…
【アスクレピオス】 残酷なように見えて… それが自然の摂理だもんね… そんなのは分かってる…
【アスクレピオス】 でも…
ポタリ…
冷たくなったヒナ鳥の体に、 彼女の熱い涙がこぼれ落ちた
【アスクレピオス】 分かってはいるけど… でも、やっぱり…
【アスクレピオス】 かわいそう…
彼女の目から 涙がとめどなくこぼれる
【アスクレピオス】 命って… 一体、なんなんだろうね…
か細い声は、 大きな悲しみで震えていた
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