210613120 インテグラルノア編サイド インテグラルノア サイドストーリー 暴走ゲハイムシュリフト アロンダイト 暴走ゲハイムシュリフト アロンダイト 3 - 2話 暴走ゲハイムシュリフト アロンダイト-2 暴走ゲハイムシュリフト アロンダイト-2
複数の奏官達が手を組んだギルド その設立はトントン拍子に 事が進んで行き…
日が経つにつれ、 ギルドの加盟者も増えていった
アロンダイトとマスターは ギルド設立の初期メンバーとして 中心人物となっていた
【アロンダイト】 マスター、こちらにいらしたのですね
マスターを見つけ 駆け寄るアロンダイト
【アロンダイト】 マスターの予定が詰まっていたので 心配で様子を見に来たんです
ありがとうと返すマスター それと同時に、あれ?と思う
【アロンダイト】 あ、えーと… 私も少し 抜け出してきちゃいました
アロンダイトはキル姫側を まとめるリーダー的な役割を担い ギルドにとっても重要な存在だった
【アロンダイト】 ギルドが大きくなって たしかに任務は順調に 回っていくようになりました
【アロンダイト】 しかし、その分だけ マスターと過ごす時間も 減ってしまいましたね…
それぞれの立場があるし これが今の自分達の任務なんだよ とマスターはアロンダイトを諭す
【アロンダイト】 そうですね… このギルドがあることによって 救われた命も多いですから
任務と言えば、とマスターは アロンダイトに今後の予定を話す
【アロンダイト】 任務…ですか マスターが討伐任務に赴くのは ずいぶんと久しぶりですね
【アロンダイト】 私も実戦は久しぶりですし 腕がなまっていないといいのですが
近頃は後輩にあたるキル姫達を 指導するアロンダイトだが まだまだ現役だと言いたいのだろう
【アロンダイト】 ですが、その日って… ギルドの子達の試験の日では…?
ギルドでは未熟なキル姫を育成し 生還率を高めるという取り組みを していたのだった
そして、その卒業試験とも言える ギルド内での試験の日が マスターの任務の日と被っていた
【アロンダイト】 どちらかの予定を 変更することは可能でしょうか…
別行動ということに対し 不安そうにするアロンダイト
だが、マスターは 大丈夫だと胸を張って返す
【アロンダイト】 マスターは そう仰いますけれど…
子供の頃とは違う 自分だってもう立派な奏官だ とマスター
それに、こうやって別行動しても 安全でいられるようにするために ギルドを組んだんだ、とマスター
【アロンダイト】 …そうですね いつまでもお姉さん気分が 抜けないのは私の悪い癖で…あっ
お姉さん気分か… とマスター
【アロンダイト】 い、今のは無しにしてください!
姉のような存在だと言ったのは 自分が先だったしね とマスターは笑う
【アロンダイト】 ああ、もう… 今のは周りの方達には 内緒にしていてくださいね…
【アロンダイト】 私とマスターの関係に憧れて ギルドに入った皆さんにも 呆れられてしまいます…
若くしてベテランの域のマスター そしてそのキル姫であるアロンダイト
ギルドのメンバーからも ふたりのようになりたいという 声はよく聞くのだった
【アロンダイト】 あくまでその話は キル姫とマスターとして ですからね
でも、アロンダイトも 自分を家族のように 思っていてくれて嬉しいとマスター
【アロンダイト】 …もう、マスターったら それはそれとして、任務の日は 気を付けていってくださいね
もちろん、アロンダイトも ギルドのほうをよろしくね とマスター
【アロンダイト】 はい、お任せください!
【アロンダイト】 昼食のあとは残りの子達の試験… みんな、頑張ってくれていますね
【アロンダイト】 こちらもその誠意に 応えないといけませんね
試験の日、 アロンダイトは休憩時間にも ひとり入念なチェックを怠らない
【アロンダイト】 あれ、あそこにいるのは… マスターの任務に 同行しているはずの奏官達では…?
アロンダイトの視線の先には マスターと同じく設立当初からの ギルドメンバーである奏官達
何かあったのだろうか とアロンダイトは 奏官達の会話に耳を傾ける
【アロンダイト】 マスターも予定より 早く戻ってきているのなら…
「そろそろか」 「これでギルドは俺達のもの」 「あいつは邪魔だったからな」
【アロンダイト】 …え?
「キル姫のほうはどうする?」 「今日の試験が終われば用済みだ」
【アロンダイト】 …………
会話の真意はわからなかった けれど、考える間もなく アロンダイトは駆け出していた
ギルドから飛び出し、 マスターの後を追ったアロンダイト
任務予定地にマスターはいなかった そこでマスターとの繋がりを頼りに アロンダイトが追い付いた時…
【アロンダイト】 マスター!
そこでアロンダイトが 目にしたものは…
深々と胸に剣を突き立てられた マスターの姿だった
【アロンダイト】 マス、ター…
なんで、ここにいるんだ! アロンダイトの姿を見て 動揺する奏官達
ギルドの仲間であったはずの 奏官達がマスターを 手に掛けたのは明らかだ
アロン…ダイ…ト、逃げて… そう振り絞るように言った後、 マスターがこと切れる
同時に アロンダイトと共鳴していた、 マスターのバイブスが途切れた
【アロンダイト】 あ、ああ、ああああアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアッ!
どうして仲間達が マスターを殺したのか、 そんなことはどうでもよかった
ただただ、暗く赤い感情が アロンダイトの心の中を 染め上げていく
怒りは、赤いんだ
アロンダイトにとって あとはすべて断片的な記憶
思い返すことができるのは マスターと過ごした日々
けれど、その思い出も 怒りで塗りつぶされていく
ひとつの思い出が消えるたび ぬるりとした感触が剣から手に伝う
心が壊れていく中で アロンダイトは自分が 暴走することを悟った
だが、どうでもよかった アロンダイトに残るのは 世界さえも壊したいほどの怒りだ
アロンダイトが怒りに 心も身も委ねようとした その時だった
【???】 ……が、 ほしい……?
【アロンダイト】 え?
【???】 世界……壊す…… 力……――
アロンダイトの頭の中で響く ノイズのような声
この声が何者なのかは わからない だが、アロンダイトは即答する
【アロンダイト】 受け入れます! この世界を破壊するほどの 力を、私にください!
【???】 ――――っ!
ノイズのような音が頭の中で 響いた瞬間、アロンダイトの中に 強大な力が入ってきた
同時に、先ほどよりも 濃く、禍々しい憎悪の感情が アロンダイトを覆いつくしていく
【アロンダイト】 コワス!コワス!コワス! キエロ!キエロ!キエロォ! アアアアアアアアアアアッ!
すべてを排除する 気が付けばアロンダイトは ギルドに戻り、すべてを消していた
消しても消しても 消えて消えて、消えていく
何も戻らない すべて消えるなら…消せるなら すべてなかったことにしよう
希望のないこんな世界 絶望だって力に変えられるのなら この怒りさえ受け入れてみせる
【アロンダイト】 アアアアアアアアアッ!!!
【アロンダイト】 …………
ギルドを壊し尽くしたアロンダイト 彼女は至って『冷静に』 その光景を眺めていた
通常、暴走したのであれば 自我も同時に崩壊する
だが、アロンダイトは 理性を保っている
それは何者かから得た 力の作用なのだと 理解できる
【アロンダイト】 この力が私自身を蝕み、 崩壊させるものだったとしても 私は構わない
【アロンダイト】 私の目的はただ一つ
【アロンダイト】 …すべて、間違っていた そう、この世界の何もかもが
【アロンダイト】 なら、全部壊してしまえばいい 壊して壊して壊して、 最後に私を壊そう
【アロンダイト】 絶望の力を手にした 今の私なら、それが叶う
【アロンダイト】 感じます 終焉の鼓動を…
【アロンダイト】 ああ、 その日が来るまでこの身こそが 終焉をもたらす為の剣となろう…
世界の終焉を告げる鐘の音がひとつ アロンダイトが目醒めた瞬間だった
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