210517051 限定クエスト ウェディングイベント さあ、泥塗れのままに踊ろう 後編 ストーリークエスト さあ、泥塗れのままに踊ろう 後編 ストーリークエスト 5 - 【EP.4】泥塗れの少女 さあ、泥塗れのままに踊ろう 4話 さあ、泥塗れのままに踊ろう 4話
【ロジェスティラ】 えっ、と…この袋は?
【イチイバル】 開けてみてよ
イチイバルに促され、 ロジェスティラは袋の口を そっと開いてみる…
【ロジェスティラ】 …!? これ、って…!
中に入っていたのは、 イチイバルが仕立てた ドレスだった
これは…? 困惑する彼女に、 イチイバルが語り掛ける
【イチイバル】 キミに教わった技術を駆使して ボクが作ったんだ
【イチイバル】 確かに、キミの作った ドレスには適わないけれど…
【ロジェスティラ】 そんなことありません! とっても、とっても 素敵です!
【ロジェスティラ】 でも、そんなドレスをわたしに? それって、まさか…
【イチイバル】 あぁ…やっぱりボクは、 キミといっしょに舞踏会に出たい
【ロジェスティラ】 っ!!
【イチイバル】 驚かせてしまってごめん どうしても諦めきれなくて…
【イチイバル】 キミはいつも わたしなんかがって 卑下しようとするけれど
【イチイバル】 ボクにとっては… キミは誰よりも素敵で、 誰よりもかわいい女の子なんだ
【イチイバル】 そう、まるで… 絵本の中のお姫様みたいに
【ロジェスティラ】 お姫、様…
【イチイバル】 キミといっしょに踊れたら、 今までで一番楽しい思い出が 作れると思う
【イチイバル】 だから…ロジェ! どうかボクと…
【ロジェスティラ】 …ごめんなさいっ!!
ロジェスティラの大きな声に、 イチイバルはハッと息を飲む
【ロジェスティラ】 わ、わたしは…ダメなんですっ!
【ロジェスティラ】 イチイバルさんと踊るなんて… そんな資格はありませんっ!
【イチイバル】 ど…どうして?
【ロジェスティラ】 だって…だってっ 泥塗れなんです、わたしは…!
【イチイバル】 …どういうこと?
【ロジェスティラ】 まだ、駆け出しだった頃です
【ロジェスティラ】 ドレスの発表の催物があったんです 友達は作ったドレスを着てもらえる 人がいないと困っていました
【ロジェスティラ】 そのドレスは本当に素敵で…
【イチイバル】 キミが自分で着たいと 願い出たんだね?
【ロジェスティラ】 はい 友達は是非、お願いしたいって…
【ロジェスティラ】 最初は嬉しかったです こんな綺麗なドレスを着れるんだって 夢が叶ったって
【ロジェスティラ】 でも、当日になって、 急に恥ずかしくなって…怖くなって
【ロジェスティラ】 当日、緊張のせいで転んで… 泥を付けてしまい ドレスをダメにしてしまったんです
【イチイバル】 ……
【ロジェスティラ】 わたしのせいなんです わたしが着るなんて言わなければ ドレスは……
【ロジェスティラ】 だから、わたしは決めたんです もう、ドレスは着ないって…
【ロジェスティラ】 それに、イチイバルさんみたいに 綺麗じゃないっ…! あなたのようにはなれないっ!
【イチイバル】 ロジェ!!
名前を叫ぶが、 ロジェスティラは振り返らない…
【イチイバル】 そん、な…
純白のドレスが、 雨粒をぱちぱちと弾く
濡れていることにも 気づかないまま、 イチイバルは茫然と立ち尽くす…
【ロジェスティラ】 はぁっ…はぁっ…はぁっ…!
逃げ出したロジェスティラは、 雨に打たれながら とぼとぼと街を歩く
【ロジェスティラ】 あ…
その横を通る豪奢な馬車と、 ドレス姿の貴婦人たち
きらびやかな世界を 目の当たりにして、 ロジェスティラは思わず目を伏せる
【ロジェスティラ】 あの世界に、わたしはいられない わたしは汚れているから…
【ロジェスティラ】 それにこの手だって… 針を扱って傷だらけ…
【ロジェスティラ】 わたしはドレスを着る立場じゃない 誰にも知られず、ドレスを作れたら それだけで…
ロジェスティラは今一度、 イチイバルとの記憶を思い返した
【ロジェスティラ】 あの時から、 本当はもうわかってた…
【ロジェスティラ】 ドレス姿のイチイバルさんを 初めて見たとき
【ロジェスティラ】 わたしは絶対、 この人みたいには なれないって…
幼いころからの憧れを、 ついに形にできたロジェスティラ
けれど彼女は頑なに 自分で着ようとはしなかった
なぜなら― 自分はドレスに ふさわしい存在ではないから
自分よりももっと上手く 着こなせる誰かがいるから…
【ロジェスティラ】 イチイバルさんに着てもらえたら、 それで十分だと思えた
【ロジェスティラ】 隣にわたしなんかが居たら、 邪魔になってしまうだけ…
【ロジェスティラ】 だから、これでいいの… あの人が喜んでくれたら、 わたしは…
【ロジェスティラ】 …ひゃっ!?
【ロジェスティラ】 い、いたた… つまづいちゃった…
【ロジェスティラ】 あはは…ほんとに泥塗れ… あのときと同じ… どうしようもないなぁ…
地面にへたりこんだまま、 潤む目元をごしごしとこする ロジェスティラ
【ロジェスティラ】 …あれ? ふと、晴れた視界の端に こぼれた袋の中身が映った
【ロジェスティラ】 花の刺繍?
【ロジェスティラ】 中に何か入ってる… これは、手紙…?
ロジェスティラは急いで 手紙の封を開けていく
そこに書かれた文字を読み、 ロジェスティラは両目を見開く
【ロジェスティラ】 …イチイバルさんっ!!
泥塗れになるのもいとわず、 ロジェスティラは再び 会場に向けて走って行った…
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