210616120 インテグラルノア編サイド インテグラルノア サイドストーリー 暴走ゲハイムシュリフト ラブリュス 暴走ゲハイムシュリフト ラブリュス 3 - 2話 暴走ゲハイムシュリフト ラブリュス-2 暴走ゲハイムシュリフト ラブリュス-2
ラブリュスがマスターの隊に 入隊してからしばらくのこと
マスターとラブリュスは 各地を巡り、被害からの復興と 街の人々の為のライブを続けていた
ふたりの活動に賛同する キル姫も増え、マスターの隊は 徐々に人数を増やしていた
【ラブリュス】 でも、マスターが 私の専属ってことは 変わらないんだからね?
それはいつも肝に銘じてるよ と笑って返すマスター
【ラブリュス】 あははっ、忘れてないならいいよっ♪
【ラブリュス】 わたしも、君と出会った時のこと ぜーったいに忘れないからね☆
【ラブリュス】 あっ、それは、その 君がアイドルとしてのわたしを 見つけてくれた日のことって意味!
わかってるよ、と笑うマスター
【ラブリュス】 ほんとにわかってる~?
【ラブリュス】 ま、いっか☆ 今日のライブも楽しもうね!
今日の舞台は 深刻な被害に遭った街が 復興されたことを記念してのライブ
隊のキル姫が増えたことで ステージの設営などに手が回り 規模も大きなものとなっていた
【ラブリュス】 …このままいろんなところで ライブができたら、いつか本当に 世界中の人を笑顔にできちゃうね
珍しくそんなことを言うラブリュス 大舞台の前に緊張しているのだろうか
【ラブリュス】 ううん、そういうのじゃないの
【ラブリュス】 わたしはアイドルでいたくて、 アイドルのわたしをみんなに 知ってほしくて、歌ってた
【ラブリュス】 目的も、今みたいに はっきりしてなかったんだ
【ラブリュス】 それを、君がここまで導いてくれた
【ラブリュス】 ありがとう、マスター 本当に感謝してるんだよ
真面目なラブリュスの想いに こちらこそありがとう と応えるマスター
【ラブリュス】 …でもさ、こーんなに すごいステージ作って いっぱい人集めてライブして…
【ラブリュス】 お前の任務はどうした~って 周りから怒られたりしない?
【ラブリュス】 一応マスターも奏官なんだし?
大丈夫、これが自分の任務だから と胸を張るマスター
【ラブリュス】 それ勝手に言ってるだけでしょ~?
【ラブリュス】 ふふっ、でも、怒られたら わたしも一緒に謝ってあげる
【ラブリュス】 それで、ごめんなさいのライブして 怒ってる人達もみんな笑顔にしちゃお
【ラブリュス】 わたしならそれができるって 教えてくれたのはマスターだもんね
その時はよろしく頼むよ とマスター
そのマスターの困ったような けれどワクワクしているような そんな顔が面白くて笑うラブリュス
ライブ前の高揚感は ふたりのテンションも盛り上げていた
【ラブリュス】 今日のライブ…街の人達もだけど 見かけないキル姫もいっぱいいるね?
大規模な復興だったから 街の中以外でも手伝ってくれた 奏官やキル姫がいた、とマスター
きっとそのみんなも ラブリュスの歌を聴くために 来てくれたんだ、とマスターは続ける
【ラブリュス】 そっか… なら、そのみんなの為にも 今日は頑張らないと、だね!
【ラブリュス】 それじゃ…いってきます!
【ラブリュス】 みんな~☆ 今日は集まってくれてありがと~♪
【ラブリュス】 ラブリュスちゃんのライブ いっぱい楽しんで行ってね!
【ラブリュス】 よーし、いっくよー!
ラブリュスの声に 歓声が沸き起こる
ラブリュスの歌に手を叩いて喜ぶ者 身体を揺らして音に乗る者 楽しみ方は様々だ
花開くように鮮やかなライブを マスターは胸躍らせて楽しんでいた
だが、ステージを遠巻きに見つめ まったく動かない者達の存在に マスターは気付く
【ラブリュス】 ありがと~☆ みんな盛り上がってくれて ラブリュスちゃんもサイッコーだよ♪
【ラブリュス】 今日ははじめましての人も いつも来てくれる人も みーんなもっともっと楽しんでね☆
そして、ラブリュスは次の曲へ だが、マスターは先ほどのことが 気になって仕方がない
何かあったのかもしれない とマスターは動かない一団の元へと 向かうことにした…
【ラブリュス】 アンコールありがと~!
歌い終え、一度照明の落ちた舞台 しかし、会場の熱気は収まらず 再び照明に火が灯った
【ラブリュス】 みんなが頑張ってくれたおかげで わたしもここでライブをすることが できました…本当にありがと~☆
だが、ラブリュスはそこで気付く
【ラブリュス】 あれ…いつもなら あそこにマスターがいるのに…
会場の隅、 いつもならマスターが 笑顔で立っているその場所
そこにマスターの姿はない
舞台の上だというのに ラブリュスは一瞬ではあるものの 気が散ってしまった
【ラブリュス】 …………
そんなラブリュスに対し ひと際大きな声援が飛ぶ
【ラブリュス】 …あぅ、ごめんごめ~ん ラブリュスちゃん、感動しちゃって しみじみ~ってしちゃった!
【ラブリュス】 気を取り直して…聞いてください これが最後の曲です♪
ラブリュスは懸命に歌った いつも通りにと、努めて、懸命に
胸のざわめきが ライブの高揚感であると信じて
【ラブリュス】 はぁ、はぁ、はぁ… マスター、どこ行っちゃったんだろう
ラブリュスはライブの後も 行方が知れないマスターを探していた
【ラブリュス】 やっぱり、何か… ううん、そんなことない!
【ラブリュス】 マスターはきっと 最後までわたしのライブを 見ててくれたに決まってるもん!
そんなラブリュスに 物陰から声がかかる
【ラブリュス】 あはっ♪ 今日のライブ見てくれた人かな~?
【ラブリュス】 ラブリュスちゃん 今ちょっと忙しくて… サインだけでもいいかな☆
どんな状況であろうとラブリュスは アイドルであるという姿勢を崩さない
「やっぱりラブリュスちゃんは 僕だけのアイドルなんだね」 物陰に居た男が言う
【ラブリュス】 えっとぉ、それってどういう…
男の足元を見て ラブリュスの笑顔が固まる
【ラブリュス】 え…
【ラブリュス】 マスター!?
慌てて駆け寄ろうとするラブリュス 男はそれを制止する
「やっぱりコイツが原因なんだね」 男が残念そうに首を振る
【ラブリュス】 君…あ、いつもライブに 来てくれてた人、だよね?
「さすがは僕のアイドル!」 自身に視線を向けられ喜ぶ男
男は唐突にラブリュスを 褒め称える言葉を連ねる
【ラブリュス】 あ、ありがとう でもそんなことより…
“そんなことより” その言葉に男は激昂する
「コイツのせいで ラブリュスちゃんがおかしくなった」
「ラブリュスちゃんが 遠い存在になってしまった」
「コイツがラブリュスちゃんを そそのかしたんだ、絶対そうだ」
まくし立てる男に ラブリュスは言葉を失う
「だから、僕が救ってあげたんだ」 男は笑みを浮かべる
自身も奏官だというその男は 一番の推しだったラブリュスを ずっと見てきたのだという
だが、ラブリュスが隊に入った その時からすべてが狂ったと話す
「ラブリュスちゃんをずっと 見てきたのは僕なのに…っ!」
「ラブリュスちゃんは 僕だけのモノなのに!!!」
「今はライブを見るのも大変だ! 人が多くて、見れないことだって 多い!!」
だから、その男…奏官は 自身のキル姫に命令して、 「コイツを消すことにしたんだ」
既に動かなくなっている マスターの頭に 蹴りを入れる奏官
【ラブリュス】 ――――!
ラブリュスは頭の中で 何かが散っていくのを感じた
散っていったそれは 花びらのようにひらひらと舞い …地に堕ちた
【ラブリュス】 …………
「ラブリュスちゃん、嬉しい?」 男は笑顔で問いかける
【ラブリュス】 あは、アハハハハ…
「笑ってくれた!」 男は自身の行動の正しさを確信する
【ラブリュス】 …楽しくないな
【ラブリュス】 ああ、終わっちゃった わたし、壊れちゃった
【ラブリュス】 アンコールもなし マイクを置いて、おしまい
【???】 …………終わり――?
【ラブリュス】 え…?
【???】 世界……終わらせる―― 壊す、力――
【ラブリュス】 ラストライブだもん おっきな花火、打ち上げたいよね
【???】 ――――――っ!
街に響いたのは、 歌声ではなく悲鳴
その音がラブリュスにもたらすのは ただ楽しかった頃の記憶
【ラブリュス】 楽しい、たのしい… タノシイタノシイタノシイタノシイ!
ラブリュスに力が集まり 溢れ、こぼれ、花びらのように舞う …それは、楽しかった思い出と
【ラブリュス】 アハハ! アハハハハハハハ!
楽しそうに笑うラブリュス 楽しくは、なかった
けれど、この賑やかな悲鳴が マスターへの手向けとなるように
ラブリュス達が復興した街は ラブリュスの手によって崩壊した
各地で上がる悲鳴は まるで歓声のようだった
【ラブリュス】 この世界が終わるまでの全部が ずーっと、わたしのラストライブ… 終焉ライブだよ
【ラブリュス】 世界が楽しい悲鳴で満ちる日まで この斧と歌声で魅せてあげる
【ラブリュス】 終わったらそっちに行って 話聞くからさ…ちゃんと見ててね
【ラブリュス】 ね、マ・ス・ター♪
世界の終焉を告げる鐘の音がひとつ ラブリュスが目醒めた瞬間だった
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