10272201 クラウ・ソラス 黒兎のハントチャレンジ
春─
街には、もうすぐ訪れる 『イースター』を祝う 卵やうさぎの飾り物が並んでいる
マスターの隊では、 カラドボルグとクラウ・ソラスが
パーティーの準備を 担当することになっていた
【クラウ・ソラス】 なかなか大きな会場だな この右腕が鳴るよ
真面目な性格の彼女は、 ものすごいスピードで 設営をこなしていく
やっぱり君は、 なんにでも一生懸命だね
と、彼女に声を掛けるマスター
【クラウ・ソラス】 …!
【クラウ・ソラス】 ………
しかし彼女は、 ぷいっとマスターを無視して、 準備に勤しむのだった
その態度に彼女が集中していると思い マスターは邪魔しないようにと 去っていった…
【クラウ・ソラス】 あ…危ない、危ない
【クラウ・ソラス】 マスターと話したら、 ついうっかり口を滑らせてしまうかも 知れないからな…
【クラウ・ソラス】 私が『エッグハント』の 特訓をしようと思っているってのは 秘密なのに…!
『エッグハント』とは、 隠された卵を探し出す イースター内でのイベントである
【クラウ・ソラス】 エッグハントで活躍して、 マスターと“奴”を 驚かせてやるんだ
それが彼女の目論見であった
数時間後─
【クラウ・ソラス】 ふぅ…大体こんなものかな
【クラウ・ソラス】 そろそろ特訓を開始しなければ、 パーティー本番に 間に合わないからな
会場の準備を一旦止めた彼女は、 広大な丘へと赴く
【クラウ・ソラス】 この辺りでいいかな
そして小さな石を拾い始める
十数個の小石を右手に握り込み、 静かに目を閉じる彼女
【クラウ・ソラス】 ………ふぅ
次の瞬間…
【クラウ・ソラス】 はぁっ!
目を閉じたまま、 石を遠くにぶん投げ、
落ちた音と同時に カッ!と目を見開き、 駆け出し小石を拾い集める
【クラウ・ソラス】 いかに早く見つけられるか… 速度と正確さが肝心だ!
しかし…
【クラウ・ソラス】 くっ… やはり難しいな…
イースターエッグのような 特別な物ではなく 単なる小石を探す
そのことに苦戦するクラウ・ソラス
生真面目な彼女は、 エッグハント対策として 何度もその特訓を繰り返していた
…と、そこに
【クラウ・ソラス】 …!
【クラウ・ソラス】 マ、マスター!
突然の訪問に驚く彼女
なにしてたの? と、尋ねるマスターに、
【クラウ・ソラス】 べ、別に… なにもしていない…!
【クラウ・ソラス】 会場の設営もほぼ終わったから、 休憩していたんだ…!
と誤魔化すも、 汗だくで息を切らしている彼女
準備の合間を縫って、 筋トレか剣の稽古でもしていたの? と、マスターは感心していた
【クラウ・ソラス】 あ、ああっ! そうなんだ! やはり日頃から特訓をな…
やっぱり、なにに対しても 一生懸命だね
と告げるマスター
【クラウ・ソラス】 …!
すると…
【クラウ・ソラス】 だ…だって、それは…
【クラウ・ソラス】 カラドボルグに負けたくないからな
彼女の口から、 少し意外な回答が返ってきた
そして心のうちを話し始める
【クラウ・ソラス】 私のキラーズである 炎の剣クラウ・ソラスは…
【クラウ・ソラス】 アルスター伝説の英雄が所有する カラドボルグの剣と 同一のものと言われている
【クラウ・ソラス】 だからやはり カラドボルグのことは気になるし、 意識もする
【クラウ・ソラス】 彼女には負けたくないという想いが、 不思議と沸き起こるんだ
【クラウ・ソラス】 でも彼女は私と違って 女らしいし、料理も上手いし、 何より自分に自信を持っている
【クラウ・ソラス】 彼女は… 私にないものを 全部持っているんだ…
そうつぶやき、俯くクラウ・ソラス
きみもカラドボルグが 持ってないもの、 持ってるじゃない
【クラウ・ソラス】 …え?それって…?
決してブレない、強い集中力だよ
【クラウ・ソラス】 …!
修行の邪魔をしてごめんね、と 謝るマスター
【クラウ・ソラス】 いや…参考になった 感謝する
じゃあ、引き続き パーティー会場の設営の方も、 よろしくね
と、マスターは去っていった
【クラウ・ソラス】 ………
【クラウ・ソラス】 …すまない、マスター
【クラウ・ソラス】 マスターに嘘をついてしまったが… それでもカラドボルグに勝ちたい
【クラウ・ソラス】 だが、マスターのおかげで 少し掴めた気がする…
マスターが去った方を見つめる彼女
【クラウ・ソラス】 カラドボルグに無くて、 私にあるもの…
【クラウ・ソラス】 ……強い集中力……か
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