10391212 セツナ 無之太刀
【セツナ】 自ら手当てするだけでなく、 キル姫達と離れた場所に来るなんて…
【セツナ】 無防備を通り越して愚かね 手負いだからって 私を侮っているなら…
そんなことはないよ と、セツナの言葉を 即座に否定するマスター
ただ、こっちの方が 話しやすいかと思って と、続けるマスター
【セツナ】 …ただそれだけで、ここへ? ここまで来ると愚かすら通り越すわね
【セツナ】 …ねぇ なぜそうまでして私に構うの?
ただ気になったから、じゃダメ? と逆に尋ねるマスター
【セツナ】 ただ…気になった? …本当にわからないわね
君から絶望や悲しみを 感じたんだ と、理由を語るマスター
【セツナ】 絶望や悲しみを感じた…? わかったようなことを言って…
【セツナ】 我らの意志になど 見向きもしなかった 自分勝手な者ども
【セツナ】 そんな奴らの愚かな 行いの果てに、私はある
【セツナ】 黒く渦巻く『嫉妬』を抱え、 すべての破壊を望む者として
【セツナ】 キル姫を使う 奏官という立場の君に、 この想いが理解できるとは思えない
確かにそれは…そうかも知れない と、頷きつつマスターは続ける
だけど、君の言葉を そのまま受け入れることもできない と、セツナを見つめるマスター
さっきの君は自分とキル姫達の その関係を見て怒っていたようだ と、推察するマスター
それは自分が見てきた 『使い・使われる』関係だと 思ったからでは?と続けるマスター
【セツナ】 …違うとでも?
絶対に違う と、マスターは力強く言う
【セツナ】 いったい何を根拠に そんなことが言えるの…?
【セツナ】 綺麗ごとではないという保証は? 私が信じるに足る証拠は?
【セツナ】 出せないでしょう? …口では何とでも言えるんだよ
一緒に来てくれたらきっと分かる マスターがそう 説得しようとした瞬間――
【魔獣】 グルルルルルル…
草木の影から魔獣が襲ってきた!
【セツナ】 ! こんな時に…っ!
【魔獣】 グァァアアアアッ!
あぶないっ!
セツナに襲い掛かる魔獣を見て 咄嗟に彼女を庇うマスター
【セツナ】 な…っ!?
【魔獣】 ガァアアッ!
【セツナ】 黙れ!
【魔獣】 グギャアアアッ
セツナに倒された魔獣に、 ホッとするやら情けないやら 複雑な気持ちのマスター
ごめん、 結局助けて貰っちゃった… と、力なく笑うマスター
【セツナ】 …馬鹿なの?
【セツナ】 あの程度の敵、 手負いであっても 倒せない私じゃない
【セツナ】 己で戦う手段も無い癖に 私を庇おうとするなんて…
【セツナ】 …羨ましいほどに命知らずだね
怪我は?傷口開いてない? と、セツナを気遣うマスター
【セツナ】 …この程度、問題ない
【セツナ】 そんなことより、 貴様の方が問題だよ
【セツナ】 マスターとして そんな戦い方をしていたら キル姫達も気が気じゃないでしょう
…うん、 だから守ってもらってばかりなんだ と、うつむくマスター
【セツナ】 …でしょうね
でも、だからこそ 自分はみんなの力になりたいと思う と、マスター
【セツナ】 …何を言ってるの 周囲に迷惑をかけるだけだと 思わないの?
【セツナ】 それで、貴様が―― 貴様を失った者達はどうなるの?
【セツナ】 自分勝手な思いが すべての不幸を生む 私達、幻影兵の…
【セツナ】 それと、貴様達で言えば キル姫達だって、不幸に…
…もう、気付いてるんじゃないかな とマスターはほほ笑む
【セツナ】 …何が?
自分がいなくなった時の 姫達のことを気にしてくれたから と、確信を持っていうマスター
【セツナ】 …………ああ、そういうこと
【セツナ】 使い、使われる関係だったら そんな発想も出ないものね…
【セツナ】 口だけは本当に上手ね
口だけじゃないよ と、マスター
自分達は信頼しあって支えあって、 それが自分達の力になると思ってる と、マスター
【セツナ】 …………
【セツナ】 その言葉… 貴様は本気だと言うんだね?
そうだよ と、頷くマスター
【セツナ】 …そう
【セツナ】 一緒に来てくれたら分かる… さっき、そう言ったね
【セツナ】 貴様の言葉 それが本物かどうか…
【セツナ】 確かめるためにも、 今はついていくことにするわ
【セツナ】 …怪我の手当てとか、 色々お世話になったのもあるしね
そう言ったセツナに宿る 『無之太刀』
それはマスターの想いが 少しでもセツナに届いた証だった
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