210517061 限定クエスト ウェディングイベント さあ、泥塗れのままに踊ろう 後編 ストーリークエスト さあ、泥塗れのままに踊ろう 後編 ストーリークエスト 6 - 【EP.5】初めての友達 さあ、泥塗れのままに踊ろう 5話 さあ、泥塗れのままに踊ろう 5話
【ロジェスティラ】 はぁっ、はぁっ、はぁっ…!!
息も絶え絶えに 足を進めるロジェスティラ
その手には… イチイバルのくれたドレスと 一通の手紙
舞踏会の始まりを告げる 鐘の音が鳴り響く
【ロジェスティラ】 イチイバルさんっ… イチイバルさんっ!!
それを気にも留めない様子で、 ロジェスティラは走りつづける
手紙の内容を 脳裏に思い出しながら…
【イチイバル】 拝啓、ロジェスティラへ
【イチイバル】 いや、天才美少女ドレス職人と 呼んだ方がいいかな? なんてね、テヘッ☆
【イチイバル】 この間はごめんね キミに無理を言ってしまって
【イチイバル】 あれからいろいろ考えたんだ それで…やっと答えに辿り着いた
【イチイバル】 ボクはやっぱり、 キミと舞踏会に出たい
【イチイバル】 キミには、旅の思い出を いろいろ話したよね
【イチイバル】 でもまだ話してないことがある ボクが旅をする理由だ
【イチイバル】 もう気づかれているだろうけど… ボクは寂しいやつなんだよ
【イチイバル】 今まで、旅の途中で 知り合った人は大勢いた
【イチイバル】 でも、本当に心から繋がれた人… 友達はひとりもいない
【イチイバル】 ボクが天才で、なんでも器用に こなせるからだろうね
【イチイバル】 あれこれ首を突っ込んで、 望まれてもいないのに 勝手に解決する異邦人
【イチイバル】 お礼の言葉を口にしながら 本心ではボクのことを 妬ましく思っている…
【イチイバル】 そう気づいてから、ボクは 人々からのお礼の言葉が 泥のように感じるようになった
【イチイバル】 お礼を言われるたび、 ボクの心は泥で汚れていくような 感覚がした
【イチイバル】 だから、ボクは 泥で心に蓋をしたんだ
【イチイバル】 何も求めないように 何も感じないように 固く乾いた泥で
【イチイバル】 それなら、人助けなんて しなければいい そう思うかい?
【イチイバル】 いや、君はそんなことは 言わないだろうね
【イチイバル】 ロジェ、君はボクのことを 強い、なんていうけれど 逆なんだ
【イチイバル】 ボクは弱い 一人では生きていけない だから、人と関わるんだ
【イチイバル】 その結果、 泥をかけられると わかっていてもね
【イチイバル】 ボクはこれでいいと思ったんだ 人と深く関わらずに生きていく それでいいって、ね
【イチイバル】 でも、そんなときだった
【イチイバル】 ボクは、ロジェ… 君に出会ったんだ――
【イチイバル】 旅人のボクを 甲斐甲斐しくお世話して、 話も楽しそうに聞いてくれて
【イチイバル】 ただの他人 なんかじゃないって、 そう言ってくれたよね
【イチイバル】 ただ憧れるだけでも 遠巻きに見るだけでもない
【イチイバル】 対等な存在として、 ボクに寄り添ってくれた
【イチイバル】 だからボクは… キミに心を開いていったんだ
【イチイバル】 …いや、違うね そうじゃない
【イチイバル】 キミが、ボクの心の泥を 拭ってくれたんだ
【イチイバル】 泥で隠れてしまっていた ボクの心を……
【イチイバル】 だから、ボクはもう隠さない 分かり合いたいという想いを
【イチイバル】 あの日キミを 舞踏会に誘ったのはね
【イチイバル】 やっとその願いを 叶えられると思ったからなんだ
【イチイバル】 キミもボクと同じように、 胸の奥に寂しさを 抱えていると感じたから
【イチイバル】 そんなキミとならきっと、 友達になれると思ったから―
【ロジェスティラ】 イチイバルさんっ!!
【イチイバル】 っ! あ…ロジェ…?
【ロジェスティラ】 さっきはごめんなさいっ! わたし、わたしっ…!
【イチイバル】 ロジェっ!!
【ロジェスティラ】 わっ!?
【ロジェスティラ】 イ、イチイバルさんっ…?
勢いよく抱き着かれて 地面に倒れ込む二人
声をかけようとする ロジェスティラだったが…
イチイバルの体が 震えているのに気づき、 そっと口をつぐんだ
【イチイバル】 は…初めて、なんだ こんなに怖いって思ったのは
【イチイバル】 このままキミと 分かり合えないまま 終わるかもしれないって…
【イチイバル】 それがこんなに怖いことだなんて、 知らなかった…!
イチイバルの瞳から、 大粒の涙があふれだす
純白のドレスは泥水で汚れて、 もう見る影もない
けれど…二人にとっては もはや些細なことだった
【イチイバル】 お願いだ、ロジェ… ボクを嫌いにならないでくれ
【イチイバル】 ボクはキミと友達になりたい! それだけなんだ、だから…!
【イチイバル】 っ…
震えるイチイバルの体を ロジェスティラは強く抱きしめる
その優しい温もりを感じ… イチイバルも彼女を抱きしめ返した
【ロジェスティラ】 嬉しい、です… こんなに素敵な人に、 友達だなんて思ってもらえて…
【ロジェスティラ】 わたしも前を向きます、 あなたと同じように…
【ロジェスティラ】 わたしなんかが…なんて言って、 簡単に諦めないようにっ…!
【ロジェスティラ】 イチイバルさんっ! もう舞踏会は 始まっちゃったけど…
【ロジェスティラ】 もしよければ… わたしといっしょに、 踊ってくれませんかっ?
【イチイバル】 ッ……!
【イチイバル】 フフフッ… アハハハッ…!
【ロジェスティラ】 イチイバルさん…?
【イチイバル】 うん…うん! もちろんだよ、ロジェ!
イチイバルの顔に、 いつもの不敵な笑顔が戻った
そのまま二人はしばらく、 倒れたままで笑い合うのだった…
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