250322211 ティファレト・誓約・ミカエル 雄大なもの

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夏―――

マスターの隊がやってきたのは、 南の海に浮かぶラグーナ島

姫達は水着に着替え、 海で楽しそうに遊んでいる

そんな中、ただ一人、 海を見つめたまま、 ボーッと立っている姫が……

【ティファレト】 ………

どうしたの？ マスターが彼女に尋ねる

【ティファレト】 主様……

【ティファレト】 海を見て 驚いていたのです

【ティファレト】 この世には、こんなにも 雄大なものが存在するんですね

【ティファレト】 ……美しい

【ティファレト】 この美しい景色に、 ただただ心を奪われてしまいました

目を輝かせて語るティファレト

【ティファレト】 あっ…！ どうされたのですか…？

彼女の手を引き、 砂浜を駆けて行くマスター

足が海に浸かり、 彼女が声を上げる

【ティファレト】 きゃっ、冷たいです

【ティファレト】 でも……うふふ、 とても楽しいです

【ティファレト】 海って……素敵ですね

それは彼女にとって、 至福の時間だった

数時間後―――

【ティファレト】 ……あれは？

姫達がビーチで遊んでいると、 そこに島の人達がやってきた

【ティファレト】 ……大丈夫でしょうか、主様？

人間とキル姫が分かり合うのは難しい

そのことを知っているティファレトに 不安の色が窺える

【ティファレト】 ……あ！

だが、それは杞憂に終わった

キル姫と知らないとは言え、 島の人達はとても温かかった

【ティファレト】 ふふ、世界中が… ここみたいならいいのに

その夜――

島民と打ち解けたマスターや姫達は、 宴に招待された

飲んで、歌って、笑って―― 和気あいあいと盛り上がる一同

しかし、マスターはふと気づく

そこに、 ティファレトの姿が無いことに

【ティファレト】 ………

宴の会場から少し離れた海岸、 彼女はそこで海を眺めていた

なにやってんの？ ティファレトに声を掛けたのは…

【ティファレト】 あなたは…？

１０歳くらいだろうか この島の少年だった

こんな所で一人、なにしてんの？ 少年の問いに彼女は答える

【ティファレト】 海を見ていたんです

こんな、真っ暗なのに？ 少年の純朴な問いに、 彼女は丁寧に答える

【ティファレト】 はい、月に照らされた夜の海は、 昼とはまた違った美しさがあります

【ティファレト】 あなたが住む島は… まさに『楽園（エデン）』です

そう言われて嬉しくなった少年は、 自慢げに語る ここは『宝島』と呼ばれてるんだ！と

【ティファレト】 宝島……？

【ティファレト】 本当にそうですね この美しい景色は… なにものにも代えがたい宝物です

楽しそうに少年と語り合う彼女を、 マスターは少し遠くから 笑顔で眺めていた

次の日――

砂浜で楽しんでいるマスターの隊

【ティファレト】 今日も、最高の景色です

うっとりと眺めている彼女 ……だが、

【ティファレト】 ……ん？

海の向こうから、 不穏な影が押し寄せてくる

【ティファレト】 あれは……

海賊船――

その黒く巨大な鉄の塊は、 不躾に浜に上陸

そして船から降り立った海賊は、 この島の宝を頂く！ …と、大声で叫ぶのだった

【ティファレト】 ……島の宝？

【ティファレト】 一体…なにをするつもりなの……？

彼女の不安に呼応するように、 空を暗い雲が覆い始めていた…

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