210202140 インテグラルノア編(擬彩されし不可逆世界編) 第20章 絶望の終焉…そして 第2話 遺されたもの-14
【ティルフィング】 ああ… 世界が無に還っていきます
【ティルフィング】 これから私一人… この方舟とともに…
【???】 ああ、そうだ 今度は君が私の立場に なるというわけだ
【ティルフィング】 誰ですかっ?
【???】 おっと、失礼 君とは初対面になるね 私のことは…そうだな…
【???】 裁定者だの災厄だの神だの 様々な呼ばれ方をしてきたが、 強いて言うなら
【???】 原点、だろうな
【ティルフィング】 原点? …もしかして、アナタが種を植えた 存在なのですか?
【原点】 話が早くて助かるよ いかにも、君達が生きた世界 その世界樹の種を植えたのが…
【原点】 この私だ
【ティルフィング】 そうですか そのような方が、今更、何か ご用ですか?
【原点】 手厳しいな ちょっとした挨拶をしにきた だけだよ
【原点】 何しろ君はこれから、永劫の孤独を 生きることになるんだからね
【ティルフィング】 …………
【原点】 君は知ろうとしていたね この世界の仕組みを
【原点】 そのためにユグドラシルの記録を 遡り、世界の始まりを確認しようと していた
【原点】 その試みは“終焉”によって 阻まれたが、君の直感は正しいよ
【原点】 世界の終わりは、今回が初めての ことではない
【ティルフィング】 …………!
【原点】 私も何回目なのかは知らない ただ、ユグドラシルが芽吹き、育ち、 枯れるというサイクルは
【原点】 これまで幾度も繰り返されてきた 今回もその一つに過ぎないんだ
【原点】 ああ… 今回ばかりは少し違うね まさか旧世界を引き継ごうなんて
【原点】 大胆で傲慢な発想だが、 面白そうな試みだ
【ティルフィング】 原点、アナタは前世界の生き残り だったんですね
【原点】 そうだ 私は君達が生きた世界の、 一つ前の世界で生きていた
【原点】 ただそれだけの、人間だったんだよ
【原点】 たまたま世界の終わりに立ち会って、 偶然、最後の一人になっただけの 平凡な人間…
【原点】 それが…死ぬこともできず、 気が狂うほどの時間を一人で過ごし 世界樹の種を植えた
【原点】 その後は、ただ世界を見守るだけの 存在になり果てたんだ 私の地獄が分かるかい?
【原点】 ああ、いや 答えなくていい じきに君も味わうのだから
【原点】 それにしても、旧世界をそっくり そのまま新しい世界に持ち込む なんて…
【原点】 私は君のことが心配だよ
【ティルフィング】 アナタに心配される覚えは ありません
【原点】 強がらなくていい すでに理解しているはずだ
【原点】 君は私と同じ立場になる 世界樹の種を植え、新たな世界を 観測するだけの存在となる
【原点】 つまり、君自身は世界の誰とも 触れ合えない 認識すらされない
【原点】 私も我慢できずに世界に干渉した ことがあるが、大した慰めにも ならなかった
【原点】 それでも私はまだ良かったよ 何の愛着もない連中が騒いでいるのを 眺めていれば良かったんだから
【原点】 せめて面白いことになってくれよと 願いながら、永劫の孤独を過ごした しかし、君はどうだ?
【原点】 君の大切な者達が仲良く暮らす様を 眺めながら、そこに君はいない どこにも!
【原点】 君の存在そのものを、もう誰も 覚えてはいない そのことにいつまで耐えられるかな?
【ティルフィング】 …言いたいことはそれだけですか? 私は、覚悟を決めています
【ティルフィング】 お別れは、済ませました…
【原点】 …………
【原点】 …最後に一つだけ これは、嘘偽りのない本心だ
【原点】 ありがとう これで私はやっと消えることが できる
【原点】 君達の織り成した物語には、 楽しませてもらったよ
【原点】 どうか、君の旅路に幸多からんことを
【ティルフィング】 …ゆっくり休んで下さい アナタが大切な人とまた巡り会え ますように
【ティルフィング】 …………
【ティルフィング】 あ…あれは!
【ティルフィング】 これが世界樹の種… 植えるべき地を見つけるまで 大切に守っておかないと
【ティルフィング】 さあ、行きましょう
【ティルフィング】 この方舟とともに、 新たな世界の始まる地へ
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