200031212 ギャラルホルン 終焉告げる滅風の角笛
【ギャラルホルン】 食べ物を買うなら、 あのお店はどうかな!
【ギャラルホルン】 とても美味しそうな 甘い香りがするから 絶対美味しいと思うの!
【ギャラルホルン】 あ、ギャラルが食べたいわけじゃ なくて…! お、おすすめしただけ!
洋服屋でギャラルホルンと 打ち解けたマスターは、
その後も和やかムードで 街を案内してもらっていた
【ギャラルホルン】 …ふぅ、少し疲れたね 結構、歩いたもんね 休憩しよっか
広場のベンチに座る2人
気がつけば、 もうすっかり 夕方になっていた
【ギャラルホルン】 ………
ついさっきまで明るかったが、 今は街行く人をぼ~っと 眺めているギャラルホルン
そんな彼女にマスターは尋ねる どうして、そんな寂しい目を しているの?
【ギャラルホルン】 ……え?
【ギャラルホルン】 そう?そんなことはないわ
…と、 また大人びた口調で 取り繕う彼女
【ギャラルホルン】 どうしてそう思ったの?
マスターは答える マスターとして 色んな姫と接していると、
そういうことには 敏感になってくるんだ …と
【ギャラルホルン】 ……ふぅん、そうなんだ
案内してもらったお礼… ってわけじゃないけど……
良かったら話を聞くよ? と、真剣な表情のマスター
【ギャラルホルン】 ………
徐々に落ちてゆく夕陽を見ながら、 彼女が口を開いた
【ギャラルホルン】 ギャラルはね……
【ギャラルホルン】 絶望
【ギャラルホルン】 世界の醜い部分
【ギャラルホルン】 今までずっと… そんなものばかり見てきた
【ギャラルホルン】 でも……
【ギャラルホルン】 そんな中にも 希望を見出したの それは……
【ギャラルホルン】 世界の『終焉』
終焉…? 聞き返すマスターに 彼女は答える
【ギャラルホルン】 そう…全てを終わらせること
【ギャラルホルン】 それが、この悲しい世界を救う 唯一の方法だと信じて生きてきたの
【ギャラルホルン】 でもね…ある時、示されたわ 『終焉』だけが 世界を救う道じゃないと
【ギャラルホルン】 だからギャラルは 終焉以外の救済…そんなもの、 あるはずないと思いつつも……
【ギャラルホルン】 人間達と 過ごしてみることにしたの
【ギャラルホルン】 そしたら……
【ギャラルホルン】 わからなくなっちゃった
【ギャラルホルン】 どうすれば世界を救えるのか
【ギャラルホルン】 さっき、 アナタを傷付けた 人達を見た時、
【ギャラルホルン】 やっぱり世界は 終わった方がいいと 思った
【ギャラルホルン】 でも、街行く幸せそうな 人達の顔を見ていると…
【ギャラルホルン】 終焉を求めることが 本当に正しいのか……
【ギャラルホルン】 わからなくなってくる…
【ギャラルホルン】 もし、終焉を求めることを やめてしまったら…
【ギャラルホルン】 そんなギャラルに 価値はあるのかしら…?
【ギャラルホルン】 そう考えたら、ギャラルの存在が 虚ろなものに思えてきて 寂しくなるの……
そう言って、 彼女は寂しげな目で 街行く人々を見つめるのだった
【ギャラルホルン】 ……って、 こんな話をしても、
【ギャラルホルン】 アナタには よくわからないわよね? 忘れてちょうだい
【ギャラルホルン】 今日はアナタと過ごせて 楽しかったわ
立ち上がり、 その場を去ろうとする彼女
君の価値は変わらないよ
【ギャラルホルン】 …!
マスターが、 彼女の背中に 言葉を投げ掛けた
【ギャラルホルン】 ……どういうこと?
立ち止まり、 聞き返すギャラルホルン
思うんだけど…世界なんか、 君が救わなくたっていいんだ、 と言い放つマスター
【ギャラルホルン】 …!
世界に終焉が 訪れることが正しいのか…
それとも他に救う道を 探すのが正しいのか… それは僕にもわからない
【ギャラルホルン】 ………
もしかしたら 正しいことなんて、 なにもないのかもしれない
だけど… その答えを 君が出す必要はない
君が世界を背負う必要はないんだよ と、真剣に語るマスター
【ギャラルホルン】 つまり… 世界のことを思うんじゃなくて、
【ギャラルホルン】 ギャラルが望むことに 目を向ければいい…ってこと?
マスターは答える そう、君が世界を滅ぼしたいと 思ったなら、滅ぼせばいいし…
救いたいと思えば救えばいい 自分の中で答えが出なかったら、 なにもしなくてもいい
世界なんて、 放っておいたっていいんだよ …と
【ギャラルホルン】 ………
微笑むマスターに、 彼女は言い放つ
【ギャラルホルン】 そんなのただ、 わがままなだけじゃない
だが、マスターは返す いいんじゃないの? わがままで
【ギャラルホルン】 …!?
僕は世界を守りたいって 思ってるけど…
それも誰かに頼まれたわけじゃないし 言っちゃえば、僕のわがままだからね …と
【ギャラルホルン】 …………
驚いた表情を見せる彼女 だが次の瞬間……
【ギャラルホルン】 ……ぷっ!
【ギャラルホルン】 あはははははははははっ!
【ギャラルホルン】 もう、なんなのよ、それ!? 今まで真剣に考えてたギャラルが 馬鹿みたいじゃない?
【ギャラルホルン】 でも……
【ギャラルホルン】 こんな人もいるんだ……
マスターを見つめる彼女
【ギャラルホルン】 ふふっ、初めてよ アナタみたいな人
その後――
街を案内してくれたお礼に、 マスターはテラス席のあるカフェに 彼女を連れてきていた
【ギャラルホルン】 なんだか…少し心が軽くなったわ
【ギャラルホルン】 あまり人と関わることは 得意ではなかったの
【ギャラルホルン】 ギャラルの思ってることなんて 誰にも伝わらないし、 話したら嫌な顔されるだろうから
【ギャラルホルン】 でもアナタは… ギャラルのこと、 否定しなかった
【ギャラルホルン】 そのままでいいって言ってくれた
マスターを見つめる彼女
【ギャラルホルン】 言ったことにウソはないよ でも、ギャラルね…
【ギャラルホルン】 誰かに必要とされたかったの
【ギャラルホルン】 だから今日、 悪い人達から助けたり、 街を案内したり…
【ギャラルホルン】 アナタの役に立てて、 嬉しかったんだよ
そう言って、笑顔を見せる彼女
――と、そこに 店員が注文を取りにやって来る
【ギャラルホルン】 あ、紅茶を…
彼女と対照的に クレープを注文するマスター
【ギャラルホルン】 ぷっ!
【ギャラルホルン】 普通、逆じゃない?
【ギャラルホルン】 ねぇ、 わがままでいいって 言ったよね?
【ギャラルホルン】 クレープ、もう一つ 追加でお願いします
無邪気に微笑んだ彼女は、 とても愛くるしかった
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