202210660 初心者クエスト 異聞不可分フォーハング 異聞不可分フォーハング 異聞不可分フォーハング 第2部 4 - 異聞不可分フォーハング-3 異聞不可分フォーハング 第2部-3 異聞不可分フォーハング 第2部-3
【ヒョウハ?】 はぁぁぁぁ!!!
【???】 せいっ!
【ヒョウハ】 …………
ヒョウハの目の前の舞台で 弓矢が飛び交う
それはあってなかった可能性 滑稽で幼稚な喧嘩のようなもの
【???】 そこです
【ヒョウハ?】 はっ、ならこっちもだ!
【ヒョウハ?】 白黒つけてやるよ!
だが、そのふたりの戦いは まるで遊戯のように 型のように
決まった動きを 壊れたように繰り返す
【ヒョウハ】 白黒なんてつく訳ないじゃんか
【ヒョウハ】 あたしとあいつは同格なんだ
【ヒョウハ】 でも…
【???】 あなたが白黒をつけるべきなのは、 私です
【???】 あなたが望むなら、 ここで戦っても構いません 白黒はっきりさせましょう
【ヒョウハ】 剣を持ってまで仲間の為に 戦おうとしたスイハ…
【ヒョウハ】 けど、この時は 戦おうとして言った訳じゃない?
【ヒョウハ?】 あんた、超爆・熱いな!
【ヒョウハ?】 ごめん… あたし、あんたが羨ましくて 本当は…憧れてたんだ
【ヒョウハ?】 あんたの強さ、よく知ってるんだよ 長いこと見てきたから でも、あんたは知らないだろ?
【ヒョウハ?】 あたしばっか意識して、 何か不公平だなって…
【ヒョウハ?】 勝手にライバル視してた だけなんだよ…
【ヒョウハ】 わかった気になって あいつの返答も聞かないで…
【ヒョウハ】 あいつはどんな気持ちでいたんだ?
【ミーミル】 スイハさん アナタが抱いている強い思いは…
【ミーミル】 「悩んでいる仲間の力に なれなかった後悔」だったんですね
【スイハ】 …な、何を言っているんですか!? 私はエルキュールと同じように “彼女”を取り戻すため――
【ミーミル】 いいえ アナタは「エルキュールの願いを 叶えたい」と強く願ったんです
【ミーミル】 たった一人 悪役になるつもりで
【ミーミル】 それが…
【スイハ】 やめて…止めて下さい…!
【ミーミル】 アナタなりの償いだったんですね
【ヒョウハ】 あぁくそっ! ミーミルはなんでわかってやれたんだ
【ヒョウハ】 白黒つけようなんて言って 向かい合って戦って…
【ヒョウハ】 一緒に働く同僚になったって あいつのこと全然わかんないのに!
わからない、考えられない 考えたことがなかったことが、わかる
【ヒョウハ】 あたしが何をしたって――
ヒョウハの感情が 大きく「揺らぐ」
その「揺らぎ」は 世界に辿り着く前に 舞台上の役者に伝播する
【???】 あ、れ?
「矢」が「ヒョウハ」に届く
【???】 あ、れ…? だって、今の武器は…
ヒョウハの前に立っていたのは 弓を構えたヒョウハの姿だった
【???】 違う、違う
受けた矢に差し伸べるその手 今にも崩れそうな膝
ヒョウハの視界に映った自らの手足 それはずっと遠くから見ていたから よく知っているスイハのものだった
【ヒョウハ?】 スイ、ハ…
【スイハ?】 白黒、つきましたね
これは選ばれなかった者が 選ばれた可能性――
【ヒョウハ】 待てよ…
そう、その可能性に… この舞台の脚本に異を唱えられるは たったひとりの観客のみ
【ヒョウハ】 あたし、何もしてないじゃんか
【ヒョウハ】 …「裏側」に来て、 ずっとスイハを追ってたのは おかしいとは思ってたけどさ
【ヒョウハ】 要はあたしが 「選ばれた可能性」 をずっと抱えてたって言いたいのか
【ヒョウハ】 ずっと、あたしが スイハみたいになってた 可能性を見せてたってのか!
ヒョウハは怒る
ヒョウハは憤る
【ヒョウハ】 大きなお世話だってんだよ!
【ヒョウハ】 だってそれ、全部あたしじゃねぇか!
複雑なことはよくわからない けれど、ひとつは確実だ
【ヒョウハ】 今ここにはあたししかいない スイハはここにいないんだ!
【ヒョウハ】 なら、それは可能性でも なんでもないじゃないか
【ヒョウハ】 あたしの勝手な妄想じゃないか!
ヒョウハは、そう解釈した だからこれは、そういう物語だ
【ヒョウハ】 畜生、そういうことかよ ここまで言われて気づくなんて…
【ヒョウハ】 あたしが何かしたんじゃない あたしはずっと何もしてなかった
【ヒョウハ】 その挙句、あたしの想像を 「裏側」のスイハ、いやあたしか?
【ヒョウハ】 なんにしたってあいつの形の幻に 押し付けてあたしは何を呑気に 観客気取りだなんてしてるんだ
【ヒョウハ】 あいつ、はっきり物言わないし 訳わかんないとこあるけど…
【ヒョウハ】 あいつにはあいつの物語があるし あいつの想いがある――
【ヒョウハ】 …ははっ、そこは「裏側」が 見せてくれたおかげで気付けたよ
【ヒョウハ】 ここまで見てきたのは スイハはこうだって勝手な妄想
【ヒョウハ】 でも、あいつにはあいつの 覚悟があったんだ それは本当のことのはずだ
【ヒョウハ】 あたしはそれが知りたい …本人の口から、ちゃんと!
舞台上から声がする
【???&???】 まだ決着はついてないよ?
【ヒョウハ】 はっ、白黒なんてつく訳ないだろ
【ヒョウハ】 それはあたしとあいつが 同格だからじゃない
【ヒョウハ】 上か下か、白か黒かじゃない あいつはあいつで あたしはあたしだからだ!
舞台上の役者が消えて行く いや、そこは初めから誰もいない舞台
【ヒョウハ】 あたしはずっと 自分が選ばれなかったことを 劣っていると思ってた…
【ヒョウハ】 それを飲み込んで、あたしだけの… あたしがあたしでいる意味を 見つけたと思っていた
【ヒョウハ】 あ、フォルカス達のこととか 見つけた大事なものは悪くないんだ
【ヒョウハ】 でも、それを見つけた自分は 劣っていないって思い込もうと していたのは大間違いだった
こんなお粗末な可能性を 引き付けてしまうほどにな とヒョウハは笑う
【ヒョウハ】 はぁ、あたしはとにかく あいつと向き合わないとな
【ヒョウハ】 そん時にまた「揺らぐ」なら もう一度ここに来ればいいさ
それは考えなしの行動か? 未来の「可能性」に期待を込めた ただの愚か者の行動か
【ヒョウハ】 考えなしな癖に臆病なだけだ
【ヒョウハ】 だから、力を貸してくれテュール! あたしに勇気をくれ…
【ヒョウハ】 いや、違う…違うな それじゃダメなんだ
【ヒョウハ】 いつもうじうじしてるあいつにも あんたの考えなしなとこを 思い出させるくらいの…
【ヒョウハ】 何を言われようともへこたれない 不屈の勇気ってヤツは 自分の中から絞り出すものだ!
答えの出ない心の問いに 答えを出さないという答えを ヒョウハは堂々と出した
テュールに頼らず、 自分自身の意思で
その考えなしの向こう見ずな意思は かの軍神をも黙らせ、 そして――従わせる
ヒョウハはもう、揺るがない
【マナナン&マクリル】 幕を閉じよう終わらせよう 裏と表、どちらがどちらでも 幕を閉じたらもう終わり
【マナナン】 裏は願いを叶えられない?
【マクリル】 表は願いを告げられない?
【マナナン&マクリル】 さぁさぁ始めよう 物語の続きはあなたの胸に
【マナナン&マクリル】 それではまた次の舞台で お会いしましょうごきげんよう
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