Phantom of the Kill

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視界は悪くない

ただ、すべてが真っ白で境目がない

肌を刺すような寒さにも慣れたのか

何も感じなくなった皮膚も、 自分の輪郭を失っていくようで 悪くない

6100711.png 【アロンダイト】 それで私自身が私という存在を 忘れてしまえれば一番なのですが

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6100711.png 【アロンダイト】 森…地図通りなら、森を抜けて 山頂を目印に進んで行けば 山を越えられるはず…

6100711.png 【アロンダイト】 雪もまた強くなりそうですし 早く抜けたほうがいいですね

「この時期に山越えする奴はいない」

支度の為に寄ったいくつかの店で 必ず言われた言葉が脳裏を過る

6100711.png 【アロンダイト】 …そのほうが、好都合です

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深く積もった雪の影響もあってか やけにしんとした森の中を 独り歩くアロンダイト

6100711.png 【アロンダイト】 …そう、私はもうずっと孤独でいい それで構わないのです

6100711.png 【アロンダイト】 なのに――

どこでどう過ごしても 他者との関わりができる

それが社会性というものであり 決して悪しきものではない

6100711.png 【アロンダイト】 他人の想い、温もりが 思い出させてしまうのです 私の奥底に眠る醜い感情を…

胸に生まれた温かさは やがて熱くすべてを焼き尽くして しまいそうなほどの醜い感情になる

6100711.png 【アロンダイト】 それが、かつての私が アロンダイトという私に刻んだ 新たな伝承、その絶望――

「暴走」

6100711.png 【アロンダイト】 暴走は何もかもを傷つけ、奪い去る 他人を容赦なく蹂躙する絶望…

すべてを終わらせる狂気 終焉に対する共振と狂信

6100711.png 【アロンダイト】 …………

かつての世界の記憶があろうと 今の自分は別なはずだと信じたものの

熱い熱い感情の炎に 飲み込まれそうになる自分がいる

6100711.png 【アロンダイト】 だから、行かねばならないのです

遠くへ、新たな場所へ 誰も知らない、次の地へ

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静まり返った森に アロンダイトの歩く音が響く

6100711.png 【アロンダイト】 もともと険しい山だと 聞いていましたけど…

6100711.png 【アロンダイト】 雪が降るとまた一段と…

それは山という自然を境に 人の交流が制限されているという ことにもなるのだが…

6100711.png 【アロンダイト】 おかしいですね、地図上では そこまで広い森じゃなかったはず…

6100711.png 【アロンダイト】 …………?

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6100711.png 【アロンダイト】 …………

アロンダイトの目の前には 先刻、念のために、 目印に傷を付けた木が佇む

つまりは1時間かけて 同じところを まわり続けたことになる

迷った、で済めばいいのだが ここは雪降り荒ぶ山の中にある森

6100711.png 【アロンダイト】 …遭難、というものですね

長時間の慣れない雪山道 いくらキル姫といえど体力の限界

膝をつきドサッと倒れるアロンダイト

6100711.png 【アロンダイト】 …ここまで、というのも 悪くないのかもしれませんね

抜けられないと理解した途端 全身の疲労感が無力感を伴い アロンダイトの心までへし折る

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夜も更け、視界はほぼ意味を為さない

6100711.png 【アロンダイト】 我が剣を自らに向けるのでなければ どうであれ不義ではありませんよね…

ただ静かに生を終えるのであれば 自身に刻まれた忠義という願いに 反することはないだろう

6100711.png 【アロンダイト】 …ふぅ――

深く息を吐き 目を閉じるアロンダイト

とうに限界を迎えていたのか 意識はすぐに遠のいていった

【???】 ――――!

6100711.png 【アロンダイト】 ああ、この感触は――

意識が途絶える間際 アロンダイトは懐かしい感触に 包まれていくのを感じたのだった

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6100711.png 【アロンダイト】 ――なんとか言ったらどうなんですか

【男】 腹が立ったからやっただけだ

とある街で警護の仕事に就いていた アロンダイトは不審者を見つけ捕縛 現在は取り調べを行っていた

6100711.png 【アロンダイト】 わざわざ路地裏に潜んで 家屋に火を放とうだなんて よほどの私怨でもあったのでしょう

【男】 あ? そんなんねぇよ!

6100711.png 【アロンダイト】 ならば何故…

【男】 気に食わなかったんだよ! あの家からけらけら笑い声が 聞こえて来やがってよ

【男】 だから、ははっ 台無しにしてやろうと思ってよ

6100711.png 【アロンダイト】 …見ず知らずの家族の団らんが 気に入らなかっただけだ、と?

【男】 おいおい 話聞いてなかったのかよ

【男】 それに、最初から腹が立っただけだ って言っただろ!

6100711.png 【アロンダイト】 …っ!

思わず机を強く叩き 男を黙らせるアロンダイト

【男】 な、なんだよ…

6100711.png 【アロンダイト】 …失礼、この者の取り調べ あとは他の者に頼めますか?

【キル姫】 は、はい…

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6100711.png 【アロンダイト】 …………ふーっ

深く息を吐くアロンダイト それは怒りを抑える以上に 動揺を抑える為のものだった

6100711.png 【アロンダイト】 あの者の聞くに値しない酷い理由… そういった感情があることは 理解したくなくとも知っています

6100711.png 【アロンダイト】 ですが、この怒りは…

怒り、憤るには十分な罪が相手だ その感情が非難されることはない

だが、アロンダイトが動揺したのは 自身の内側に滾る怒りの大きさだ

6100711.png 【アロンダイト】 怒りという感情そのものに 正義はありません

6100711.png 【アロンダイト】 悪しきものであると私は知っています

6100711.png 【アロンダイト】 過去何度か経験していますが また頻度が上がってきている…

6100711.png 【アロンダイト】 ここも、もう潮時ですね

6100711.png 【アロンダイト】 ああ、そこのあなた

6100711.png 【アロンダイト】 警備隊長に アロンダイトは辞職する とお伝えいただけますか?

その言葉を聞いて慌てる隊員に 諭すように言葉を続ける アロンダイト

6100711.png 【アロンダイト】 ええ、大変申し訳ないと思います しかし、急を要しますので…

6100711.png 【アロンダイト】 そう、あなた達も頑張って ここは良い場所ですから それでは…

101111.png 【エクスカリバー】 アロンダイト!

6100711.png 【アロンダイト】 …エクスカリバー 私は本日付けで――

101111.png 【エクスカリバー】 今の会話、たまたまですが 聞こえていました 突然どうしたのですか?

6100711.png 【アロンダイト】 一身上の都合というものです 迷惑を掛けますが――

101111.png 【エクスカリバー】 あなたらしくありませんよ そんな、急に辞めるだなんて 無責任なことを言い出すのは…

6100711.png 【アロンダイト】 私らしくない、ですか

101111.png 【エクスカリバー】 引っ掛かるところは そこじゃないと思いますけれど…

6100711.png 【アロンダイト】 …………

101111.png 【エクスカリバー】 何か言うことが?

6100711.png 【アロンダイト】 …いえ、たしかに急なことで その理由も言わないというのは あまりにも不義理というものですね

6100711.png 【アロンダイト】 私はかつての世界での記憶を… いえ、感情と呼ぶべきでしょうか

6100711.png 【アロンダイト】 そういったモノを思い出したのです

101111.png 【エクスカリバー】 ああ…以前の世界の記憶が蘇る 決して珍しいものではありませんね

6100711.png 【アロンダイト】 記憶の中での私は暴走を引き起こし 多くの人を傷つけてしまったのです

101111.png 【エクスカリバー】 暴走…

6100711.png 【アロンダイト】 はい、それに私の暴走は 世界のすべてを終わらせるという 終焉を望む最悪のものだったのです

6100711.png 【アロンダイト】 そして、その感覚は まだ私の中で燻っている状態…

6100711.png 【アロンダイト】 キル姫として力を使ったり 感情の揺れが原因で暴走を 起こしてしまいそうになるんです

6100711.png 【アロンダイト】 こんな状態ではとても ここにはいられません

101111.png 【エクスカリバー】 対処する方法はないのですか?

6100711.png 【アロンダイト】 住居を変えるなどして ひとりで頭を冷やすくらいしか…

6100711.png 【アロンダイト】 なので、急ではありますが この街を離れるつもりで 仕事を辞めさせていただきます

101111.png 【エクスカリバー】 …なるほど

101111.png 【エクスカリバー】 ある日、仕事を求めて現れたあなた 離れて行く日も突然かもしれない…

101111.png 【エクスカリバー】 そう思っていましたが それが今日だったということですね

6100711.png 【アロンダイト】 迷惑を掛けてしまうことについては 本当に申し訳なく思っています

101111.png 【エクスカリバー】 ええ、それは反省してください

101111.png 【エクスカリバー】 周りとコミュニケーションも取らず 単独行動ばかりのあなたが辞めても 日々の多くは変わらないでしょう

101111.png 【エクスカリバー】 ですが… 忙しくはなるでしょうね

6100711.png 【アロンダイト】 …………?

101111.png 【エクスカリバー】 単独行動のおかげで人一倍 周囲の状況を見極め被害を抑える 功労者がいなくなるのですから

101111.png 【エクスカリバー】 同じような警備体制を整えるには それ相応の仕事量が必要になります

101111.png 【エクスカリバー】 あなたが抱えている事の 重大さは理解できますが 私としてはぜひ残って――

6100711.png 【アロンダイト】 気のせいですよ

101111.png 【エクスカリバー】 …………

6100711.png 【アロンダイト】 この仕事は向いていなかったんです

101111.png 【エクスカリバー】 …そうですか

101111.png 【エクスカリバー】 では、ここから去るあなたに 一言だけよろしいでしょうか?

6100711.png 【アロンダイト】 それは…あなたの自由です

101111.png 【エクスカリバー】 アロンダイト、あなたの苦しみは 私には到底理解できないかもしれない

101111.png 【エクスカリバー】 ですが、わかることがひとつだけ

101111.png 【エクスカリバー】 その苦しみから解放されるには あなたがあなた自身の聖杯を 見つけなければならないということ

6100711.png 【アロンダイト】 聖杯…

101111.png 【エクスカリバー】 それが何であるかも 私にはわかりませんけれど

6100711.png 【アロンダイト】 …そうですね

6100711.png 【アロンダイト】 もう、いいですか エクスカリバー?

101111.png 【エクスカリバー】 …引き留めてしまってごめんなさい どうか、お気をつけて

6100711.png 【アロンダイト】 いえ、それでは

101111.png 【エクスカリバー】 …アロンダイト あなたの旅路に幸多からんことを

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