210162030 インテグラルノア編(擬彩されし不可逆世界編) 第16章 中心部決戦―エクリプス― 第2話 前夜-3
【リサナウト】 …………
【リサナウト】 …ここは、そう ようやく届いたのね いるんでしょう、クロノス?
【???】 ふむ… 我はクロノス 汝、神器の力を宿せし娘よ
【クロノス】 天使、悪魔、幻獣の力を借りて 神の領域に手を伸ばすか…
【クロノス】 それは理を破る行い 何故、我を呼び寄せた?
【リサナウト】 そうね 世界のためとか色々 理由はあるんだけど…
【リサナウト】 あのとき聞きそびれた言葉を、 聞かせてもらおうと思ってね
【クロノス】 あのとき… いつのことか見当がつかぬ
【リサナウト】 そんなはずないでしょ だったら、どうして私にあのときの 記憶を見せたの?
【クロノス】 我はクロノス 時間そのものといって良い 故に我は自動的だ
【クロノス】 汝が見たものもまた、 汝自身が求めたもの 我には関わりがない
【クロノス】 我はただ刻み続けるもの 流れ、積み重なり、過ぎゆくもの
【クロノス】 そこに偏在する意思などない 全ては汝の意思に過ぎぬ
【クロノス】 疾く去れ 我を求めても無駄だ 我は世界の行く末に関心などない
【クロノス】 終わりも始まりも全て等しく 我はただ刻み続けるのみ
【リサナウト】 ええと…ようするに”終焉”が 来ようとどうなろうと知ったこと じゃないって言ってるのね?
【リサナウト】 あなたは世界が滅んでも、 ただ時を刻み続けるだけだって
【クロノス】 理解したようだな では――
【リサナウト】 そんなわけないでしょ!
【クロノス】 汝、まだ不毛な問答を続けるか…
【リサナウト】 ねえ、クロノス 本当に世界の行く末に興味がないの なら、どうしてあのとき私を助けたの
【リサナウト】 グラを助けようとして無茶した私は 大怪我を負って…あのままだったら 死んでたわ
【リサナウト】 それなのに、時間が巻き戻って 私は回復した…ううん 怪我を負う前の状態に戻った
【リサナウト】 そんなことができるのは、 あなただけよね?
【リサナウト】 それって、あなたの偏在する意思って やつじゃないのかしら?
【クロノス】 …あのとき、罪深き者達の所業に よって我は一時、世界と関わりを もった
【クロノス】 汝の時が巻き戻ったのは、 偶然の産物であろう 我にとっては、ほんの揺らぎだ
【リサナウト】 ふーん… あくまでそういう態度なのね でも、本当にいいの?
【リサナウト】 この世界が終わったら、 あなたも困ると思うんだけど
【クロノス】 世界が終わろうとも、 我はただ刻み続ける それが時間というものだ
【リサナウト】 でも、誰にも認識されないのなら そこに「時間」なんてあるのかしら?
【リサナウト】 少し違うわね… 誰も認識しない時間に「意味」なんて あるのかしら?
【リサナウト】 クロノス、あなたは私の時間を 巻き戻したこと、ただの揺らぎだって 言ったけど…
【リサナウト】 それこそが、意思よ 不可逆なはずの時の流れを、 意識的に遡行させたんだもの
【リサナウト】 私は、その意思に賭けるわ
【クロノス】 …………
【リサナウト】 クロノス、世界が終わっても あなたは消えないんでしょうけど 誰からも認識されなくなるわ
【リサナウト】 それって消えてしまうのと同じ ことなんじゃない? きっと、意味がなくなる
【リサナウト】 あなたはそれを、避けたいと 思っているはずよ
【クロノス】 …………
【リサナウト】 ねえ、教えて あのとき、何て言ったの? 私に何を伝えようとしたの?
【クロノス】 …何故、抗うのか
【リサナウト】 えっ…?
【クロノス】 問うたのではない 純粋な疑問だ 汝に触れたとき…
【クロノス】 死に進む自分自身に強く抵抗していた それが我には理解できなかった
【クロノス】 全ての生命は生まれた後、 死に向かって進み続ける 決して立ち止まることなく
【クロノス】 すなわち、死は生にとっての理だ 抗う意味が分からぬ
【クロノス】 疑問を抱いた弾みで、汝の進む 時計の針を巻き戻してしまった
【クロノス】 ふむ…それが関心だというのなら そうなのかもしれぬ…
【クロノス】 汝も我の力を有しておるのなら 理解しておろう?
【クロノス】 間もなく世界は終焉を迎える その理は覆せぬ 抗うことは無意味だ
【クロノス】 誰にも認識されぬようになれば、 汝の言う通り、我もその意味を 失おう
【クロノス】 それを拒んでいる我がいることも 認める
【クロノス】 だが、何度も言うように 全ては理の範疇…抗うことは 無意味なのだ
【リサナウト】 だからこそよ
【クロノス】 む…?
【リサナウト】 クロノス、あなたが私と誓約 してくれるのなら、自然の理を超えた 人の力を見せてあげるわ
【リサナウト】 人の意思によって導かれる、 未知の可能性よ!
【クロノス】 終焉の理を破り…我も知らぬ可能性を 切り拓くと言うか…
【リサナウト】 そこには、あなたを認識する多くの 人々がいる 時間が大きな意味をもつ
【リサナウト】 どう? 乗ってみる価値はあるんじゃない?
【クロノス】 我と…神と誓約するというか それは重い制約が課せられようぞ
【クロノス】 もし誓約に反すれば、汝は我の加護を 失う…すなわち「時間」を失うのだ
【リサナウト】 死ぬってことかしら?
【クロノス】 いいや それよりも苦痛であろうな 何故なら…
【クロノス】 汝の時が止まるのだ 死んではおらぬが何もできぬ 生きてるとも呼べまい
【クロノス】 そのような状態で、汝は永遠に 放置される 世界が終わっても関係なく
【クロノス】 ただ、そこにあるだけ そういう存在になるのだ
【リサナウト】 それは…きつそうね…
【クロノス】 さあ、如何する? 神器の力を宿せし娘よ
【リサナウト】 私は…
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