210421211 モラベガ 泡となったお姫様
太陽が照り付ける真夏のビーチ
あっちの方に行ってみよう ある姫の提案でマスターの隊は、 未開の場所に移動する
その後は、砂浜で戯れたり、 海に潜ったり、 みな楽しそうに遊んでいる
【モラベガ】 ………
しかしモラベガだけは、 その輪の中に入らず、 一人で読書に耽っていた
【モラベガ】 ………
本当はみんなと 遊びたいんじゃないのかな?
そう思ったマスターは、 彼女に声を掛ける
一緒に遊んできたら? だが、彼女の返答は…
【モラベガ】 ううん、このままでいいよ
どうして? 尋ねるマスター
【モラベガ】 ……これ
読んでいた本を見せる彼女
タイトルは『人魚姫』
この本がどうしたの? マスターが尋ねる
【モラベガ】 私たちはね “強いお姫様”に 憧れてるの
【モラベガ】 それでね、強いお姫様っていうのは、 一人でも果敢に戦える人、 一人でも頑張れる人だよ
人魚姫がそうなの? とマスターが尋ねる
【モラベガ】 うぅん、逆
【モラベガ】 彼女は弱い人だと思う…
【モラベガ】 彼女は意を決し、 自分の世界を飛び出し、 外の世界に出た
【モラベガ】 でも…
【モラベガ】 その決意は虚しく、 海の泡となって 消えてしまった…
【モラベガ】 そう… 死んじゃったんだ…
【モラベガ】 王子様と出会い、 外の世界に 飛び出したせいで
【モラベガ】 でもね、私たちは そんな風になりたくない
【モラベガ】 彼女のように 泡になるくらいなら…
【モラベガ】 ずっと…このままでいい
【モラベガ】 別に誰と仲良くなくても… 大丈夫
【モラベガ】 強いお姫様って… 孤高な人のことだから
【モラベガ】 この本は、 それを教訓として 教えてくれたんだ
…と、本を閉じ、 静かに海を眺めるモラベガ
【モラベガ】 ………
その視線の先には、 楽しそうに遊ぶ姫たちが
マスターは、彼女の瞳に 寂しい陰を見るのだった
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