210701110 インテグラルノア編(擬彩されし不可逆世界編) 第7章 夢追い人―デザイア― 第1話 ラグナロク機関へ-11
【ジーベン】 ガキの頃、親に売られた
【ジーベン】 そんなに珍しいことじゃない その日の食い物にも困るような 生活だったからな
【ジーベン】 僕は妙な研究所に引き取られて、 そこで割と良い生活させてもらったよ
【ジーベン】 だから初めは無邪気に喜んでいた 研究所には似たような境遇の、 僕より少し年上の男女もいた
【ジーベン】 ジーベンって名前はその研究所で つけられたものだ 本名は忘れた
【ジーベン】 しばらくは色んな検査を受ける程度で 呑気に暮らしていたよ だが、ある日…
【ジーベン】 僕は思い知った 自分が売られた理由を 僕は実験体だった
【ジーベン】 何のための実験だったのかは、 いまだに知らない…
【ジーベン】 研究員達は、 コード:ディスラプトと 言っていた
【ジーベン】 僕は体の中を弄られ、臓器を 幾つか人工のものに取り替えられた
【ジーベン】 あいつらは言っていたよ 「これで人間を超えられる」んだと
【ジーベン】 改造人間?強化人間? とにかくただただ気味の悪い実験が 繰り返されて…
【ジーベン】 僕は“ディスラプター”とかいう プログラムを扱う訓練を受ける ことになった
【ジーベン】 その頃からだ 研究所から実験体が減り始めたのは
【ジーベン】 初めにアンとドゥーエが消えた 同じタイミングで研究員も何人か 消えた
【ジーベン】 それからトレスが…キャトルが… 昨日まで一緒に食事をしていた奴が 次の日にはいなくなっていた
【ジーベン】 僕は理解した …実験は失敗したんだと
【ジーベン】 いずれ僕も死ぬ 散々、体を弄られて…人を超える なんて妄想に弄ばれてっ…
【ジーベン】 とうとう実験体は僕一人になった頃、 新しい実験体がやってきた… まだ幼い少年だったよ
【ジーベン】 僕はそいつと関わりたくなくて… なるべく会わないようにしていた… どうせ、お互い長くはないからな
【ジーベン】 そいつはオクトと名づけられ、 僕とは違う施術をされていたようだ
【ジーベン】 僕は自分がいつ死ぬのか どんなふうに死ぬのかってこと ばかり考えていた…
【ジーベン】 ところが、研究所での生活は唐突に 終わりを告げたんだ
【ジーベン】 何が起きたのかは分からない ただ、いきなり見知らぬ連中が やって来て、僕を外へ追い出した
【ジーベン】 騒ぎが起きていたのは確かだ 近づいたら巻き込まれると思って、 すぐにその場を離れた
【ジーベン】 その途中だ 研究所からオクトを担いで 走り去るフォルカスを見かけた
【ジーベン】 正直、オクトの顔はよく覚えて いなかったから、あれがそうだった かはあまり自信がない
【ジーベン】 それでも、実験体用の服を着た 誰かを担いでいたのは確かだ
【ジーベン】 「オクトも助かったか」くらいの 感想しか、そのときは浮かばなかった そしてすぐに忘れた
【ジーベン】 僕は僕で、どうやって生きていくのか 考えるので精一杯だったからな
【ジーベン】 この体は意外と役に立ったよ 通常の人間より頑丈なのは間違いない
【ジーベン】 それに、いつの間にかバイブスも 宿っていたからな お陰でスラーンドに会えた
【ジーベン】 いつ死ぬかも分からない身だ だったら天下獲りでもやってやるかと 思っていたら…
【ジーベン】 そこの周回遅れファッションリーダー に出くわしちまったわけだ
【ヴァング】 何じゃそりゃあああああ!
【ジーベン】 叫ぶな 近所迷惑だろうが
【グリモワール】 キミのいた研究所が、ラグナロク 機関ってことでいいのよね?
【ジーベン】 ああ、そうだ 二度と近づきたくない場所だな…
【スラーンド】 いまだにマスター たまに夜、うなされてるからね~
【ジーベン】 うるさいぞ、スラーンド!
【スラーンド】 ごめんって
【マサムネ】 ラグナロク機関が… 悪魔との戦いが終わった後も そんなことをしていたのか…
【グリモワール】 色々聞きたいことがあるんだけど、 まずは…
【アスカロン】 逃げる途中で見かけたフォルカスは 私達と一緒にいたフォルカス なんですかっ?
【ジーベン】 ん? お前達と一緒にって…
【ジーベン】 カミトのキル姫はお前達二人だけ じゃないのか?
【ヴァング】 違ぇよ あいつのキル姫はそこの二人と、 フォルカスだ
【ジーベン】 何!? 僕は見た覚えがないぞっ
【グリモワール】 あっ…! 言われてみれば、フォルカス…
【アスカロン】 マスターがヴァングさんと出かける ときは、いつも留守番をして いましたね
【ジーベン】 フォルカスと一緒だったら、 オクトのことを思い出していた かもしれないが…
【ジーベン】 やはり「オクト」と「カミト」は 同一人物なのか?
【ジーベン】 オクトも左腕を切り落とされて 義手になっていた
【ジーベン】 義手なんて珍しくないから、 今まで気にも止めてなかったよ
【アスカロン】 マスターが昔、ラグナロク機関で 実験体にされていたってこと ですかっ…?
【グリモワール】 ああ、もうっ こんなときにマスターもフォルカスも いないなんてっ
【ヴァング】 待て カミトの腕は何かの事故で 失ったって聞いたぞ
【ヴァング】 そのとき助けてくれたのが フォルカスで、そのときからの つき合いだって
【ヴァング】 ジーベンの話と合わねぇな
【ジーベン】 もちろん、別人だって可能性も 低くはないだろう
【ジーベン】 どちらにしろ、僕には関係ない これ以上、話すこともないよ
【マサムネ】 ヴァング こいつもラグナロク機関に 連れていった方が良さそうだぞ
【ジーベン】 何だと!?
【ヴァング】 ああ、機関の中を調べるのに 役立ちそうだ
【ジーベン】 冗談じゃない! 誰があんなところに――
【ヴァング】 ジーベン、てめえは俺に負けたんだ 今日から手下になれ
【ジーベン】 ふざけるな! お前の下につくくらいなら、 死んだ方がましだ!
【ヴァング】 だからだよ てめえには死ぬより辛い思いを してもらうぜ
【ジーベン】 ぐっ…お前…
【ヴァング】 てめえは俺が天下統一するのを 目の前で見せつけられるわけだ 悔しいだろうなぁ
【ヴァング】 …ジーベン いつくたばるか分からねぇなら 死ぬまで生きていようぜ
【ジーベン】 くっ… 好きにしろ!
【ヴァング】 ああ、ちなみにてめえの序列は アスカロン達より下だからな
【ジーベン】 どういう格付けだ!? ゲスと冷血漢のミックスブレンドめっ
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