240201212 ヒョウハ・神令・テュール 超爆のエゴ
数日後―――
あの日以来、 ビーチにヒョウハの姿はなかった
彼女は、 みんなと遊ぶのをやめていた
【ヒョウハ】 ………
ビーチから離れた場所で、 一人佇む彼女を見つけるマスター
【ヒョウハ】 くそぅ…
大丈夫? 悔し気に呟くヒョウハに マスターは声を掛ける
【ヒョウハ】 し、師匠……
【ヒョウハ】 いや~~今日もいい天気だなっ! うん、すごくいい天気だっ あははっ…!
いつものように振舞うヒョウハだが どこか無理をしている様子に マスターは気付いていた
【ヒョウハ】 そ、そんな真剣な顔するなよなっ あたしは大丈夫だからさ ほらっ、師匠はみんなと遊んで来いよ
それでも動こうとしないマスターに ヒョウハは元気に振舞うのをやめ 本音を打ち明け始める
【ヒョウハ】 やっぱり師匠にはバレちまうか… いや、なんつーか…うん 珍しく落ち込んでるかも…
【ヒョウハ】 あたし…ほんと、ダメだなって…… あの時、マスターは仲間のこと 気にかけて声をかけてくれたのに
【ヒョウハ】 仲間のこと… なんにも見えてなかったなって…
彼女は、 姫達を気遣えなかったことを 深く後悔していた
【ヒョウハ】 昔っから曖昧なことが嫌いで… やるならとことんやらなきゃ 気に入らない
【ヒョウハ】 それは遊びも一緒で 真夏のように熱くなって遊ばなきゃ、 勿体ないって
【ヒョウハ】 それはみんなも 同じだって思ってたんだ でも……
【ヒョウハ】 そのせいで… 仲間を傷つけてしまった……
【ヒョウハ】 ……気づいちゃったんだ
【ヒョウハ】 あたしの考えなんて… ただのエゴだったって……
【ヒョウハ】 “本当のあたし”は… 身勝手でワガママな イヤな奴だったんだって……
顔を伏せ、 暗い影を落とす彼女に マスターは言う
ある意味、君は エゴの塊みたいなところが あるかも知れない…と
【ヒョウハ】 ……だよね
さらに落ち込む彼女に向って、 マスターは続ける
でもね、エゴを抑えようとせず、 なくそうとせず“向き合う”ことが 大事なんじゃないかな…と
【ヒョウハ】 ………え?
その時こそ、君の言う “本当の自分”ってやつが 見えてくると思うよ…と
【ヒョウハ】 ………
【ヒョウハ】 自分自身のエゴと…向き合う……
それ以降、彼女は口を開かず、 なにかをじっと考え込んでいた
それから数日後―――
いまだビーチに、ヒョウハの姿はない
まだ落ち込んでいるのかな… マスターがそう思った時……
【ヒョウハ】 …はぁ…はぁ……
太陽に照らされ、 息を切らしたヒョウハが現れた
【ヒョウハ】 はぁ…はぁ…
彼女の出現に驚く姫達
そんな姫達に、 ヒョウハは叫んだ
【ヒョウハ】 みんな! 一緒に泳ごう!!
え?でも…… と、ためらう姫達
先日、隊の姫が 熱射病になってしまったことを 思い出したのだ
【ヒョウハ】 もちろん、無理は禁物だ!
【ヒョウハ】 けど、今年、一度きりの夏だよ!! 泳げるのに、泳がなきゃ 超爆・もったいないっ!!
【ヒョウハ】 だから、遊ぼうぜ! あたしと一緒に楽しい夏にしよう!
しかし、底抜けの明るさで 誘ってくるヒョウハに、 姫達は徐々に誘いを受け入れ始める
【ヒョウハ】 ははっ!ありがとう、みんな! さあっ!行こう!!
それから、しばらくして……
【ヒョウハ】 あははははっ! 超爆・最高っ!!
もう、すっかり みんなと打ち解けているヒョウハ
その様子を見て、 マスターも一安心だ
…が、次の瞬間
【ヒョウハ】 !!
楽しそうだったヒョウハの表情が 一変!
【ヒョウハ】 うおおおおおおっ!!
突然、猛烈な勢いで泳ぎ始めた
【ヒョウハ】 ファイアアアアアアアア!!
その体は光を放ち、 とんでもない速度で水中を突き進む
それはまるで、 彼女自身が一本の 光の矢になったようだった
【ヒョウハ】 はぁ…はぁ…はぁ…
【ヒョウハ】 大丈夫っ!?
ヒョウハが叫んだ先には、 一人の姫がいた
彼女は楽しく夢中で泳いでいて、 足がつったようだった
【ヒョウハ】 心配すんな! 今、ビーチに連れてってやるから!
【ヒョウハ】 さあ、あたしにつかまってて!
ヒョウハは、 ただ自分のやりたいことに 突き進むスタイルから、
みんなに目を配り、 手を差し伸べるスタイルに 変化していた
さっきのとんでもない泳ぎは、 彼女が新たな力に覚醒した 証だったのだ
【ヒョウハ】 到着~~~! いい?無理しないで、 少し休んでんだよ!
その笑顔には、 温かな優しさが滲み出ていた
その後、また元気に泳いでいる姫達
ありがとう、ヒョウハ あの子を助けてくれて マスターは、ヒョウハに礼を言う
【ヒョウハ】 うぅん
【ヒョウハ】 師匠のおかげだよ
【ヒョウハ】 師匠の言葉があったから、 自分のエゴと向き合えたんだ
【ヒョウハ】 それがあったからみんなのこと、 ちゃんと見えるようになったんだ
【ヒョウハ】 あたし……
【ヒョウハ】 “本当の自分”が見えたよ!
【ヒョウハ】 キラーズやバイブスみたいな 曖昧なものは信じていないけど……
【ヒョウハ】 本当のあたしは、 みんなと仲良くしたい!
【ヒョウハ】 だから控えめな子には 声を掛けてあげたいし、 困っている子は助けてあげたい!
【ヒョウハ】 それに、遊ぶことだけじゃなくって みんなのことを助けるのも 全力でやる!
【ヒョウハ】 それがすべてをさらけ出した 本当のあたしなんだ!!
【ヒョウハ】 あ~、師匠に想いを言えて、 スッキリした!!
【ヒョウハ】 よぉぉぉぉぉし!! もっと、もっと…
【ヒョウハ】 超爆・燃え上がっていくぞぉぉぉ! ファイアア!
そう笑顔で叫んだ彼女は、 まるで真夏の太陽のように輝いていた
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