210010030 インテグラルノア編(擬彩されし不可逆世界編) プロローグ 第1話 反転する理想郷-3
【ラグナロク】 ハッ! 私…気を失っていたの…?
【フライシュッツ】 やった~! ラグナロクちゃんが目を覚ましたよ~ はぐだよ、はぐ~♪
【ラグナロク】 フライシュッツ… 私はどのくらい眠っていたの? 世界は…どうなってる?
【フライシュッツ】 まだ起き上がっちゃ、めっ!
【フライシュッツ】 みんなを呼んでくるから 待っててね~
【ラグナロク】 まったく、あの子は相変わらずね… もう心配することなんて…
【ラグナロク】 体に力が入らない… 何故?
【ミネルヴァ】 目が覚めたのですね、ラグナロク ひとまず安心しました…
【ラグナロク】 心配かけたわね 私はもう平気だから、状況を――
【ミネルヴァ】 いえ、あなたはまだ安静にしていて 下さい
【ラグナロク】 悠長なことは言っていられないわ 世界の危機なのよっ
【ミネルヴァ】 はい、だからこそです ラグナロク、体調に異変は?
【ラグナロク】 …もう、何ともないわ
【ミネルヴァ】 それは嘘ですね 隠さないで下さい
【ラグナロク】 …ごめんなさい 何だか体に力が入らないの
【ミネルヴァ】 やはり、そうですか… ラグナロク、あなたは先程現れた キル姫…アルマスと共鳴したようです
【ラグナロク】 私もそれを感じたわ バイブスとキラーズが適合した…
【ラグナロク】 あなた達七人以外だと初めてのことね でも、それでどうして?
【ミネルヴァ】 これは私の推測に過ぎないのです けれど…アルマスの力をあなたの バイブスが抑えているんです
【ラグナロク】 あのキル姫の力を?
【ラグナロク】 あのとき、彼女にバイブスが移った ように感じたのは…そういうこと なの?
【ミネルヴァ】 実は二人が気絶した後、 アルマスの姿が変化したんです
【ミネルヴァ】 ラグナロクのバイブスと共鳴した 影響で力が制御されたのではと 考えています
【ミネルヴァ】 そのことも含めて、拘束した彼女から 話を聞いてみたのですけれど、 あまり要領を得なくて…
【ラグナロク】 私が行くわ
【ミネルヴァ】 まだ安静にしていて下さいっ
【ラグナロク】 そうはいかない… 感じるの…新たな運命の歯車が 回り始めた感覚を
【ラグナロク】 世界の危機に直面して、 いつまでも休んでなんかいられない 私は決して歩みを止めないわ
【ミネルヴァ】 …わかりました では、肩をお貸しします
【ラグナロク】 ありがとう ともに進みましょう 世界のために
【グラーシーザ】 あーっはっはっは! そろそろかんねんしてすべて はくじょうするといいぞ
【グラーシーザ】 あたしにまかせておけば わるいようにはせん どうだ?
【アルマス】 だから言ってるでしょ! 私にだってよく分からないのよ! 何となく記憶はあるけど…
【ネス】 黙秘権を行使するというのであれば 規律に則って裁きの場を用意しな ければなりませんね
【ダモクレス】 ネスは固いな~ もっと容赦なくやればいいのに
【ダモクレス】 どんな拷問も愛さえあれば問題ない! どうせ、みんな最後は死ぬんだよ
【ネス】 そのような規律違反は許されません! …あと、ダモクレスはその格好を 改めて下さい!
【ダモクレス】 クレスはこの格好が落ち着くんだよ~ ネスは本当に固いな~ そんなところも愛してる!
【スイハ】 二人が言い合ってる… 止めた方が良いのかな… でも、迷惑だったら…
【フライシュッツ】 はい、ダモクレスちゃんも ネスちゃんも、はぐだよ~♪
【ダモクレス】 やったー♪ クレスもフライシュッツのこと 愛してる~っ
【ネス】 や…やめて下さいっ… 規律違反ですぅっ…
【グラーシーザ】 うむうむ、ちょうじょう なかよきことはいいことだ
【スイハ】 さっきから話が前に進まない… でも、私が口を挟んだりしたら 空気を悪くしてしまうかも…
【ミネルヴァ】 皆さん、何を騒いでいるんです? あれから何か話は聞き出せましたか?
【ラグナロク】 みんな帰ってきてたのね… 無事で良かった
【ダモクレス】 あ!ラグナロクだ! 元気になった?
【ラグナロク】 ええ、もう大丈夫よ それよりも…
【アルマス】 …………
【ラグナロク】 やっぱり姿が変わっている… 本当に、私が彼女の力を抑えている からなの?
【ラグナロク】 でも…バイブスは今、私ではなく 彼女の中に…
【グラーシーザ】 ラグナロク、 まだかおいろがよくないぞ やすんでいたほうがよかろう
【ラグナロク】 平気よ それより早く世界の崩壊を止めないと いけない
【ラグナロク】 アルマス、正直に答えて 世界の崩壊を止めるには どうすればいいの?
【ネス】 何度聞いても答えません 黙秘権を行使しているようです こうなったら裁判を――
【ミネルヴァ】 そういうことではないと思うの ですけれど…
【フライシュッツ】 アルマスちゃんっていったよね~? おねーちゃんに本当のこと話して 欲しいな~
【アルマス】 だから…ああ、もうっ…
【エルキュール】 皆さん、一旦落ち着きましょう
【ラグナロク】 エルキュール
【エルキュール】 ラグナロク、無事で安心しました …外の様子を見てきたんです
【ラグナロク】 どうなってる?
【エルキュール】 「虚空の穴」はそこかしこに広がり 続けています 地震も頻発していて…
【エルキュール】 外縁部では地面が崩落… いえ、落ちるのではなく崩れて 空に上がっていっているとか
【ラグナロク】 一刻を争う事態ね
【エルキュール】 安心して下さい 希望はあります 私が希望になってみせます!
【ラグナロク】 ありがとう、エルキュール あなたがいてくれて心強いわ
【ラグナロク】 ねえ、みんな 私をアルマスと二人きりにさせて
【ミネルヴァ】 何を言っているんです!? そんなこと認められません
【ミネルヴァ】 ラグナロク、ご自分の体のことも 考えて下さい
【ラグナロク】 分かってる それを承知で頼んでいるの
【ラグナロク】 そうしないといけないって… 私の中の何かが囁いてる
【ミネルヴァ】 そんな非論理的なことを…
【エルキュール】 分かりました! 皆さん、部屋から出ましょう
【ミネルヴァ】 エルキュール! あなたまで何てことをっ
【エルキュール】 ここはラグナロクを信じるべきだと 思います もし何かあったら…
【エルキュール】 私が真っ先に駆けつけますから!
【グラーシーザ】 うむ しんらいはたいせつだな それにこのままではらちがあかん
【ダモクレス】 クレスも賛成ー! 何かあったら、 そのときはそのときだよ
【スイハ】 皆さんが賛成なら…私も…
【ネス】 規律に違反しないというのであれば、 私も従います
【フライシュッツ】 ラグナロクちゃん 無理しないでね~
【フライシュッツ】 危なくなったら すぐにおねーちゃんを 呼んでね~
【ミネルヴァ】 …仕方ありませんね 扉の前で待機していますから
【ラグナロク】 ありがとう
【ミネルヴァ】 お礼を言われることではありませんっ それでは皆さん、いきましょう
【アルマス】 …………
【ラグナロク】 …………
【アルマス】 …私から何か聞き出そうとしても 無駄よ
【ラグナロク】 あのときのことは、覚えてる?
【アルマス】 …覚えてるわ でも、あれは何だったの? 私の中にあるこれは、何…?
【ラグナロク】 それはバイブス… 本来、マスターにしか宿らない はずのものよ
【ラグナロク】 バイブスは適合したキラーズと 共鳴して、その力を制御する
【ラグナロク】 私は特殊らしくて、 キル姫でありながら バイブスも有していた
【ラグナロク】 そのバイブスが…あなたに移った ようなの
【アルマス】 はぁ… 説明されてもよく分からない… それに…
【アルマス】 “私達は繋がっている”わよね? これもバイブスの力なの?
【ラグナロク】 それは私にも分からない… 今までこんなことは一度もなかったわ
【アルマス】 そう… 参ったわね
【ラグナロク】 別のことを聞いてもいい?
【アルマス】 …どうぞ
【ラグナロク】 気絶する前の記憶はないの?
【アルマス】 ないわけじゃない…と思う… 上から…あの反転した木から降りて きたことは覚えてる
【アルマス】 私が“インテグラルキラーズ”の一人 だと名乗ったことも
【アルマス】 でも…何でそんなことをしたのか… それが分からない…思い出せないの…
【ラグナロク】 “インテグラルキラーズ”が世界を 壊して反転世界に新たな世界を 創ろうとしているのは事実なのね?
【アルマス】 それは間違いないわ… 私はそれを遂行すべきだと信じて いた…
【アルマス】 今となっては、何故、そう信じて いたのか分からないけれど…
【ラグナロク】 あなたは“インテグラルキラーズ”の 一人だと名乗ったわよね ということは…
【ラグナロク】 他にもいるのね?
【アルマス】 いるわ 何人いるのか正確には覚えていない けど、彼女達が計画を遂行してる
【ラグナロク】 アルマスの力を抑えても世界の崩壊が 止まっていないのは、そういうことね
【ラグナロク】 “インテグラルキラーズ”は 他に誰がいるか覚えてる?
【アルマス】 そうね… 覚えているのは…
【アルマス】 私がこっちに来る前、話した相手… そう!そうよ!
【ラグナロク】 覚えてるのね 誰?どんなキル姫なの!?
【アルマス】 桃色の…長い髪をした… 背は私とそんなに変わらない… あと、剣を持っていたわね…名前は…
【ラグナロク】 …まさか
【アルマス】 ティルフィング! そう、ティルフィングって言ってた
【ラグナロク】 そんなはずない! だって彼女は――
【ラグナロク】 何、今の揺れは!?
【ミネルヴァ】 ラグナロク、大変です!
【ラグナロク】 何が起きたの!?
【ミネルヴァ】 新たなキル姫の襲撃です エルキュール達が応戦に出ました
【ラグナロク】 私も行くわ
【ミネルヴァ】 いえ、ラグナロクはここで――
【アルマス】 私も行く! 何だか…胸騒ぎがするのよ
【ミネルヴァ】 本気で仰ってますか? あなたは囚われの身ですよ! 勝手な真似は――
【ラグナロク】 ミネルヴァ、お願い 私も胸がざわつくの… 運命が…加速し始めたっ
【ミネルヴァ】 そんな…無茶です!
【ラグナロク】 無茶でも今は動かないといけない アルマスは私が監視するからっ
【アルマス】 来る…この感じ… きっと彼女よ…!
【ラグナロク】 アルマス、ついてきなさい!
【ミネルヴァ】 ラグナロク! はぁ~… どうしようもないのですね…
【アルマス】 ラグナロク、一つ言い忘れていた ことがあるんだけどっ
【ラグナロク】 何? 手短にお願い
【アルマス】 “インテグラルキラーズ”として 行動していたとき、私の中には 主に二つの思いがあったわ
【アルマス】 一つは、世界を危機から救うという 使命感 そしてもう一つは…
【アルマス】 罪悪感よ
【ラグナロク】 罪悪感? 何に対してのものよっ
【アルマス】 決まってるでしょう この世界を破壊することに対する 罪悪感よ
【アルマス】 ラグナロク、恐らく “インテグラルキラーズ”は 自分が「悪」だって理解してる
【アルマス】 この世界を破壊に導く悪を、 それでも本当の危機を防ぐために 遂行しているのよ
【ラグナロク】 だからって、みすみす破壊させる 気はないわ
【ラグナロク】 この世界は必ず守ってみせる!
【グラーシーザ】 きゃあっ! なかなかやるではないかっ…
【ラグナロク】 グラーシーザ! 敵はどこ!?
【エルキュール】 ラグナロク、出てきてはいけません このキル姫は――
【エルキュール】 ぐっ!
【アルマス】 あそこよ! …やっぱり、あなただったのね
【ティルフィング】 ああ…残念です、アルマス アナタもともに進んでくれる同胞と 思っていたのに…
【ラグナロク】 ティルフィング… 嘘…でしょっ
【ラグナロク】 あなたは地上に降りて悪魔を討伐した “地上の天使”の一人だったのに…
【ティルフィング】 懐かしい話ですね
【ラグナロク】 答えて、ティルフィング! 何故、世界を破壊して新たに創り 直さないといけないの!?
【ラグナロク】 一体、何があなたにそんな決断を させたというの!?
【ティルフィング】 純潔な世界のために
【ラグナロク】 えっ?
【アルマス】 ちょっと! 空から何か降ってくるわよっ
【異族】 グウウウウウウウウ!
【ダモクレス】 わーっ 異族がたくさん降ってきたぞー!
【ネス】 異族は遥か昔に討伐しきった はずなのに…理不尽ですっ
【スイハ】 射抜いても射抜いても どんどん降ってくる… このままだと…
【エルキュール】 恐れることはありません! 全て粉砕します!
【ラグナロク】 ティルフィング…この異族達は まさか、あなたが操っているの?
【ティルフィング】 操る? 異族は私達の可愛い可愛い同胞です
【ラグナロク】 そう…まさか、あなたが異族に 取りつかれるなんて… だったら!
【ラグナロク】 アルマスのときのように、 正気に戻してあげる!
【異族】 ガアアアアアアアア!
【ラグナロク】 うっ! そんな…力が…
【ミネルヴァ】 ラグナロク、 無理をしてはいけないと 言ったのにっ…
【ティルフィング】 はぁ… 純潔なる彩りよ…咲き誇れ
【ミネルヴァ】 何ですか、この力はっ…!?
【アルマス】 尋常でないマナを感じる… あんなの食らったら、 この一帯、全て消滅するわよっ
【エルキュール】 私が止めてみせます!
【ダモクレス】 あはは! みんな死ぬときは死ぬよねっ
【スイハ】 せめて教会だけでもっ…!
【ラグナロク】 ティルフィング! 私は決して歩みを――
【ティルフィング】 また少し…完全なる世界の完成に 近づきました…
【ティルフィング】 順調のようですね これなら、あと…
【ティルフィング】 1666時間で天上世界の全てが 新世界へと移送完了します
【ティルフィング】 完全なる透過の世界に綻びを インテグラルノア、始動
天上世界崩壊まで、 残り――
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